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【プランティオ 日野原氏】メーカー出身のエンジニアがIoT領域に挑戦。子どもたちの未来に緑の環境を届ける

フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームをつくり、スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。

プランティオ株式会社(以下、プランティオ)は、都市における野菜栽培と食の新しいライフスタイル「Farm to Table」をデザインする会社。テクノロジーとエンターテインメントを通じ、食と農の民主化を目指すスタートアップです。

今回お話を伺うのは、プランティオのCTOとして活躍する日野原氏。エンジニアとして働くことの魅力に始まり、スタートアップの魅力、リアルテックに関するエピソードなどを伺いました。

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日野原 錦 氏
家電大手ソニー、ベンチャー企業WHILLでの電気エンジニア経験を経て、2020年5月にプランティオへ参画。デジカメやスマホ、次世代電動車いすなどの開発を手がけた経験を持つ。島根の自然豊かな環境で生まれ育ち、生活を豊かにする家電製品に魅せられ、モノづくりの世界に没頭する。2018年の第一子の誕生をきっかけに、自然に触れる文化を大切にしようと野菜作りを始め、現在は人と自然をつなぐ "優しいテクノロジー" の開発を目指す。


大企業からスタートアップに転職。製品づくりをゼロから10までこなせるエンジニアへ

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──まず、これまでのご経歴を教えてください。

日野原:私のキャリアは家電大手のソニーから始まります。音楽プレーヤーなど、身の回りにある製品で人の役に立ちたいと考えての就職でした。デジカメやスマホで使われる電子基板のレイアウト設計を8年ほど担当した後、次世代電動車いすを販売するスタートアップ企業、WHILLへ転職します。

その背景には、2012年頃から耳にするようになった「ひとり家電メーカー」の存在があります。モノづくりの敷居が下がり、設計やデザイン、営業などもすべて一人でこなす企業が登場し始めた時代でした。

私はその頃に、これからは大企業よりもスタートアップが台頭するのではと危機感を抱くようになっていたんです。ゼロから10までこなせるエンジニアになり、トータルで製品づくりに携わる必要があるな、と。

──大手企業からスタートアップへの転職。大きく環境が変わり、働き方のギャップやリスクに悩んだりはしませんでしたか。

日野原:電子基板という専門職を起点に、幅広くスキルを身につけたいと考えていたので悩むことはありませんでした。WHILLではお互いに求めていたことが合致したため、むしろ「やりたかったことができている」という実感のほうが大きかったです。

また、当時は子どももいなかったので、土日や昼夜も問わず働けましたし、出張や引っ越しも自由にできる環境でした。恐れよりも、リスクを取るなら今しかないという考え方をしましたね。

──モノづくりのスタートアップで働くにあたって、チャレンジングなことも多く経験されたのではないでしょうか。

日野原:大企業では経験できないことを本当に何でも経験しました。回路やメカの設計、広報誌の発行などさまざまです。特に印象的なエピソードは2014年の12月、入社の翌日に台湾へ飛び、工場での量産体制を構築したことでしょうか。

あと、試作品の試験のためにシカゴに飛んだところ、肝心のパーツが届いておらず、自分で板金を切って同じものを作ったこともあります。ただ、苦労が多かった分だけ、ユーザーに喜ばれる製品の開発に至った際には代えがたい喜びがありました。

──貴重な経験を積まれたWHILLから転職されたきっかけを教えてください。

日野原:2018年に第1子が生まれ、家庭も大切にすると決めたことが大きいですね。同時に、落ち着く環境を作りたいという想いから自然や植物に目が向くようになっていました。生まれが島根の田舎町で、360度森に囲まれた生活をしていたことが原体験になっているのかもしれません。

そんなときに、「持続可能な食の農をアグリテインメントな世界へ」と謳うプランティオの芹澤CEOに出会いました。ワーク・ライフ・バランスを大切にしたいという考えを相談すると、嬉しいことに快諾。自分とプロダクトの親和性も以前より高まると感じました。

また、入社後もモチベーション高く仕事を続けられるのは、ビジョンの達成に向けて一緒に問題を解くところから関われるポジションだからです。そういう意味でも、やりたいことができているのだと思います。


事業戦略や広報活動もリード。グッドデザイン賞とクラウドファンディングに貢献

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──現在プランティオでは、CTOとして活躍されています。具体的な仕事内容と組織での役割、ミッションを教えていただけますか。

日野原:肩書きはCTOですが、実質はCEOの芹澤と2人で何でもこなしているので、取り組みは幅広いです。フリーランスのデザイナーやシステム開発の会社を指揮するほか、ビジネスモデルの構築と推進、資金調達をした金額の範囲で運用できるようにロードマップを引いています。

ミッションは、代表が描くビジョンを実現することです。現在はそれを、HOME、Outdoor、Indoor の3事業を展開しながら社会に実装できるよう進めています。その想いや世界観については、当社で運営するWebマガジン『grow JOURNAL』を読むとわかりやすいと思います。

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──これまで取り組まれた成果、会社に与えたインパクトもお聞きしたいです。

日野原:目に見える部分では、『grow HOME』と『grow CONNECT』という2つのプロダクトへの注目が挙げられます。

『grow HOME』は2020年度グッドデザイン賞を受賞、『grow CONNECT』はクラウドファンディングで162名の方からご支援をいただき、総額も目標金額に対し833%で終えることができました。現在は量産に向けて動き出しているところです。

これらは従来のプランターをIoT化することで、野菜栽培体験における「作る〜食べる」までのプロセスが共有できる仕組みになっています。

野菜の置かれている状況をナビゲーションすることで、失敗しがちな家庭菜園を持続可能にし、自給自足を達成。同時に野菜栽培がもっと楽しくなり、エンタメ性もさらに高まるというサイクルを生み出します。

ビジネスモデルとしては、一般家庭に向けた直販のほか、マンションやオフィスビルと連携したBtoBtoCモデルも考えています。

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──これらの取り組みで大変だったことはありますか?

