個人の挑戦という局面では、謎の自信は使える|厚切りジェイソン・第2話
前編では最近、ジェイソン氏の「挑戦」をテーマにした講演会などが大人気だというお話をお伺いしました。
米国と日本の挑戦に対する考え方の差と言うと大袈裟かもしれませんが、すべてを投げ出す「腹切り型の挑戦」と、失敗や余力を考慮した次に繋がる「賢い挑戦」があるというのは、気づきの多い指摘でした。
後編では、日本社会が「働き方改革」など社会としての挑戦を上手く成功させるためにはどうすればよいか、ジェイソン氏の意見を伺います。
数年、数十年の重み
成功を勝ち取るため挑戦を続けるジェイソン氏は、「習慣」をとても大事にしていると自分を分析します。逆に、いわゆる「目標」という言葉はあまり好きではないとも。
人間は定められた目標があると、良い結果になるにしろ、悪い結果になるにしろ、目標を達成した時点でモノゴトを辞めてしまうことが多いからです。
英語を勉強していても、受験が終わると見向きもしなくなる。そのため、勉強はしたけど英語が喋れないなどの現象が典型例でしょう。
そうではなく、決めたことは少しでもいいから毎日絶対やる。それが数年、数十年積み重なると、いつのまにかできているようになる、すなわち成功に繋がると言うのです。
「みなさんは僕の日本語が上手いと褒めてくれますが、僕は2008年8月1日から1日も欠かさず漢字の書き取り練習をやってきました。もう、10年以上になります。ただ1日何時間も勉強している訳ではありません。
ソフトを使って数分間、効率的にやり続けてきました。電車乗りながらとか、エレベータ待ちながらとか。10年以上やると、いつの間にかある程度、日本語話せるようになったんです。
もしかしたら、みなさんが同じように10年前から勉強していれば、いまもう英語しゃべれるかもしれない。10年後の自分がどうなっていたいのかを今日決めて、やり始めれば10年後はそうなっているよ」
欲しいものは絶対手に入れたい
今決めて毎日コツコツやる。そこで何ができるか、できないかを見極めながら検証していく。最悪の場合、撤退時期や自分の能力などを見極めて、次の挑戦のための用意をする。
そのように聞くと、挑戦という言葉は精神論ではなく、とても具体的なプロセスのように聞こえてきます。ジェイソン氏は自信の性格を振り返りながら、挑戦をするためには「謎の自信」も必要だと言います。自分には絶対できるという自己肯定力です。
「不満なまま終われるか、欲しいものは絶対手に入れたい、他の人ができることは絶対できないわけがないとか、もともと小さい頃からそういう考え方だったような気がします。
アメリカではそういう謎の自信を持った人があまりに珍しくない。ただアメリカの場合、客観的な根拠に基づいていない自信もたくさんあります。例えば、USA!USA!どの国の人よりも優れているみたいな、よくわからない自信。
ただ個人の挑戦という局面では、謎の自信はうまく使えていると思うんですよ。できないやつらでも、自信満々で俺が社長になってやるみたいな。その中から本当に成功する人がでてきて、その人を見てできないやつらがまた自信を持つ。
死ぬまで一回も成功できない人も多いのだけど、それでも死ぬまでは挑戦し続けるんです。僕はたまたま上手くいったことがいくつかあっただけ」
この自分を肯定する力は、日本の「働き方改革」にとっても不可欠だとジェイソン氏は言います。
日本を変える秘密
「自信がないから会社の言われるまま我慢するしかないと思っていて、それが理由で会社が変わらないことが多い。
会社側からすれば、みんながスーパーブラック残業を続けてくれた方がうれしい。なぜなら、そうすることで利益が出やすい場合が多いから。
特に日本はサービス業とか、人間の労働力に依存した業種が多いでしょ?みんなが頑張った分はお金として会社にまわる。
会社側から変わるメリットや経済合理性がないですからね。『これじゃ我慢できないから環境を変えろ』と言わないと、永遠に変わらない。これはまず自分たちに対する自信の問題です。自分には価値がある、信じましょう!」
交渉しようと思わない人は、自分の望む待遇や欲しいものは手に入れることはできない。相手に出されたものを受け入れてばかりでは、相手の都合通りになる。改めて言われるとまったくその通りです。
しかも、日本では自信がある個人がいたとしても、その他の人が我慢しているせいで足の引っ張り合いが起きているとジェイソン氏は説明します。
「僕は米国と日本で就職活動をしましたが、日本企業の内定条件は決まっていて、一切、交渉できませんでした。どんな能力・経験・資格持っているかはどうでもいい。新卒は新卒。月給はこれ。以ーーー上。
米国は全然違いました。僕はこれができる、だから新卒扱いじゃなく、中途扱いで別の仕事をやらせてくださいと交渉できた。最終的に検討していた日本企業の5倍のサラリーをもらえることになりました。
日本では、嫌なら他に行ってください、代わりはいくらでもいるからとなる。そういう企業の態度だと、日本は何も解決できないと思います。気づけば、できるやつはみんな米国や海外に行って稼いでいる。で、できないやつだけが残る。
まわりがみんな我慢するけど、僕からしたら邪魔でしかない。働き方改革をするにしても、日本の働き手が一斉に自信を持って会社に何も求めなければ、結局、何も変わりません。
変われなければ、優秀な人が国をでていくだけ。働き手不足とか言いますけど、やる気がないやつだけ残って、できる人が足りなくなる方が問題。本当に最悪で、企業は閉店するしかなくなります」
ジェイソン氏は、働き方改革を成功させる上で、評価の基準を生産性や結果にしぼることも重要ではないかと言います。生産性で評価しない限り生産性はあがらず、“できる人”への評価も曖昧になるからです。
とはいえ、「生産性だけをつきつけるのは良し悪しがある」とも。安心して頑張れる社内環境であれば、米国のように会社がきつくなったらすぐに競合に転職するというような風潮にはならないからです。
エリートが目指す仕事=プログラマー
余談ですが、ジェイソン氏は職業柄、多くのエンジニアにも接していますが、日本で優秀な人材があまり育たないと言われる理由として、社会的な評価や給料の問題があるのではと話します。
「米国だと、プログラマーは憧れの職業でエリートが目指す仕事です。しかし日本では誰でもなれると思われている。
おそらく、エンジニアに対する想いが違うような気がします。米国では、スティーブ・ウォズニアックみたいな人がいて、フェイスブックの初期の500人の社員やエンジニアはみな億万長者になった。
おそらく、日本のエンジニアでそのような大きな成功を体験した人はいないと思います。だから理想を想像しにくい。…テラスカイは違います。
僕たちの会社はエンジニアを大事にするし、初期からいるメンバーたちにはストックオプションも渡している。日本では珍しい例ですかね?」
日本経済は世界的に成功を収めた時期があったのは事実。しかし、その成功体験に捉われていては、日本の新しい未来は拓けないでしょう。ジェイソン氏は今後、日本の新しい活力となるベンチャー企業を発掘・育成するという仕事にも、積極的に挑戦していきたいと言います。
「日本の経済力は落ち続けているけれど、逆境のなかからどこかで新しい波が来ると思っています。それはベンチャー企業。僕はそう信じています。そういう訳で、テラスカイベンチャーズ、よろしくどうぞ!」
新たな挑戦に向け動き出したジェイソン氏。日本に挑戦や自信、そして笑いをもたらしてくれる人物の今後の活躍がとても楽しみです。本日は、貴重なお話ありがとうございました!
取材・文/河鐘基(ロボティア)、写真/荻原美津雄、取材・編集/FOUND編集部
厚切りジェイソンインタビュー
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