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真実を感じさせる歌 The Byrds 『Turn! Turn! Turn!』

 バーズ(特に初期)には昔から夏のイメージがある。それも、陽の沈んだ蒼い夏の空がよく似合うように思う。

 表題曲「Turn!Turn!Turn!」は、ディランも敬愛するアメリカの伝説的なフォーク・シンガー、ピート・シーガーの作品で、歌詞には聖書からの引用もある。 バーズのヴァージョンは、65年にシングルとしてリリースされ、チャートの1位を獲得した。

 03年のリイシュー盤のライナーノーツで、「ローリング・ストーン」誌のデヴィッド・フリックがこんな風に述べている。

「聖書から引用されたヴァースを持つシンプルなフォーク・ソングがヒット・ シングルになる可能性など今日にはほとんどないということは、過去30年間にポップ・ミュージックがいかに変わってしまったかということを測る驚くべき物差しになる。このことで、私たちは何がポピュラーなのか、ポピュラーになりうるのかを知ることができる」

 流石の深い洞察だ。そして、彼はこうも述べる。 「フォークの創始者ピート・シーガーが曲を書き、伝道の書から採った歌詞をつけた『ターン・ターン・ターン』は、実際にストイックな知恵の歌であり、 地軸を失った世の中に道理と均衡とを求める祈りでもあった」と。

 激化するベトナム戦争、さまざまな対立や軋轢に揺れていた激動の60年代にあって、そんなバーズの「Turn! Turn! Turn!」がチャートの1位を獲得したことの意味は大きい。人々はそこに何を求め、何を聴いたのか。それを考えるとき、新型コロナ・ウイルスで社会不安に覆われたこの世界にあって、改めてこの曲の持つ強い響きに心を動かされずにはおれない。

 おそらく人はどんな時代でも、その本質はそうは変わらない。人はどんな時代にあっても、そこに真実を感じさせる歌を求めているのだと思う。「Praise The Lord I Saw The Light(神を讃えよう。僕は光を見た)」と歌ったハンク・ ウィリアムスが、時代と世代を超えていまも多くの人々に聴きつがれているように。

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