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不思議な秩序 King Crimson 『In The Wake Of Poseidon』

 今年の年末にキング・クリムゾンの来日が決定した。是非行こうと思う。去年の年末にフジコ・ヘミングのコンサートに行った。素晴らしいコンサートだった。楽しみにしていたボブ・ディランの来日公演をはじめとして、多くのライヴが軒並み中止になってしまったなかで、本当に心にしみた。音楽が不要不急のものだなんて、とんでもない話だ。音楽こそが、芸術こそが何よりも必要なものだ。音楽は心に光を灯し、生きる勇気をくれる。そんな思いを新たにしたコンサートだった。

 僕は2018年に渋谷でクリムゾンのライヴを観たのだが、色々な意味で凄かった。普通、ライヴというものは観終わった後にすっきりした気分になることが多いと思うのだが、あれほど(いい意味で)疲れたライヴは初めてだった。計算され尽くした、一分の隙もない(許されない?)演奏に、聴いてるこちら側もずっと手に汗を握りっぱなしだった。
 例のトリプル・ドラムに関しては、「成程ね」っていう感じでいたけれども、息も尽かせぬ構築美の極致の演奏を聴きながら、「ああこれは何千何万のドラムが鳴り響く天上の音楽を象徴してるのかな。” one handred million angels singin' "と歌う、ジョニー・キャッシュの『The Man Comes Around』みたいだ」なんてことを考えていた。
 ちなみにロバート・フリップだが、ここのところずっと奥さんと一緒にお茶目な動画をたくさんアップしているが、ああいう軽やかさにこそ、深淵なクリムゾン・サウンドの秘密を解く鍵があるような気がする。

『In The Wake Of Poseidon』(邦題『ポセイドンのめざめ』)は、『クリムゾン・ キングの宮殿』に続いて70年に発表されたセカンド・アルバム。『宮殿』や『太陽と戦慄』、 『レッド』といった作品の中に埋もれてしまいがちだが、実は全英4位を記録しており、これはクリムゾンの歴代のアルバムの中でも最高位の記録となっている。
 混沌としたアルバムだが、不思議な秩序がそこにはある。クリムゾンのサウンドを紐解くもう一つの鍵は「秩序」なのではないかと僕は思う。

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