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大麻合法化の障壁になりえる裏技制度

こんにちは!

今回は大麻にまつわるアメリカの政治についてお話しします。

アメリカは連邦制のため、それぞれの州が国のように運営し、その上に連邦政府があります。「連邦」と「州」の主に2種類の大きな政府がありますが、今回は「連邦」で起きている大麻に関わる政治の話をします。

今回は、アメリカの大麻合法化法案を進めるに当たり、必ず念頭に入れなければならない議会のルールを説明します。これを理解する上で、どのようにアメリカで大麻合法化が成し遂げられるか、どのような法案が法制化しやすいか、をイメージできるかと思います。

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アメリカの連邦議会の問題・フィリバスター制度

アメリカの連邦政府で法案が正式に法律になるためには、下記の3つの条件が揃う必要があります(一部例外はありますが)。

(1)下院議会の採決で賛成過半数
(2)上院議会の採決で賛成過半数
(3)大統領が署名

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どのように法律ができるかを分かりやすく解説した図(USA.gov より)

この仕組みは大原則ですが、実は一つ大きな問題になっている「裏技」があります。アメリカの政治に詳しい人は既にご存知かもしれませんが、上院議会(100人構成)ではフィリバスター(議事妨害)というルールがあります。これは「法案を上院議会で採決するかどうか」を決めるための「採決」を行うことです。

上院で法案を決める本採決とは別に、そもそも上院で採決するべきかどうかを決めるいわゆるこの「前採決」では、上院で過半数の支持(51~59%)を得ていても、41%以上の議員が反対していれば、その人たちは永遠に議論できる権限を有することになります。この制度の事を「フィリバスター」と呼ばれています。

このため、昔は41%以上の上院議員が反対した場合、延々と何十時間にも及ぶ演説を繰り返し推進派が諦めるまで議論し事実上の否決を可能にしていました。この延々と繰り返される演説は無駄な時間を要する上に他の法案を議論する妨げになる事もあり、今ではフィリバスターが宣言された時点でそれ以上の議論をせず法案の採決を阻止させています。
フィリバスターは少数派が法案を否決することを可能にしており、多数派で物事を決める本来の民主主義の思想と矛盾しているため、多くの議員が廃止すべきだと述べています。

フィリバスターについては下記の動画でとても分かりやすく説明されています。(英語)

アメリカでは大きな賛否を招く銃規制や、一方の党の色が濃い法案に関してはフィリバスターされる傾向がとても強くなっており、1970年以降は大きな法案のほとんどがフィリバスターされています。
例えば、共和党が今でも廃案を企てているオバマケアはフィリバスターされない条件が見事に揃ったので、2009年に可決されました

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法案がフィリバスターで終わった件数(Vox より)

連邦で大麻合法化させるための条件

アメリカでは大まかに保守的な共和党とリベラルな民主党の2大政党があり、大麻合法化を成し遂げたい議員のほぼ全員が民主党に属しています(民主党大統領候補だったサンダース上院議員は無所属ですが)。

そのため、連邦で大麻合法化を成し遂げるためには、民主党が上院・下院での過半数、大統領(法案の拒否権を行使されないため)を奪還した上で、フィリバスターされないために以下の2つの条件のいずれかを満たす必要があります。

1つはシンプルに民主党が上院で60%以上の圧倒的多数を得ることです。

民主党は2018年の中間選挙で下院議会の過半数を奪回しましたが、共和党が未だ大統領と上院議会の過半数(53%)を握っているので、今議会で大麻合法化が法案として可決することはまずありえません(下院で法案が通ることはありますが、上院では却下されます)。

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上院議員100名中、53名が共和党、45名が民主党、2名が無所属(しかし2名とも民主党の党員集会に参加)(画像はWikipedia より)

アメリカでは来月に選挙があります。この時に全ての下院議員(全435名)、35人の上院議員、そして大統領が選挙で席を争います。民主党が上院・下院で過半数を取り、大統領を奪還したとしても、選挙を長年分析しているFive Thirty Eight という団体の大方の予想では民主党が上院での60%の圧倒的多数を得る可能性は非常に低いです。そのため、共和党は上院議会で多数派にならなくても、大麻合法化法案がフィリバスターされる条件が揃ってしまいます。

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Five Thirty Eight の上院議会の選挙予想(10/21/2020 時点)

大麻合法化をするためのもう一方の手段は、共和党議員も納得させる超党派の政策を進める事です。

「嗜好用大麻合法化」のような全面解禁はフィリバスターされる可能性が高いですが、「大麻の非犯罪化」や「医療大麻合法化」などの全面解禁で無い内容であれば共和党議員も賛同してもらえる可能性が高まります。
【参照:ABCHigh Times

*大麻の合法化と非犯罪化の違いについては下記のページ等をご参照下さい。

これらの事情のため、次の議会(2021~2023)では仮に民主党が大統領・上院・下院を全て奪還したとしても、大麻を連邦法で合法化するために「フィリバスター」というハードルも乗り越えなければなりません。

本日は大麻合法化の障壁になりえる裏技制度であるフィリバスターをご紹介しました。次回は連邦で進められている大麻関連の法案についてご紹介致します。

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