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【グラファー 畑氏】行政システムを、日本の未来を「自らの手」で変えたい――AWS Japanからスタートアップへ

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

株式会社グラファー(以下、グラファー)は「Digital Government for the People」をかかげ、デジタル行政プラットフォームを開発するスタートアップ企業です。オンライン申請や電子認証など、全国の自治体に向けて利用者の利便性を高めるさまざまなサービスを提供しています。 
同社でPdM(プロダクトマネージャー)を務める畑 史彦氏は、フォースタの支援を受けて2021年6月に入社。新規プロダクト開発を複数担当されています。

今回は畑氏に、入社の経緯やスタートアップで働くことのやりがい、仕事観などについて幅広くお話を伺いました。

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畑 史彦 氏
サイバーエージェントとサイボウズの合弁会社であるcybozu.net(現在はサイボウズに吸収合併)でアルバイトを経験した後、2009年株式会社サイバーエージェント(以下、サイバーエージェント)に入社。エンジニアとして、メディア、広告、モバイルゲームなどさまざまな開発案件に携わる。その後ベンチャー企業を経て、2016年10月よりアマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWS)に入社。ソリューションアーキテクトとしてサービスの導入提案やアーキテクチャの検討など、顧客の課題解決に尽力。
2021年6月、グラファーに入社。本業の傍ら、行政機関のメンバーとしても活躍中。


「自治体や行政など、この国を支える重要なシステムに貢献したい」行政機関での副業が、スタートアップ転職のきっかけに 

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—— まず、畑さんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。

畑:大学を中途退学後、cybozu.netにアルバイトとしてジョイン。ポータルサイトの運営や広告営業などを担当していました。 

エンジニアとしてのキャリアは、このポータルサイトの開発や運用もやらせてもらうようになったのがスタート。その後、「より本格的にエンジニアリングの仕事に携わりたい」と上司に相談したところ、幸運にもサイバーエージェントのエンジニア採用枠を紹介してもらいました。プログラミングは小さいころから好きで、独学でずっと続けていたので、入社が決まったときは本当に嬉しかったですね。 

サイバーエージェントでは、メディアや広告、モバイルゲームなどさまざまな開発案件に携わりながら、エンジニアとして技術を磨かせてもらいました。一定のキャリアを積んだのちチームマネジメントを任されるなど非常に多様な経験をさせてもらいました。 

その後、ベンチャー企業勤務を経て、2016年AWS Japanに入社。ソリューションアーキテクトとして、約5年間在籍していました。顧客に対してAWSを活用した課題解決提案を行う業務で、コンサルティングというよりはプリセールスに近いポジションです。

  
—— 世界的に有名な外資系企業に在籍していながら、転職活動に至った理由は何だったのですか?
畑:思いがけず行政機関での民間人材採用の内定が決まったことが、転職するきっかけとなりました。

結婚や出産、引越など多数のライフイベントを経て、自治体や国のサービスを利用する機会が増えたことがきっかけです。「この手続きがオンラインでできたら便利だろうな」とか「この手続きは、きっとバックエンドではこういうデータの持ち方・処理フローになっているんじゃないか。だとしたらこうすれば職員の方も申請者も楽になったりするのでは?」といったことを考えるようになりました。

ただ、こういった着想はあくまで外野からの勝手な視点で、実際は複雑な経緯や制約の中で絶妙なバランスを取って最適なかたちとなっていることが多く、当事者とならなければ実態は分かりません。行政のシステムは国民みんなが使うという点や税金を原資にしているという点から、広く批判にさらされやすい特徴があるように思います。批判されやすい対象だからこそ、外から「こうしたらいいじゃん」と勝手な妄想を押し付けるのではなく、それを少しでも実現し良くしていくために手を動かす側に回りたいと思うようになりました。

しかし、もともとコンシューマー向けシステムの業界でずっと働いてきていたため、真反対とも言える行政システムのようないわゆる堅いシステムに携わるのは難しいだろうという先入観を持っていました。

