野生化するイノベーション
イノベーション、シュンペーターにより光を当てられてから、約100年が経過し、研究の結果明らかになってきた性質をもとに、その重要性を明らかにしつつも、イノベーションがもたらす負の側面にも注目しどう対処していくべきかについて考察した本。
著者の清水洋氏はシュンペーター賞を先般受賞されたようであり、確かに素晴らしい研究だな、と納得。
さて、中身の方。
清水氏によりイノベーションを起こすためには、既得権益者の抵抗が少ない方が良く、「失われた20年」においてはイノベーション不足が停滞の原因として説明される。
ここで、流動性の高まりがイノベーションを生み出す一つのカギとなると説明されるが、今度はイノベーションのコストや破壊的側面に対するコストについての問題点が提示され、国家・組織・個人におけるイノベーションとの向き合い方が示される、という内容になっている。
本書では日本企業の「寿命の短さ」や「世界のリスト」などなかなか衝撃的なデータが並び、目からウロコであり、大変面白い。
以下は個人的な感想。
イノベーションの訳としてはしばしば「技術革新」の言葉が当てられる。
しかしiphoneなどを見ればよくわかるが技術だけではなくダサいものや使い勝手の悪いものはいくら技術が優れていても見向きもされないだろう。
結局は組み合わせの妙であり、広い意味でのデザインの妙と認識する。
企業としてはこの組み合わせをどれだけ試せる遊びがあるのかが重要なのではないか。
そうなるともしかすると稼げなくなってきた企業の株式市場における新陳代謝を活性化する(非公開化等の流度を上げるとか)ことも1つの解になるかも知れない。
清水氏の言は説得力がある。しかしいろいろ試し、とにかく「遊ぶ余裕を作り、遊んでみる」ことが、不確実な時代を切り拓くカギになる気がしている。
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