失敗の科学

多くの人にとって失敗はできるならば避けたいものだ。
失敗して気分が良くなることは少ないだろうし、どんどん失敗しようとも普通はならない。

そして得手して失敗はプライドの問題になる。
失敗ばかりしている人はいざという時に信頼がおけない気もする。
かくも失敗を許す雰囲気は作ることが難しい。

本書では、失敗を受け入れて洗練していく組織の例として航空業界を、逆に失敗を認めづらい(認めづらかった)組織の例として医療(特に医師)と法曹(特に検事)をあげている。

医療と法曹はいずれも文理のトップエリート組織であり、いずれもある種の生死に関わる領域を担い責任が重い業界である。
それらの組織では失敗が忌避されやすく、誤った主張を正当化するため認知的不協和を生じせしめることもある。
ではなぜ同じく乗客の命を預かる航空業界は失敗を受け入れられるのか?

著者は、スポーツ選手の例を上げながら小さな失敗を重ね改善することで大きく成長すること、またプロジェクトにおいても失敗を仮定した事前シミュレーションをすることが成功の確度を上げることを述べ、失敗を受け容れることの合理性を説く。

著者の指摘はおそらく正しい。
プライドを守りつつ失敗は恥ではないという雰囲気作りが組織に対する処方箋になるのだろう。
ただ、日本の起業家が少ない理由として失敗に対するネガティブマインドがあるのではないかという話は少しばかり尻切れトンボでもう少し深い洞察を伺いたかったところである。

なお、著者のMatthew Syed氏は英国の卓球五輪代表選手であったそうだ。
文武に優れたすごい方がいらっしゃるものだ。

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