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ギャップを諦めて楽しむ

7:00 夢と現実

朝夢から覚めてアラームの音が聞こえた時、大体がっかりする。

ずっと欲しかった着せ替え人形のおもちゃがあって、親に言うのは恥ずかしいからサンタさんと私だけの秘密条約を結ぼうと思って、前日にこっそりお手紙を書いてわくわくしながら起きてツリーの下を見に行ったらよくわかんない本が置いてあった8歳のクリスマスの朝の感情に似ている。

ふわふわした夢と理想から一気に引き戻されて、惨めで空っぽになるあの感じ。

たいていは現実から少しでも目を背けたくて、ベッドの上でもう一度目を閉じるが、目を開けなければならない時は再びやってくる。
スマホの光を無理やり目に浴びせながら、あるいはカーテンから差し込む光の筋を呆然と眺めながら、頭と身体でがっかりを処理していく。

そして、夢の中の期待とは全然違う1日を始めるために、バンッと音を立てて起き上がる。

12:00 過去と今

午後の予定を聞かれて、寮に戻って勉強すると私は言う。
頑張ってるね、と言われる。

そして、寮に戻ってYouTubeを見ている自分が2時間後に自分によって発見される。


15:00 他人と自分

日本人ではないクラスメイトに、
「あの子あなたと同じ日本人だよね?話しかけに行きなよ!」と言われる。

なぜ日本人だからという理由で話しかけに行かねばならないのかと疑問に思いながら、「ははっそうだね」と流す。


23:00 言葉と感情

一日の溜まった感情を文章にする。
感じていることがどのような言葉ならより正確に表現できるのか、試行錯誤しながら綴る。

ひと通り今日の感情を書き記す努力をした後、私はこう書いていた。

『言語化できている時点でもう今生で思っていることじゃない。言葉って星みたいだ。』



24:00 ギャップの狭間

人はギャップを埋めようとする。


7:00の私は夢に包まれた身体を現実に引き戻すために意を決して起き上がり、

12:00の私は過去言っていたことと全く違うことをしている自分に罪悪感を覚え、

15:00の私は相手から見た日本人としての私に対する認識と私から見た私への認識のずれに違和感を覚えながらも時々「日本人」として振る舞い、

23:00の私は感じていることを言葉にすると陳腐になってしまう気がして苦しむ。


ギャップを埋めようとすることをよく人は努力という。
でも、努力すればするほど理想は遠ざかって行くように見え、ギャップが完全に埋まることはない。理想が実は空っぽだったなんてこともある。

じゃあ理想を持たなければいいじゃないかとある人はいう。期待なんてせずに、今ある幸せに満足しよう、と。

でもそんなん無理じゃん。
好きな人達には良く思ってもらいたいじゃん。
好きなんだから期待ぐらいしちゃうじゃん。
せっかく生きるなら、より良い自分でいたいじゃん。



31:00 諦めた

一旦諦めることにした。

勉強すると言った直後にYouTubeを見ている自分に対して、もう諦めて今日はのんびりしようと声をかけてあげた。

他人から自分の認識とずれた扱われ方をした時、そっか〜他人は自分のことそう思ってるんだ〜、おもろ。と思うようにした。

より適切な言葉を探すのを諦めて、一旦えいやって書いちゃってみた。


ギャップを埋めようとすることを諦めて、ギャップのままで楽しむ。
すると、のんびり見ていたYouTubeから自分の次にやりたいことが見つかったり、クラスメイトと日本のことが更に好きになったりならなかったり、放出された言葉を見て新しい感情が生まれてきたりする。

元々あったギャップは気づかないうちに埋まっているかもしれないし、全く別の方向に行っているかもしれない。

こうやって、ギャップとか矛盾みたいなものをポジティブに諦めて楽しみながら生きて行っても良いのかなと思った。


だから最近の朝は楽しくがっかりしている。

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