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岩井俊二監督『四月物語』

上京直前の1998年3月、福岡・天神のミニシアターで見た思い出の映画。松たか子が北海道から上京して大学に入る話なので、自分の人生と完全にダブるが、初見の時点ではまだ「三月物語」を生きている段階。
(『四月物語』で言えば、松本幸四郎一家(松たか子の本当の家族がカメオ出演)に見送られる冒頭シーンを生きているにすぎない)

岩井俊二監督の公式YouTubeサイトで期間限定公開されていたので四半世紀ぶりに見た。もう1998年当時の雰囲気がぷんぷん漂ってきて泣けてくる。四半世紀前と言っても昨日のことのようだが、フィルムで撮られている質感がデジタル主流の現在との決定的な違いか。

今となっては新歓ムードの大学キャンパスのシーンが、バンドサークルの音とかが懐かしくて胸がいっぱいになる。
(釣りサークルの先輩が津田寛治だったとは!)
国木田独歩の「武蔵野、武蔵野…」のサイクリングのシーンが印象的。武蔵野の野原だと間違えて覚えてたけど北海道だった。行ってみたい。
坂本龍一&高橋幸宏追悼で最近よく聴いているトノバン(加藤和彦)が終盤に登場して身内が出てきた気分になった。映画出演は大島渚監督『帰って来たヨッパライ』(名作! いつか記事を書きたい)以来。
劇中劇「生きていた信長」はフィルムを物理的にひっかいて古さを出しているのか。デジタル全盛の今となっては貴重ないい味わいだ。

…と感想を箇条書き風に記したが、今回の再見で最も琴線に触れたのが町の本屋さん(これも絶滅危惧種です)のこのショット。

(本棚がパンされる)

ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』、ジャン=フィリップ・トゥーサン『ためらい』、エイズで早逝したエルヴェ・ギベールの『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』。この頃の集英社のフランス文学シリーズの背表紙。中学~高校時代に通った近所の黒木書店の外国文学コーナーを再現しているかのようで胸が熱くなった。高校時代にトゥーサンにハマり、大学ではクンデラにハマった。エルヴェ・ギベールも何冊か読んだ。
つまり、町の本屋さんと集英社がなければフランス語に携わる今の自分もなかったという意味で自分のルーツなのだ。
大学卒業後は突如ジャン・エシュノーズにハマって、また集英社の単行本にお世話になった。

(本棚の次のショット)

たぶん残りの半生、こうして懐かしいものに包まれながら生きていくのだろうなあ。新しいものとの出会いも大切だが、懐古趣味も許してほしい。
何せこのブログは「FORTYTROF」。40歳(FORTY)を境にゼロへと逆回転していくというコンセプトの人生ブログだから。

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