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イギリスパブのラウンドというシステム

イギリスのパブは、日本の居酒屋とはちょっと違う。
ファミリーでランチに行くこともあるし、スポーツを観に行くこともあるし、ダーツやビリヤードをしながらビールを飲むためにも行く。

けれど日本の居酒屋と同じように、休みの日に友達と飲みに、仕事帰りに待ち合わせて飲みに。もちろんそんなふうにも利用される。

私がイギリスに行って知ったパブにまつわることはまだある。『ラウンド』というシステムだ。

ラウンドとは?

ラウンドは、主に友人同士でパブで行った時に、暗黙の了解のうちに行われる支払いの習慣である。

イギリスのパブは前払い制。カウンターでビールやエールを選び、その場で支払いをしてビールを受け取る。ちなみにイギリスのビール1杯は1パイントという。UKパイントは568ml。

ラウンドを行う場合はこうだ。例えば友人3人で集まったとする。

「久しぶり!元気にしてた?」

「おー久しぶり。元気元気。とりあえず飲もっか。じゃあ私がまず買ってくるね。なにがいい?」

「ラウンドだね。ドラフトビールならなんでもいいよ。」

「コロネンバーグの生が見える。私はあれで!」

「じゃあ私もコロネンバーグで。」

「OK。じゃあ3つね。」

「私達あそこの窓際のテーブルとっとくね」

こうして3人はコロネンバーグを飲む。次はさっきとは別の人がビールを買いに行く。

「次は何がいい?」

「今度はエールが良いなあ」

「ここロンドンプライドもあったよ」

「じゃあ私はロンドンプライドで!」

「私はまたコロネンバーグで」

「了解。ロンドンプライド、コロネンバーグね。じゃあ買ってくる」

そして3人は2杯目のビールを飲む。

もうお気づきかと思うが、まだビールを買っていない残りの一人が次の順番だ。

そう、3人の場合は、ラウンドのシステムでは最低でも一人3杯のビールを飲むことになる。

これがもし5人なら、当然5杯のビールとなる。

ラウンドのシステムは、友人で行った時にみんなが平等に支払うことになるという点、またパブでは席を立ってドリンクを買いに行く必要があるが、一人一回だけ行けば良いという点から、非常に合理的である。

食べながらおつまみを食べたい日本人からすると、「え?食べないでビール3杯?」と混乱するかもしれない。

けれどイギリスで友人同士でパブに行く時、まずはビールと会話や議論が優先されるため、食べ物のことは後回しにされることが多い。

ちなみにイギリスのポテトチップスはじゃがいもの自然な味でとても美味しいが、パブにはポテチの小袋が必ず売っている。(イギリス英語ではcrispsという)

ラウンドの最中「小腹がすいたんで、ポテチ3つ買ってきたわ」「サンキュー」みたいなことが行われることもある。

とりあえずビール、とりあえず会話。

夕方6時くらいから集まって飲んで、7時半とか8時になって「お腹すいたなあ、何か食べる?」みたいなことになる。

最初からきちんとした料理を食べたいなら、レストランや、料理が有名なパブに行けば良い。

ラウンドのチャレンジをする映画『The World's End』

ラウンドのシステムを繰り返して「12軒のパブに行こうぜ!」というチャレンジを描いた映画がある。フィクションのコメディ映画で、けっこう面白い。

イギリス人の夫はこの映画を真似て友人と集まって12軒のパブをはしごして、夫は10パイント(10軒)までは飲めたとか。

そういえば以前テレビで戦場カメラマンの渡部陽一さんがこんな話をしていた。

戦地で世界各国の戦場カメラマンが集まっていて、たまたま誰かがたくさんのボトルビールを持っていて、「誰が一番多くのビールを飲めるか」競争したという。

「どの国の人が勝った?」と聞かれて、

「イギリス人だったんですね。けっこうダントツで」

と答えていた。

イギリス人、けっこうビールだけで飲み続けることに慣れているのだ。おそらく世界的にみても。

もし興味があったら日本でも、前払い制の立ち飲み屋、バーなどで、友人と『ラウンド』を試してみてほしい。

合理的でやってみると清々しくて、とってもフェアだから。

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