日野原:私が入社したタイミングでベースとなるデザインは完成し、施策としても現在のサイズに収まるようにはなっていました。課題は、量産に向けての判断が芹澤だけでは難しかったこと。そこで私はこれまでの知識と経験を活かし、工場との交渉などを率先して行いました。

社内からは「2年以上かかった開発が日野原のおかげでスムーズになった」「IoT化の実装に成功したのはスマホデバイスに詳しい日野原のおかげ」という声もあるようですが、だいぶ盛られていると思います(笑)。

──日野原さんが感じる、プランティオの魅力を教えてもらえますか。

日野原:ビジョンに共感してくれたユーザーさんとのつながりが、この会社で働くことの1番の魅力だと思いますね。具体的には「家庭菜園をテクノロジーで可能にする」「都市の自給率や緑の多い環境をつくる」といった発信を受け取り、賛同してくださっている方々とのつながりです。

現在は、野菜を育てる人と野菜が欲しい人をつなぐプラットフォーム『grow SHARE』を通したコミュニティ菜園の輪も広がっています。自宅の庭やベランダで野菜を育てる人、街中にあるコミュニティファーム、屋上農園などを地図上で確認し、つながりを生むことができる。

このように活用の様子を見せることが、環境負荷低減の可視化にも結び付くと考えています。

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シード期から上場後の会社まで、スタートアップも幅広い。目的にあった転職を意識する

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──ここからは、スタートアップで働く魅力を伺いたいと思います。日野原さんはどうお考えでしょうか。

日野原:スピード感のある環境で、縦にも横にもスキルを伸ばせるのが最大の魅力ではないでしょうか。大企業とは違い、スタートアップはIPOというゴールに向けて、限られた資金で達成することが求められます。そのため、広報や事業戦略なども併せて担うことになります。

縦に伸ばすというのは、開発の初期フェーズから量産、サービスリリース、アフターフォローと展開するイメージです。短期間に濃い密度で成長したいエンジニアは、スタートアップで働くことを検討するのもいいと思います。

──日本はメーカー出身の技術者も多いと想像します。それに比べ、IoT分野のスタートアップが少ない印象もあるのですが。

日野原:リアルテックは量産までの期間が長く、資金の回収速度も遅くなりがちです。単純に参入したいと考える経営者が少ないため、受け皿も少なくなっているのではないでしょうか。

私の前職であるWHILLは成功例の1つだと思いますが、当時は本当に泥臭いことの連続でした。開発も量産もファブレスではあるものの、実際はFabを自分たちで立ち上げたといっても過言ではありません。

海外の工場で量産工程から加わったり、電子機器を扱ったことがないとあれば一緒に試験をしたり。ただ、化けるときは化けるので、覚悟を持って社会に貢献したいエンジニアは挑戦する価値があると思います。

──リスク面から、大企業からスタートアップへの転職に悩む人も多いと思います。何かアドバイスはありますか。

日野原:何をリスクと捉えるかですが、スタートアップと一口に言っても、上場手前の規模まで成長している会社もあれば、バルミューダのような上場後の会社もあります。スピードと安定の両方が取れる選択肢もあるので、そのあたりも検討してみてはいかがでしょうか。

最近は副業(複業)を推奨する流れもあるので、収入を確保しながら、いい話があれば聞きに行くというスタンスを持ち、余裕を持って希望に合うスタートアップを探すのも手だと思います。

──フォースタを通して転職された際のご印象を教えていただけますか?

日野原:スタートアップに特化した「エンジニアのキャリア支援」というコンセプトは珍しかったので、話を聞いてみようと思ったんです。

当時は子どもを連れてカフェで相談もしました。途中で大泣きをされた時には自宅のロビーに場所を変更していただいたり。そんなふうに熱心にご紹介してくださる中で、ビジョンに共感ができて、スキルマッチもされたプランティオに出会えました。

──ありがとうございます。では最後に、プランティオで働きたいエンジニアにメッセージをお願いします。

日野原:今後は、渋谷などの都心部を中心に進めてきたフィールド事業を、日本各地にオープンさせる計画です。その際、これまでの家庭向けシステムとは異なる「屋上農園の体験」を最大化できるシステムに作り変える必要があるんです。

私はハードウェアには詳しいのですが、ソフトウェアやシステムについては模索しながらのディレクションです。そこで、サーバーサイドの実装ができるエンジニアは最低限欲しいと考えています。さらに希望を言えば、アプリやウェブのフロント、クラウドインフラの構築なども自身の手で実装ができる方に入っていただけると嬉しいですね。

2022年は事業もより活性化し、多くのユーザーさんが入ってくる予定です。こういった知見のあるエンジニアに内部メンバーとして参画していただき、一緒にビジョンを実現していけたらと思っています。

──これからのビジョン実現に向けての活動が楽しみです。素敵なお話をありがとうございました。


インタビューご協力:プランティオ株式会社

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム