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【モノグサ 宇田川氏】知性をプロダクトに。 ボードゲームが結んだ志向の掛け合わせ

フォースタートアップス(以下、フォースタ)では、エンジニアに特化した専門チームであるエンジニアプロデュースチームを作り、スタートアップに対してキーマンとなりうるCTO・VPoE・エンジニアのご支援をしております。

今回紹介するのは、「記憶を日常に。」というミッションを掲げ、記憶のプラットフォーム『Monoxer』を開発・運用を行っているモノグサ株式会社(以下、モノグサ)です。『Monoxer』は、AIを活用したアダプティブラーニングにより、知識習得や記憶定着を可能とするアプリで、国内の塾・予備校・学校を中心に、一般の企業法人や海外にも導入が進んでいます。

2021年8月からモノグサにてシステム開発を担当する宇田川 祐志氏に、大手企業からスタートアップへ飛び込まれた今の考え方についてお話を伺いました。

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宇田川 祐志 氏
任天堂株式会社にてゲームプログラマーとしてキャリアをスタート。3Dオブジェクト制御・UI/UX・シーケンス処理の実装やユーザー分析等を担当し、3本のプロダクトリリースを経験。
2021年モノグサ株式会社に参画し、組織管理機能等の開発に従事。人間が学習し成長していく過程に興味があり、ユーザーの成長を支援するプロダクト作りを目指している。


日本を代表する企業からスタートアップへ。決め手は領域とボードゲーム!

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面接時に行ったボードゲーム。


−−これまでのご経歴を教えてください。

宇田川:大学は工学部電子情報科で、画像処理や画像解析の研究室で画像の可視化を研究しました。大学院では少し方向性を変えようと、ゲームの研究室に入りました。あまりプログラミングはせず、スポーツ選手のフローやゾーンのように極度の集中状態についての実験などをしました。熟練度や興味範囲で異なりますが、個人ごとに特定のジャンルや行動でゾーンに入りやすいようです。私はゲーム、アルゴリズム系の課題やコーディングをしている時はゾーンに入れます。

大学院を卒業後は、2016年に任天堂株式会社に入りました。ゲーム開発の環境が整っている会社で、特にハードとソフト一体のゲームをつくれる可能性が最も高い。ゲーム機があるのは任天堂とソニーで、ハードとソフトの関係が近いのは任天堂だと思いました。ゲームプログラマーとして主にC++を使い、5年で3本のプロダクトに関わりました。IoT系のベンチャー企業を経由して、モノグサに転職しました。ここに来て4ヶ月ほどが経ちました。

−−任天堂ではどんなゲーム開発をされていたのですか。

宇田川:1本目はゲームのUI/UX領域のエンジニアとしてデザイナーと調整するところから始まり、後に3Dのオブジェクトの物理計算やゲームのシーケンスなど幅広く携わらせてもらいました。

2本目はミニゲーム集の1つのゲームをほぼまるまる任せてもらい、3本目はスマートフォンのレースゲームをC#とUnityで開発しました。プレーヤーがマップ上でどのような経路で移動するか、コースから外れたらどこに復帰させるかなどを検討。BGMを製作するサウンドエンジニアも経験しました。

−−任天堂から外に出てみようと思ったきっかけはあったのですか。
宇田川:強い否定や不安はなかったのですが、全員が1つの同じ目的に向かえるような、もう少し小さいスタートアップのような環境も見てみたいと思うようになったのがきっかけです。任天堂を出る時、選択肢は「今出るか、ずっと残るか」でした。大企業は勤続年数が長い方が有利なので、今出ないなら、ずっと残るしかない。しかしずっと残れば好奇心を満たす点では後悔すると思いました。最終的には、外の企業を見てみたいという知的好奇心のほうが勝ちました。

−−転職先としてモノグサを選んだのはなぜですか。

宇田川:3点あります。1つはモノグサがEdTechだった点。もともと大学受験をする時に「こうすれば成績が伸びる」というメソッドを自分なりに持っていて、教育系に興味がありました。大学院の研究でゾーンを選んだのも、人間が学習して成長する過程に興味があったからです。自分との親和性を感じました。

2つ目は当時Googleで世界に30名しかいないAndroid開発チームに所属していたCTOの畔柳 圭佑をはじめ、優秀なエンジニアが在籍していた点です。誰と働くかは自分の成長に大きく影響すると考えていたため、優秀なエンジニアが多く在籍していることは非常に重要でした。

3つ目はボードゲームで遊ぶモノグサの文化です。これが最終的な決め手になりました。ボードゲームはプレイ前にルールが説明されて、そのルールの中で自分がどう立ち回れば有利になるか考えるゲーム。もともとゲームを通じたコミュニケーションが好きで、ボードゲーム好きが多いなら、自分と共通する好みや考えが多いのではないかと思いました。また、ゲームのプレイスタイルは相手の性格を理解する手助けになりますから、働く上で相手を知るチャンスに恵まれていると感じたのです。

−−モノグサでの現在のお仕事を教えてください。

宇田川:『Monoxer』プロダクトのソフトウェアエンジニアとして働いています。必要な機能や優先度をCTOの畔柳と詰めながら開発しています。

技術的には幅広く受け持っています。フロントエンドはTypeScriptやReact、バックエンドはScala、Play Framework、AndroidならKotlin、iOSならSwift、Web版ならFlutterなど。担当は機能やモジュール単位で区切るので、実装する時にそれに関わるフロントエンド、バックエンド、アプリを全部担当します。最初の会社と比べると、仕事の自由度はとても高まりました。その分、責任は大きいと感じています。

記憶をプログラムに落とし込む。知性を追求するプロダクト

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−−組織としてはどのような体制なのですか。
宇田川:現在社員は50名、うちエンジニアが15名です。特定の機能を入れる時に「どの顧客が、どのような理由で必要か」についてビジネスサイドやセールス、カスタマーサクセスのメンバーとよく話します。「こういう機能があるといい」と提案されると、プロダクトが今後拡張する時に機能追加が足かせにならないか、プロダクトに改修を加えなくてもビジネスサイドのオペレーションで対応可能かなど、エンジニア視点で妥当かを考えます。全体を俯瞰して仕様を決めて、ドキュメント化した上で実装していきます。50名でワンチームというイメージです。

−−入社した当初、苦労された点はありますか。

宇田川:はじめは、使用する言語やフレームワークを未学習の状態で入社したので、キャッチアップが大変でした。

最も大きかったのは、HTTP通信やデータベース設計などこれまでのゲーム領域とのギャップです。特にフレームワークの思想や、いかに設計するのがベストプラクティスなのかなどを理解するまでがハードでした。これまでSQLもほぼ書いていませんでしたから。当初は苦労しましたが、もちろん入社前から承知していましたし、未知のものを学ぶのは楽しかったです。

−−これからモノグサで実現したい機能や構想はありますか。

宇田川:記憶の効率化ですね。モノグサのミッションでもあり、そこに共感して入社しましたから。記憶のスタイルには個人差がありますが、一定の効果を出せる効率的な記憶方法はあると思っているので、プロダクトやサービスで提供していきたいと思っています。

−−『Monoxer』のプロダクトをエンジニア視点で見ると、どのようなところが魅力的ですか?

宇田川:脳の神経回路の理論を元にして、記憶情報をプログラミングできる点に面白さを感じます。詳しくはブログにもあるのでご覧ください。

どの問題をどのような順番で出題すれば、その記憶が長期記憶として残りやすいか。このプロダクトを通じて実験環境が整ってきています。今は目前の課題でいっぱいですが、そういう方向で改善を加えていきたいです。

−−データストレージや検索など情報化が進む現代で、モノグサはあえて人間の知性を追求しているんですね。

宇田川:そうですね。私たちは、記憶は人間の知的活動の根底でありながら、豊かさの根源でもあると信じています。だからこそ、ソフトウエアの力で記憶にまつわる問題を解決し、繁栄に貢献したい。そんなメンバーが集まっている職場です。

皆さん、研究熱心なので社内には論文読み部という部活動もあります。それぞれが記憶に関する論文を輪読し、交互に発表。研究論文をいかにプロダクトに落とし込んでいけるか考えるメンバーも多いです。

また、AtCoderや教育系アルゴリズムコンテストに関心を持つ人も多くて、一緒に参加してみるととても楽しかったです。こうして振り返ってみると、モノグサは私にとって考え方の重なる素晴らしい出会いの場になったのだと思います。

抽象・マクロ・長期。俯瞰的な議論でプロダクトを磨いていく

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−−モノグサでは優秀なエンジニアの方々が多いと聞きます。エンジニアとしての優秀さにはさまざまな観点がありますが、宇田川さんはどんなところを基準にしていますか?

宇田川:最も重要視しているのは、全体を見て未来を見すえた議論ができるか。たとえば、目の前のコードについての問題だけなら、if分岐と3行ほどコードを追加すれば解決できるかもしれません。しかし、この追加が将来の足かせになってしまわないか、そこに気づけるか。ある程度抽象、マクロ、長期的な視点で議論ができるかが重要だと考えています。

−−今回、フォースタを通じてご転職されていますが、支援の中で印象的だったことはありますか。

宇田川:担当してくれたヒューマンキャピタリストの村上さんは、自分がまだ意識できていないところを気づかせてくれたり、条件の中に自分と志向性が合うかも含めて選択肢をくれました。また「誰と働くか、会社がどんな環境かよりも、解決しようとしている課題やミッションで選んだ方がいい」とアドバイスされました。スタートアップの情報を収集するだけでなく、キャリア開発の支援を望むのであればフォースタが適していると思います。

−−大手企業とスタートアップの両方を経験して、スタートアップに向いている、活躍できるエンジニアの共通項があれば教えてください。
宇田川:自分で考えるのが好きな人、柔軟な人かと思います。仕事のやり方はいろいろあっていいと思っていて、マニュアルを忠実にこなすのもスタイルとしてありかと思いますが、それだとスタートアップに合わないかもしれません。

−−転職で成功するため、見るべきポイントはどんな点だと思われますか。
宇田川:会社の技術力は重要かと思います。外から見るならテックブログが参考になります。自分が重視したのはCTOの経歴でした。CTOが技術の土台をつくり、人を集めていくので、CTOの力量に依存するとの仮説を持っていましたので。

−−スタートアップに飛び込むことにためらっている人にアドバイスをお願いします。
「意外とリスクはない」と伝えたいです。すぐ潰れたらと心配する必要はないし、会社がうまくいかなかったとしても自分のスキルを高められていれば働けなくなることはありません。逆に大企業に残り続けると、技術的成長という観点でリスクが生まれる。残るリスクも考えた方がいいと思います。

−−中長期的なキャリアの展望があれば教えてください。
宇田川:成長の方向性として技術はあまり重要視していないんです。むしろどうすればプロダクトが良くなるかに興味があります。そのためには周囲を説得する力も身につけつつ、仕事を進めていければいいかと思っています。


−−モノグサのこれからの発展と、宇田川さんのご活躍をお祈りしています!ありがとうございました!


インタビューご協力:モノグサ株式会社

取材・編集:for Startups エンジニアプロデュースチーム