ところがそんな折、とある行政機関が民間出身のエンジニア人材を募集していると知り、応募したところ内定をいただくことができました。AWS Japan で働きながらの副業が難しかったため「だったら本業でも行政システムの開発に関われる仕事をしよう」と転職を決意。AWS Japan では長くフィールドでの業務を担っていたので、エンジニアとしてもう一度プロダクト開発に携わりたいという気持ちもありました。

—— 行政システムにエンジニアとして携わるということが大前提だったと思うのですが、その中でなぜスタートアップを選ばれたのでしょうか?

畑:今回の転職では、会社の規模を問わず「共感できる事業」「フレキシブルに働ける環境」と出合いたかったので、スタートアップにも当然、興味がありました。またスタートアップで働くことで、前職では経験できなかった事業にまつわる裁量権を自分が持ちつつ事業を推進していく経験が出来るのではないかという思いもありました。

私の言葉をそのまま受け止めて動くエージェントが多いなか、フォースタのヒューマンキャピタリスト井上さんは“本人も気づかなかった真意”を掘り下げたうえで、目指したい方向性と合致する企業を紹介してくれて。その真摯な姿勢に、他社との違いを感じました。


「グラファーには、互いをリスペクトし合えるメンバーがいる」

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—— 転職活動中、選択肢は複数あったと思うのですが、最終的にグラファーに入社した決め手は何だったのでしょうか。
畑:「日本に貢献できる事業」であることを日々実感できる環境にまず惹かれました。パブリックセクターと直接やりとりをしながら、プロダクト開発のみならず、パブリックアフェアーズも強化している。グラファーが掲げるミッションは「プロダクトの力で 行動を変え 社会を変える」ですが、文字通り本気で変えようとしているその姿勢に、心から共感できて。 また、私の中の課題として、開発サイドで事業を創る視点を持っている人と一緒に働きたいという想いがありました。グラファーではその視点をもっている人が多かった。

加えて、代表やメンバーの人柄にも背中を押されましたね。自分にとって“誰と働くか”は、とても大切な要素。例えば、何かのプロジェクトをやり遂げたときに、お客様から感謝してもらえたり、その成果を同僚と喜び合えることが、働くうえで最高のモチベーションになっているんです。面接を重ねながら「グラファーには互いをリスペクトし合えるメンバーがいる」と確信しました。 また、不安に思っていた大企業からスタートアップ転職の報酬の違いや将来への可能性も真摯に説明してくれることで、自分の中でも不安が解消され、自信をもって意思決定ができたと思っています。

—— 大手企業からスタートアップへ転職するにあたって懸念点はありましたか?

畑:6歳・3歳・1歳の子育て真っ最中ということもあり、家族の協力なしにはスタートアップでの就業はむずかしい。そう思っていたので、とにかく妻への説明には時間をかけました。これまでの働き方や収入に変化があることや会社の今後の見通しなどを、グラファーやフォースタのみなさんに協力してもらいながら、データを用いて事細かに話しました。

最終的には妻も「ここまで調べて考えて、言葉を尽くしてくれているなら大丈夫」と理解を示してくれて。転職後、グラファーで働きながら、行政機関にも勤務していますが、問題なく仕事に集中できています。 

ユーザーの現場に深く入り込むことが“役に立つ”プロダクト開発の第一歩

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—— あらためて、グラファーでの現在のポジションと業務内容について教えてください。 
畑:PdM(プロダクトマネージャー)として、複数の新規プロダクト開発に携わっています。業務を進めるなかで特に意識しているのが、ユーザーとなる自治体の現場にしっかりと入り込むこと。打合せやヒアリングのほか、長時間の職場見学を組み込みながら、現状把握や課題抽出を丁寧に行っています。 

