花より肉球
独り身で寝込んだりするとこれ程心細いこともない。そんな時こそネコクインテット。
「もしもし、ネコクインテット株式会社さん?」
「毎度ありがとうございまうす。ご利用はアプリが便利です」
「そうなんだけど、つい電話しちゃうんだよね。風邪で寝込んでてさ、今すぐ手配してもらえないかな」
「今すぐはお約束しかねまうすが、アプリなら可能かと」
「そこをなんとか」
「かしこまりました。お近くの野良に当たってみましょう。この時間帯ですと、お手配できる楽器に限りがございまうすが」
「結構毛だらけ猫灰だらけお尻の回りはクソだらけってなもんよ」
「かしこまりました。それでは後ほど」
「ごめん。オレたち楽器弾けんのじゃ」
程なくして現れた五匹は行儀良く頭を下げた。
「いや、いいよ。来てくれただけでも」
私がそういうと、せめてもの心尽くしと改まって五匹が五匹、熱帯びの顔に前脚をもぺんと押し当てた。
「肉球が熱を吸いまうす」
「これはいい!」
肉球に勝る快楽はなし。
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