休日の朝のクインテット
休日の始まりはいつもこんな感じ。
まず猫が部屋の引戸を開けにくる。掛金がしてあるので開かない。マーオマーオと戸板に爪を立てながら縋るように鳴く。
程なくして、どこからかまた別の猫がやってきて加勢し始める。加勢するといっても、いっしょにマーオマーオと鳴くばかり。
こちらは寝床のなかで本なんぞ読んで気づかぬフリをしている。するとまた別の一匹が取り付いて、マーオマーオと鳴き始める。
それでも知らん顔していると、また別の猫が加わる。今度のは鳴く位置がだいぶ高い。大猫である。
いい加減起き出していいのだが、こちらも意地になっている。もう一声、と念じていると、部屋の向こうで女たちが声を押し殺して、「早くして、お兄ちゃん」と催促している。「えー、やだよ、バカバカしい」と渋る息子。
それでも最後の一匹が一等澄んだ声で鳴き、それでようやく引戸を開けにいくと、猫に次女に長女に妻にそして長男のクインテット。
彼らの背後で朝餉の香が棚引いている。
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