私がエンジニアのキャリアをスタートした10年前は「顧客の課題解決のために、どういう商品をつくればいいのか」を考えるPdMという役割そのものが存在しませんでした。するとどうなるか。極端な例でいうと、現場を全く見ずに机上の空論だけでプロダクトを開発することもあり得たわけです。PdM不在の状況に疑問を感じていた私は、必要に応じてその役を自ら買って出ていました。例えばベンチャー企業に在籍中、金融系サービスを立ち上げようとなったときには、土日の夜間に居酒屋でアルバイトしたこともあります。自分が開発するにあたって、同様のサービスがどのように店舗で活用されているのか、この目で確かめたかったからです。 

時代が変わり、PdMという職種が一般的となりましたが、それでも、グラファーの「現場と向き合う姿勢」は特筆すべきものがある。“本当に役に立つプロダクト”を生み出すために、職務を全うできている充実感があります。

—— 実際にグラファーのサービスは多くの自治体に導入されています。その秘訣は何だと考えますか。
畑:個人的には、大きく分けて3つあると思っていて。
1つ目は、先ほどからお話ししているように、自治体の現状や課題をつぶさに捉えながら、役に立つプロダクトを開発していること。2つ目は、会社のメンバーのみならず、中央官庁や自治体などさまざまなステークホルダーと一体感をもって、ものづくりを進めていること。3つ目は、SaaSでサービス提供しているため、継続的な改善が可能なこと。現場のニーズに合わせて、機能をどんどんブラッシュアップしていけるのが最大の強みですね。 

現場と現実を見極めながら仕事ができる。それがスタートアップの醍醐味 

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—— 転職してから半年経ってみて「スタートアップだからこそ得られるキャリア」はどんなところにあると実感されていますか。 
畑:エンジニアとして、単に技術力を磨くだけでなく、事業づくりの勘所や嗅覚も身につけられる点でしょうか。経営陣との距離が近いため、経営視点で物事を考える場面が圧倒的に増えましたし、任される裁量もとても大きい。役割がかちっと定まっているわけではないので、必要だと思った案件に自ら関わることができるんです。

あと、これはうちの会社だからなのか、スタートアップだからなのか分かりませんが、想像以上に優秀な人が多いです。特にビジネス側のメンバーにはいつもいい刺激を受けています。 

現場と現実を見極めながら仕事ができる。それが最大の醍醐味かもしれません。

—— グラファーのエンジニア組織としての魅力はどこにあるのでしょうか。
畑:事業をしっかり構想できる人がいるから、エンジニアはエンジニアリングに集中できる。今の会社のフェーズで、このような安定した土壌があるのは大きいですね。代表の石井大地がもともとエンジニアということもあり、エンジニアが力を発揮しやすい組織・制度設計になっていると感じています。

技術スタックも非常にモダンです。行政に提供するプロダクト開発ということでセキュリティや機能性が重要視されていますが、その一方で新しい技術や手法を積極的に取り入れる文化もあります。エンジニア間では「こんな技術があった」「この手法を試したい」とチャットが飛び交っていて、毎日楽しいです。

行政・国民・開発者、三方良しの魅力的なシステム開発を目指す

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—— 最後に、畑さんが今後挑戦していきたいことは何でしょうか。 
現在、グラファーでは自治体の窓口などのフロント業務を手助けするサービスを SaaS として展開していますが、今後はよりバックエンド業務にまで入り込んでいきたいですし、ゆくゆくは中央省庁のドメインにも貢献していきたい。 
個人としては、行政のドメインに対しても、 Product Manager というロールで0からのプロダクトを開発することも既に挑戦だらけです。少しでも早く価値ある プロダクトを立ち上げ、自治体や皆様の生活が少しでも便利になる未来に貢献できたら、と思います。ゆくゆくは、開発したシステムが開発者目線でも魅力的なものとなり、他の方の参考になる知見を発信していきたいです。

—— グラファーの新たな行政システムによって、より良い日本の未来が拓かれることを楽しみにしています。畑さん、ありがとうございました。


インタビューご協力:株式会社グラファー

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム