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【セーフィー 森田氏】提供価値を考え抜く。ハード・ソフトの開発を経てたどり着いた「顧客視点」の定義

フォースタートアップス株式会社(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チーム「エンジニアプロデュースチーム」を開設。スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアの採用支援をしております。

セーフィー株式会社(以下、セーフィー)は「映像から未来をつくる」をビジョンに掲げ、カメラの映像をクラウド化した映像プラットフォームサービスを展開しています。

今回は、同社で活躍する森田雅紀氏に、入社の経緯から顧客視点でものづくりをする重要性、エンジニアやプロダクトマネージャー(以下、PdM)の理想的なキャリアの築き方など、様々なお話を伺いました。


森田 雅紀 氏
大学卒業後、ハードウェアエンジニアとして通信機器メーカーに入社。その後セイコーエプソン株式会社に転職し、新規事業立ち上げや技術開発に携わる。数々のベンチャーやスタートアップを経て2022年にセーフィーへジョイン。現在は企画本部、IoTソリューション部に在籍している。


もたらす価値を考え抜く。ゼロイチの事業・サービス立ち上げで得た姿勢

──まずは、これまでのキャリアについてお聞かせください。

森田:大学は理工系学部で通信工学や無線工学を専門として研究を行ってきました。大学卒業後の進路は、専門の知識を活かすべくハードウェアエンジニアとして通信機器メーカーに入社し、本職はエンジニアではありましたが商品企画から設計、開発、製造といったものづくりの一連の流れを仕事として経験してきました。

当時はハードウェアの機能で差別化を図る世の中でしたが、今後はソフトウェアやサービスで付加価値をつけていく流れに移り変わっていくことを予想し、ソフトウェア領域のスキルアップを目指してセイコーエプソンの研究部門でソフトウェアエンジニアとしてのキャリアをスタートさせました。当時のミッションは、中長期的な視点で新たな柱となる事業を作るとともに、新事業立ち上げに必要な要素技術の確立と製品開発をすることで、失敗もありながら事業部の立ち上げや、新製品の立ち上げに携わりました。

一方で、スピード感を持ちながら仕事を進めたいという思いが強くなり、また、ベンチャーやスタートアップに興味を持ったのがきっかけで、その後現在に至るまで副業を含めてスタートアップ数社で、主に商品企画や製品開発マネジメントの仕事をしてきています。そして2022年6月に、現在のセーフィーへジョインしたという経歴です。

──これまでエンジニアリングからマネジメントや企画にキャリアをシフトされたのはどういった経緯があったのでしょうか?

森田:自身の志向性によるところが大きいです。
元々、発想力やアイデアを求められるような役割で企画を作る工程が好きだったんです。

加えて、スタートアップに移ってから一緒に働くエンジニアのスキルレベルの高さを感じたこともあります。ものづくりのスピード感や新たな技術のキャッチアップが圧倒的に速く、技術では、彼らに敵わないなと。そこで、そういった優秀な人たちの力をより引き出せるような役割に徹したほうが組織に貢献できると判断して、エンジニアリングから軸足を移したのです。
 
──今回セーフィーさんへの転職を決めたのはなぜですか?

森田:より本質的な顧客課題の解決に向き合えると思ったからです。
セーフィーより前に在籍した会社では製造や建設、自動車など産業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けてIoTソリューション提案と製品開発に携わっていました。主にセンサーを活用したIoTソリューションによってお客様が抱えているビジネス上の課題を解決するべく活動をしてきましたが、機械的に判断できるセンサーデータと現場で働く人が視覚的に判断できる映像データを組み合わせることでお客様の喜びが最大化するシーンをいくつも経験してきました。改めて、映像の持つ力の大きさを実感したとともに、人間の目に代わるほどの高画質な映像サービスで、産業のDXを推進するセーフィーのビジネスに魅力を感じ、入社を決めました。

──転職の際に、ハードウェア開発でキャリアを積んだエンジニアが、ソフトウェア領域に挑戦をしようと悩むケースも見受けられます。どちらも経験している森田さんからアドバイスはありますか?

森田:同じエンジニアでも技術領域が全く異なり、新しいことに0からチャレンジになるのではと悩む気持ちは分かります。しかし大事なのは、ハードやソフトに関わらず、お客様に対して自分が持つスキルがどんな価値をもたらすことができるかを考えてみることだと思います。ハードもソフトも実現手段でしかありません。完全にどちらかのキャリアに振り切らず、これまでのハードウェアスキルを軸足にしてソフトウェアが得意とする周辺技術をスキルとして補っていくような考えが良いのではと思います。


言語化できない課題まで落とし込むことこそが、顧客視点に立ったものづくり

──改めて、セーフィーでの仕事内容を教えてください。

森田:現在は、企画本部のIoTソリューション部の部長として、PdMが在籍している組織マネジメントや、製品ロードマップの策定を担っています。

セーフィーのサービスは、カメラやネットワーク機器といったハードウェアの組み込み開発から、クラウドサービス、アプリケーションまで幅広い技術領域で成り立っています。ソフトウェアとハードウェア両方の知見を活かしながら、マネジメントや製品企画に携わっている状況です。

──入社して感じる、セーフィーの印象を教えてもらえますか?

森田:社員全員が、ビジョンへの共感と顧客視点で物事を考える姿勢を大事にしていると感じています。お客様に近い営業から、企画、開発、品質保証、サポート、バックオフィスに至るまでこの視点を持って仕事をしていて、何かを判断しなければならないシーンで「ユーザが本当に求めていることは何なのか?」といった視点での議論が、活発に繰り広げられています。

私自身も、これまでのキャリアで顧客視点を重視したものづくりを意識してきたので、セーフィーの文化はマッチしているように思います。

──「顧客視点」という言葉は、企業や人によって捉え方が異なる印象です。森田さんは「顧客視点」をどう定義されていますか?

森田:顧客の抱えている『言語化できない』課題まで噛み砕いて物事を捉えることだと認識しています。

例えば、お客様との会話の中で出てくる課題を解決しても、部分最適であって問題全体が実は解決していないという場合がありますよね。それは、言語化できていない本質的な課題を捉え切れていないことが一つの要因としてあると思います。お客様も我々も言語化できていないところに回答を用意するのは難しいのですが、お客様に弟子入りするように顧客分析をし、製品を利用したお客様の行動変化を逃さず改善を続けることが、顧客視点に立ったものづくりだと考えます。

真の課題にたどりつくには、業界知識や技術知見、お客様との一歩踏み込んだコミュニケーションなど、様々な要素が必要になります。たどりつくのはなかなか難しいものの、そこまで思案した製品こそが、プロダクトマーケットフィット(PMF)するのではないでしょうか。

──ちなみに、森田さんはこれまでどんな場面でPMFを実感しましたか?

森田:セーフィーのサービスとしては、映像がクラウドにあがるといった機能でお客様のニーズに応えられているだけでなく、「シンプルで使いやすいサービス」という点も市場に受け入れられていると思います。お客様に向き合っているからこそこうした非機能要件的なところにも気を配った製品作りができている、結果としてPMFができているということだと思います。


『テクノロジー』と『ビジネス』の素養。両立して身につけるため、自らの強みを伸ばす

──顧客視点を持つためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。

森田:『テクノロジー素養』と『ビジネス素養』の両方を磨くことが大事だと思います。テクノロジー素養とは、技術に対する知見や理解する力、ビジネス素養とは、市場を読む力や、顧客のニーズを的確に捉えられるような力です。

──森田さんはそれらの素養をどのように身につけられたのですか?

森田:私はエンジニア出身なので、テクノロジーに関する素養は、仕事を通して自然と身につけてきました。一方のビジネス素養は、新規事業の立ち上げに携われた経験とスタートアップでの仕事で技術からビジネスまで幅広い役割を任せられてきた経験で鍛えられたと思ってます。

スタートアップフェーズの会社では自分の役割以上のことを求められることが多くあります。エンジニアであっても顧客を知り企画を立て、ものづくりを経て、プロダクトをお客様に届ける。そしてフィードバックを受けて改善をしていく。当然、事業視点で売上を追うことも並行してやる。こういった一連の仕事を通して、さまざまな業界のお客様との接点を持って業界構造や事業を知ったりとビジネス視点が身についてきたと思います。

──テクノロジー、ビジネスどちらの素養も、エンジニアやPdM、どちらでキャリアを積まれる方にとっても生きるスキルだと思います。2つの素養を両立して身に着けるためのアドバイスがあれば教えてください。

森田:エンジニアであれば、若い内にとにかく強みとしたい技術領域でスキルを伸ばしておくことをおすすめしたいです。 そして視野を広げて活躍できる余裕がでてきた際に、それまでに培った強みを軸にして守備範囲を広げていくのが理想ではないでしょうか。しっかりとしたキャリアプランのイメージを持っておくことが重要ですね。

テクノロジーとビジネスの両方の素養を獲得すると言っても広く薄くではなく、自分なりの強みを持つことが自分の価値を特徴付ける上で重要かと思います。やはり何かに強みを持っている人は、組織の中でも活躍できているイメージです。


事業を通じて市場を創る。一点集中だからこそ、事業展望とビジョン共感が重要なのがスタートアップ

──これからスタートアップに挑戦したいエンジニアやPdMに向けて、どのような観点で企業を選ぶことをおすすめしますか?

森田:まずは、その企業が市場の創造者として事業展開できているか、そのビジョンに共感ができるか。
スタートアップはさまざまな事業展開をしているわけではなく、独自の技術やビジネスを強みにシンプルに1つの武器で新しい市場を創造していこうと目指しているケースが多い。そういった創造的なマインドの下でチャレンジングなものづくりを経験できることは大企業では経験ができないなと思います。
また、シンプルであるが故に、他に逃げ道はないので事業やビジョンへの共感が大切です。事業への関心もそうですが、自分がお客様の課題に共感を持って接することができるかに着目すると良いと思います。

もうひとつは、事業フェーズが自分のスキルや志向に合うか。
スタートアップといっても初期の0→1フェーズと成長期の1→10フェーズでは求められる役割が異なります。チャレンジングな環境に志向があれば前者、自身の成長の幅を広げたいのであれば後者といった具合で選択すると良いと思います。

──森田さんが、今後セーフィーさんで実現したいことを教えてください。

森田:PdMを束ねる立場において、今まで積んできた経験をどんどんメンバーに還元していきたいです。

セーフィーのPdMには、テクノロジーとビジネス、それぞれの素養を持っている優秀なメンバーが揃っています。一方で若いメンバーも多くそのポテンシャルをいかに引き出していくかに注力したいです。事業成長を目指すのはもちろん、それには人の力が必要です。メンバーのキャリア形成の観点も踏まえてマネジメントしていくことが私の使命だと思っています。

育成の場面では、自らの考えをまずは整理をする、それに対してメンバーも含めロジカルに一緒に整理することを大事にしています。

──森田さん、貴重なお話をいただきありがとうございました。


 インタビューご協力: セーフィー株式会社

執筆:近藤ゆうこ

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム