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病院薬剤師が語るアンサングシンデレラの舞台裏(第3巻)

皆さん、こんにちわ。病院薬剤師だまさんと申します。

本ブログ(note)にアクセスしていただき、ありがとうございます。

本ブログは、2020年4月よりフジテレビ系でスタートする木曜劇場「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」を10倍楽しむためのブログです。

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Rp.12 不安を不満に変えないために ~説明より大切なこと~

(あらすじ)
インフルエンザが流行期入りした。病院には大勢の患者が殺到し、調剤や窓口対応のため調剤室は修羅場と化していた。患者に正しい情報が伝わらず、マスコミに振り回されている状況に苛立ちを隠せないハク(羽倉)。そんなハクにみどりが手を差し伸べたこととは?

今回のテーマは「インフルエンザ」です。

この記事を書いているのが4月上旬。

今週は非常事態宣言も出て、コロナ禍は日に日に深刻度を増しています。

ワクチンも治療薬も存在しない新型コロナが流行すれば、ただでは済まないことは容易に想像できます。

しかし、思えばインフルエンザも、少し前までは似たようなものでした。

1998年11月、シンメトレルに「A型インフルエンザウイルス感染症」 の効能・効果が追加承認されるまでは、抗インフルエンザ薬は皆無でしたし、予防接種(インフルエンザHAワクチン)にしても、「発症」防止効果は60%に過ぎず、「重篤化」防止効果がメインでした。

※新型コロナはワクチンがない分、重篤患者や死亡者が多くて当然です。

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新型コロナと少なからず共通点のある今回のお話。

患者としても薬剤師としても、知っておいて損はないと思います。


さて、普段は感情を出さないハクですが、尋常ではないインフルエンザ患者の多さに・・・ボヤきまくります。

「第一、インフルインフル騒ぎすぎなんです」
「家でしっかり休んでた方がよっぽど治り早いのに・・・」
「病院来るなんてわざわざウイルスもらいに来るようなもん」
「20世紀の終わり頃まで対症療法で何とかなってたのに」
「他の国ではこんなにバンバン薬出さないですよ」
「マスコミはやたら不安煽って国民は流されて・・・」

それを聞いていた瀬野が、ハクを含めスタッフたちにこう釘を刺します。

「薬剤師には患者の「不安」や「焦り」を受け止める義務がある」

それが「情報」や「説明」以上に大事なことだと力説する瀬野でした。


下記の動画は、昨年のAST研修会で私が講演した内容です。ご参考まで。


ただ、瀬野にそう言われても今一つ腹落ちしていないハク。

直後に対応した患者の家族より、タミフルに関する不安を浴びせられます。

家族「でもタミフルは危ないでしょう!?」

ハク「(なんで目の前にいる薬剤師の言葉よりネットの記事を鵜呑みにするんだよ)」

わかるわかる。

薬剤師をしていればこんなこと、日常茶飯事なのです。

他剤への変更を求める家族を「不要だ」と説得しようとするハク。

しかし、それを見かねたみどりが割って入ります。

そして家族の話を傾聴し、点滴の薬(ラピアクタ)への変更を医師に相談することを約束するのでした。

ここでもみどりの「寄り添う心」が発動しています。

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「患者さんの不満に毎回応じてたらきりがないんじゃないですか?」

そう懸念するハクにみどりはこう返します。

「・・・そうだね、そうなるのはよくない。
 ただ・・・患者さんや家族が治療に納得していないのはもっとよくない」

「不安があるから不満が出てきちゃうわけで、
 それを頭ごなしに否定しても相手を追い詰めるだけかもしれない」

まるで瀬野が乗り移ったみたいですね(ハクにも見破られました)。


患者と家族を点滴室に案内する道すがら、予防接種の意義や異常行動への注意点を丁寧に説明するハク。

別れ際、患者からは感謝の言葉が贈られます。

今回の件でハクもひと皮剥けたかもしれません(インフルエンザに関するチラシを作るような積極性、これまでのハクにはありませんでしたよね?)。


今回の舞台裏のコーナーは「感染対策」です。

新型コロナ禍の渦中にあって、どストライクのテーマですね(笑)。

感染対策で重要なのは、何と言っても「予防」です。

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(参考)
1.流行前の予防接種
2.外出後の手洗いorアルコール製剤による手指衛生
3.適度な湿度(50~60%)の保持
4.十分な休養とバランスのとれた栄養摂取
5.人混みや繁華街への外出を控える(マスクを着用)

※ 出典:インフルエンザQ&A(厚労省)

実はコレ、当院のスタッフには毎年しつこく伝えていることなのですが・・・「馬耳東風」(そんなの知ってるよ)というのが正直な印象でした。

新型コロナがこれほど深刻化するまでは!


ワクチンも治療薬もないコロナに関しては、「予防」だけが頼みの綱です。

マスクも大切ですが、入手困難な状況の今、下記の「三蜜」が重要です。

1.換気の悪い《密閉》空間
2.多数が集まる《密集》場所
3.間近で会話や発声をする《密接》場面

また消毒薬が入手困難ならば、石鹸による(念入りな)手洗いも有効です。

手洗い

現在コロナウイルスに有効性が認められているのは、皮膚には消毒用アルコール(70%)、物の表面には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)です。

【重要】消毒薬なら何でも有効という訳ではありません。
ベンザルコニウム塩化物(0.05%)(ビオレU手指の消毒液・ビオレガード薬用消毒スプレーなど)の有効性は確認できていません。
       ↑
【速報】北里大学と花王の共同研究によれば有効性が確認されたそうです。

新型コロナ禍の一日も早い収束をお祈りしています。


今回はここまで。

次回(Rp.13)からは、いよいよ「がん患者と家族」編に突入です。



ドラマ放映は延期となってしまいましたが、コミック第4巻は4/20に発売されます(今日表紙のデザインも公開されました)。

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原作を予習して楽しみに待ちましょう。



Rp.13 チーム医療はなぜ必要か? ~第二の患者とは~

(あらすじ)
みどりは摂食障害で入院した中学生・樹里の担当となる。樹里は同じ病院に胃がんで入院中の祖父・太一を心配していた。これが摂食障害の一因と考え、樹里の心に寄り添おうとするみどり。しかし、樹里の心の葛藤はみどり一人で解決できるものではなかった・・・。

第12~15話は「がん患者と家族」編となります。

第12話「霧の中」
第13話「病なき病」
第14話「それぞれの闘い」
第15話「最期の砦」

とは言っても、前半2話の中心人物はがん患者の孫、樹里です。

よって、Rp.13は「第二の患者」というテーマでお送りしようと思います。

「第二の患者」をご存知ない方は下記リンクより試し読みをお勧めします。


おじいちゃん子だった樹里は、同じ病院に入院したことで心配していた祖父・太一との接触回数が増え、当初は順調な回復ぶりを見せていました。

ところが、太一の抗がん剤治療が開始されてから事態が一変します。

太一の治療方針に関して父親・和也と対立し、摂食障害が再燃したのです。

和也の考え
・太一にがん告知をすべきでない(本人がショックを受けるだろうから)
・太一に樹里を会わせるべきでない(辛い姿を見せたくないだろうから)

樹里の考え
・治らないのに嘘ついて辛い治療を受けさせるなんてひどい

みどりは精一杯自分にできることを探し、エンシュアH(栄養剤)を提案したり、励ましの言葉を掛けたりしますが、事態は好転しません。

大事な人を失うかもしれない「恐怖」
自分が支えなければという「責任」
弱音を吐けない「孤独」

家族の気持ちをわかっているつもりになっていた自分を恥じるのでした。


その体験をカンファレンスで話すみどり。

そこには臨床心理士・成田も同席していました。

臨床心理士とは
 公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格、およびその有資格者のこと。臨床心理士は臨床心理学を学問的基盤とし、相談依頼者(クライエント)が抱える種々の精神疾患や心身症、精神心理的問題・不適応行動などの援助・改善・予防・研究、あるいは人々の精神的健康の回復・保持・増進・教育への寄与を職務内容とする心理職専門家である。
※Wikipediaより引用

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成田はみどりに対して「注目」の発言をします。

「落ち込まずに、樹里さんと接するの怖がらないでね」

実はこれと似たようなシーンが後でもう一回登場します。

この発言がなぜ「注目」なのかはその際に説明します(覚えといてね)。


さて、がんに関する勉強不足を痛感したみどりは、瀬野の勧めでがん薬物療法認定薬剤師・江林(通称「エバさん」)のレクチャーを受けます。

がん薬物療法認定薬剤師とは
 一般社団法人日本病院薬剤師会が認定する資格、およびその有資格者のことである。がん薬物療法認定薬剤師はがん医療に関する知識と技術を身に着け、医療チームの中で、薬物療法に関して医師や看護師に提案、患者により良い医療を提供することができる薬剤師に認定される資格である。
※リクナビ薬剤師ホームページより引用

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そして、太一の治療に随行させてもらうことも約束してもらいます。

江林「みどり、病棟って今まで担当してるの小児科だけだよな?」
みどり「はい」
江林「・・・あぁ」
みどり「?」

このシーンの「謎」も後に明らかとなります。


樹里の悩みに真摯に耳を傾け、力になることを約束するみどり。

一方、和也は成田との面談を通じて太一へのがん告知を決断します。


そしてがん告知の日が訪れました。

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がん告知のシーンで印象深かった医師のセリフ
「我々が力になれるのは、柴崎さんの「これから」の一部に過ぎません」「治療は患者さん本人のものです。いつでもあなたが選択できるものです」

太一・和也・樹里 ——————

三者三様の想いがぶつかり合いますが、最終的には「抗がん剤治療の継続」という同じ方向を向いて家族が歩み始めたのでした(Rp.14に続く)。


今回の舞台裏は「チーム医療」です。

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言うまでもなく、医療は年々高度化・複雑化を極めています。

大昔のように、診断も治療も検査も栄養もリハビリも保険も・・・、とにかく何でも熟知している「名医」「スーパー医師」はもはや存在しません。

その証拠に、第12・13話をもう一度読み返してみてください。

もし成田のような臨床心理士がいなかったら、みどりのような薬剤師がいなかったら、家族はバラバラになっていたかもしれません。

それでは太一の治療が継続されても誰も幸せになりませんよね?

現代の医療は各領域のエキスパートが機能することで成立しているのです。

それは薬剤師の世界でも同じこと。

もし江林のようながん薬物療法のエキスパートがいなかったら、みどりは樹里の悩みを受け取り切れなかったに違いありません。


・・・この記事は薬学生や若手の薬剤師も読んでいると思いますので、少し念を押しておこうと思います。

私は、病院薬剤師の中には、「チーム医療」や「専門・認定薬剤師」を誤解している方が少なからずいる、と感じています。

いや、薬剤師だけじゃなく医師や看護師も、ですね。

今やどこの病院でも「感染制御チーム(ICT)」「栄養サポートチーム(NST)」「緩和ケアチーム」「褥瘡管理チーム」などの専門家集団がいるのが常識となっています。

しかし、それはあくまで「マクロ」の管理を担っているだけ。

もちろん、特殊要因があれば「ミクロ」の症例に関与することもありますが、全てをきめ細かく管理することは不可能です。

にもかかわらず、「これは感染の事案だからICT」「栄養の事案だからNST」とばかりに、何でもかんでも専門家集団に丸投げするのは「健全な連携」とは言えません(そんなことでは受け手も燃え尽きてしまいます)。

20200419アンサングシンデレラの舞台裏Rp.13

よって、個々の薬剤師も(たとえ高度な知識やスキルはなくても)チーム医療の一員であることを忘れてはいけません。

「落ち込まずに、樹里さんと接するの怖がらないでね」

臨床心理士・成田がみどりに掛けたこの言葉の意味、わかりましたよね?

「専門外」だからといって、「蚊帳の外」でいていい訳ではないのです。


今回はここまで。

次回(Rp.14)では抗がん剤治療・終末期医療にみどりが立ち向かいます。



Rp.14 逃げちゃダメだ~「正解」なき闘いに飛び込む覚悟~

(あらすじ)
太一の抗がん剤治療は順調にクールを重ね、一定の効果が認められていたが、4クール目より食欲不振・腹水貯留が顕著となる。やつれた太一の姿に動揺を隠せないみどり。「治療継続か中止か」。正解の見えない闘いに誰もが苦悩していた・・・。

Rp.14はがん終末期に向かう患者への関わり方を問う内容となっています。

結論から言えば、「正解」はありません。

※2003年放映のドラマ「白い巨塔特別版~はじめての告知~」でも、柳原(伊藤英明)に相談された里見(江口洋介)が同じ回答をしています。

エバさんこと江林もまた、下記のような哲学的な発言をしています。

「どう死んでいくかって残りの日々をどう生きるかってことと同じでしょ」「彼らの気持ちにもっと近付くにはどうしたらいいんだろうなぁ・・・」

治療も4クール目に入り、衰えが目立ってきた太一の治療方針について、主治医・畑中と激論を交わす辺りにも、「正解のなさ」がうかがわれます。


そんな江林からみどりは思わぬ指摘を受けます。

「柴咲さん(太一)の姿見て動揺したよね?」

思い出してください。

みどりは以前、臨床心理士・成田からも同様の指摘を受けていますよね?

「落ち込まずに、樹里さんと接するの怖がらないでね」

患者は医療従事者の些細な動揺も感じ取ってしまうからです。

患者の「本当の苦悩」なんて、所詮理解し得ないのかもしれません。

しかし、もしがそれが真実でも、医療者は逃げてはダメなのです。


話の途中ですが、「舞台裏」のコーナーです。

今回のテーマは(青臭いかもしれませんが)「絆」です。

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もう四半世紀も前の話です。

私は病棟薬剤師としてがん患者を担当するに当たり、心に決めていた三ヵ条のルールがありました。

1.患者から決して逃げないこと
2.自分の心を偽らないこと
3.できることを精一杯努力すること

1は患者によっては絶望的な告知を受けている方もいますし、見るからに痛ましい状態の方もいますが、そんな時、「自分が寄り添わないで誰が寄り添うのだ」と自戒して逃げないことを心掛けました。

2は言い換えれば、患者と共に笑い、泣き、時には怒り、自分の心を飾らないように努めました。

3は・・・いや、正直な話、できることしかできないのです。


そして、自分自身もがん患者となる日が訪れました。

メインブログにはその際の心情が生々しく綴られています。

落ち込んでる暇はない
 帰宅後、人間ドックの結果を妻に報告。私の話を気丈に聞いてはいたが、夜中はずっとすすり泣いていた。子どももまだ小さい。一家の大黒柱がまだ倒れる訳にはいかない。
 
恥ずかしくは死ねない
 前の病院では、多くの子宮がん・卵巣がんの患者さんを担当し、その壮絶な闘病生活を目の当たりにしてきた。もちろんその中には亡くなった方もいるが、皆一緒に病気と闘ってきた戦友たちだ。もし今回、仮に悪い結果だったとしても、彼女たちに恥ずかしい姿は見せられない。でなければ、私は彼女たちに嘘をついていたことになる。

これ以降、私は混乱を脱し、落ち着きを取り戻すことができました。

そう、最愛の妻、そして患者さんとの「絆」が私を救ってくれたのです。

「正解」がないと言いましたが、「治らない」患者を救えるのは、まさにこの「絆」ではないか、というのが現在もがん闘病中の私の「答え」です。


さて、誤嚥性肺炎のため抗がん剤治療が中止となった太一を目の当たりにして、みどりは瀬野にこんな問いを浴びせます。

「私には患者さんの死への覚悟が足りないと思ってますか?」

これに対し瀬野はこう答えます。

「実際に経験しなければわからないことが山ほどある、自分の感情さえも」

「だからすべての過程を知ることが大事なんだよ」

先述した江林の「・・・あぁ」という発言の真意がまさにこれです。

頭では理解しているつもりの「薬剤師としての覚悟」。

しかし、それは医療の最前線で機能する「覚悟」でしょうか?


医療用麻薬の使用が開始された太一は、主治医にDNRを宣言します。

DN(A)Rとは
 do not resuscitation orderの略。患者本人または患者の利益にかかわる代理者の意思決定をうけて心肺蘇生法を行わないこと。ただし患者ないし代理者へのinformed consentと社会的な患者の医療拒否権の保障が前提となる。
※日本救急医学会ホームページより引用

動揺する和也でしたが、穏やかな表情の太一を見て何も言えませんでした。

そして、最後の親子水入らずのひと時・・・。


ちょうどその頃、みどりは自分の無力さを痛感していました。

「先輩たちの肩越しに起きている出来事を見ていることで精一杯だった」


そして訪れたお別れの時・・・。

「もっと何かできたんじゃないかって、悲しいし悔しい」

そう言って涙を流すみどりに、江林はこう伝えます。

「ずっと考え続けるしかないんだ、患者さんのために何ができるか」

「その覚悟を忘れないで」

薬剤師としてできることを精一杯考える「覚悟」。

江林がみどりに教えたかったことでした。

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太一が死亡退院した数日後、樹里から届いた感謝の手紙を読んだみどり。

最後の最後まで葵さんが私たちのそばにいてくれたこと、私は忘れません。

その言葉に、みどりはどんな決意を胸に抱いたのでしょうか?


第4話の感想

薬剤師は本当に「医者の奴隷」なのでしょうか?

#4 「薬剤師が患者を救う事だってできる」のあらすじ
 葵みどり(石原さとみ)と小野塚綾(成田凌)が中華料理屋『娘娘亭』で食事をしていると、店の扉を開けて入ってくる辰川樹里(久保田紗友)。父であり店主の辰川秀三(迫田孝也)が「おかえり」と言っても、無視して奥の部屋に入っていく。みどりは顔色が悪かった樹里を心配するも、父である秀三は「年頃の娘ってのは困っちゃうよね」とあっけらかんとした様子。しかし後日、樹里は意識を失い、萬津総合病院へと搬送される。駆けつけた秀三は医師から樹里が摂食障害だと告げられる。樹里の環境変化を気にかけるみどりに、秀三は樹里の祖父・辰川太一(伊武雅刀)が、末期の胃がんで萬津総合病院に入院していることを教えた。
 一方、車の事故によるむち打ちで萬津総合病院に入院している羽倉龍一(菅原大吉)に薬剤部一同は騒然とする。薬剤部のムードメーカー・羽倉龍之介(井之脇海)の父親だったからだ。付き添いできている龍之介の母・羽倉志帆(宮田早苗)は、夫・龍一の入院をきっかけに、息子との久しぶりの再会を喜ぶが、龍之介はどこか浮かない表情。志帆は、龍一の入院先を萬津総合病院にしたことを、龍之介に事前に伝えていなかった。「こうでもしないとお互い会ってくれないでしょ?」と言う志帆に、薬剤部の中ではいつも明るい龍之介が「余計なことするなって!」と声を荒らげる。

今回は、原作の「がん患者と家族」編(第12話「霧の中」・第13話「病なき病」・第14話「それぞれの闘い」・第15話「最期の砦」)とハク親子に関するオリジナルストーリーが同時進行します。

第4話は
✩知られざる親子の確執
✩病院薬剤師が果たすべき責任は
✩理事の椅子には誰が座る

の三本立てでお届けします
・・・公式Twitterより


❶病院薬剤師の責任とは?

チーム医療が当たり前の時代にあって、ハクの父親のような価値観の医師は減ってきたとはいえ、依然根強く残っています。

ならば、薬剤師は医師の言いなり、「奴隷」でいいのでしょうか?

今回最も印象深かったみどりのセリフがこれ。

薬剤師はみんな必死に薬の勉強をして、知識とか経験とかそういうの全部総動員して、患者さんのためにできる限りのことをしているよね?

ハクだってそうでしょ?

医者になれなかった時、薬剤師を目指したのは、違う形でも患者さんのために何かできることをしたいって考えたからじゃないの?

だとしたら、羽倉龍一さんていう患者さんのために薬剤師として最後まで責任持ちなよ。

冒頭でハクが医師の言いなりで抗菌剤の過量投与を通して副作用を発現させてしまうシーンがありましたが、その際もみどりはきっちりハクに責任を取らせてましたね(「今度はちきんと頼むよ」という医師にはムカッ!)。

「(患者への謝罪には)ハクが行きな。このハンコ、ハクのでしょ?医者の処方通りだったなんて言い訳通用しない。ハクが責任持つべきでしょ?」

賞賛されずとも「最後の砦」。

それが薬剤師の責任であり矜持なのです。


❷歪(いびつ)な睡眠薬への認識

統計を見る限り、睡眠薬に対する日本人の認識は極めて歪(いびつ)です。

不眠を生じた場合、日本は先進諸国の中でも断トツにアルコール(寝酒)に頼る率が高く、医療機関を受診する人は10人に1人もいません。

恐らく国民の中に「睡眠薬は怖い」というイメージが定着しているからだと思いますが、そのくせ、「乱用」の問題は後を絶ちません。

歪としか言いようがありません。

理由はただ一つ、「薬の適正使用」に関する知識がないからです。

市販薬(ネムレル※実在しない薬です)に頼ろうとした樹里にしても、自己判断で多剤服用(トリアゾラム+エチゾラム+ニトラゼパム)し健忘症に陥った龍一にしても、薬剤師が関わっていれば危険は回避できた筈なのです。

詳しくは下記のブログで解説していますので、よければご覧ください。


❸気になるシーン!?

次回以降への布石なのかもしれませんが、気になるシーンが幾つかありましたので解説しておこうと思います(ん~、細かい描写)。

もう一息、小野塚
前回に続き店内で倒れた樹里を救急に通報した小野塚。「今度は落ち着いてできたのか?」と問う瀬野に「少しは・・・」。「(以前参加を誘った)勉強会は?」の問いには「そんな暇ありませんよ」との答え。もう一息だね。

とことんKY、相原
「でも、そんな親(脳神経外科の権威)に育てられて、何で羽倉さん、医者にならなかったんですか?」なんて聞き辛い質問をするのがくるみちゃんの役柄。これに追随して皆からグサグサ追及されるハクもお気の毒。

媚びる、販田
関東薬事連盟の理事を狙う販田は、同監事である羽倉の父親に接近します。媚びる姿に眉をひそめた方もいたかもしれませんが、薬剤部長としては理事に就任することで発言力や他施設との連携を強め、深刻な薬剤師不足を少しでも解消しようと考えたのだと思います。わかってあげてください。

出番なし、荒神
DI室で論文を夜通し探し続けるみどりとハク。今回荒神大先生は休暇中だったのでしょうか?最終的にお目当ての論文は瀬野のおかげで見つかりましたが、荒神先生がいれば一発だった筈です。ねぇ、そうでしょ?荒神はん。

早いんですね、刈谷
たった一人で抗がん剤調製をする刈谷。あれほど忙しい調剤室と掛け持ちできるということは、余程抗がん剤調製件数の少ない病院なのか?疑問です。

暗躍する、七尾
太一(樹里の祖父)のカルテを眺め、刈谷より抗がん剤の種類を聞き出す(※カルテ見りゃわかるやろ)七尾の怪しい行動。どうやら治験の対象事案を探していたようですね。治験にダークなイメージがつくから止めてケレ。

あだ名変更、羽倉
今回の1件であだ名が「ハク」から「龍ちゃん」に変わってしまった羽倉。ま、原作ともキャラが違うんだし、「龍ちゃん」でええんちゃう?


第5話の感想

生と死。「答えのない問題」を考え続ける覚悟がありますか?

#5 「第二の患者」のあらすじ
 萬津総合病院に入院中の『娘娘亭』店主、辰川秀三(迫田孝也)の父、太一(伊武雅刀)の容態が急変。幸い安定したものの、葵みどり(石原さとみ)は辰川家を心配していた。太一は末期がんだが、秀三は本人に告知をしていない。そのことで、祖父に嘘をついていると悩む秀三の娘、樹里(久保田紗友)は摂食障害になってしまっていた。樹里に助けを求められたみどりは、秀三と話に行く。
 みどりの説得で、秀三は太一に告知して抗がん剤治療を受けてもらうことにしたと樹里に告げる。しかし、医師から告知を受け、抗がん剤治療を行わなければ余命3カ月と言われた太一は治療の必要はないと思っていると言う。秀三と樹里は反対するが、太一は入院せずに家族と過ごしたいらしい。みどりは抗がん剤治療には休薬期間があるので、自宅で過ごすことも出来ると提案した。
 太一は家族との話し合いで治療を決めた。樹里は太一と一緒に、これからやりたいことのリストを作る。そんな中、みどりは相原くるみ(西野七瀬)とケモ室(抗がん剤調剤室)へ。くるみはがん薬物療法認定薬剤師の資格を持つ刈谷奈緒子(桜井ユキ)の仕事に興味を示す。調剤室に戻ると、くるみはみどりと一緒に太一を看たいと販田聡子(真矢ミキ)に申し出た。くるみにはまだ早いと不安視する販田だが、みどりは了承する。命の現場で薬剤師がみた現実は・・・。

「がん患者と家族」編も後半に入ります。

まだがん患者と接したことのない若手の薬剤師の方はくるみを、まさに現在接している方はみどりを、自分と重ねて視聴することをお勧めします。

第5話は
✩余命3ヶ月の患者の為にできること
✩明らかになる過去
✩野球大会で奇跡が起きる

の三本立てでお届けします
・・・公式Twitterより


❶「第二の患者」の治し方

大切な家族が不治の病となって悩まない人、苦しまない人などいません。

いわゆる「第二の患者」です。

家族にとって貴重な時間であるにもかかわらず、各人の思いで意思決定をすることで意見の対立が生まれ、バラバラになってしまうこともあります。

辰川一家も最初はそうでした。

秀三(太一の息子)
母親の辛い闘病生活を見て、太一への未告知を決める。

樹里(太一の孫娘)
嘘をついて太一に辛い想いをさせているのが可哀想。

太一(余命3ヶ月)
費用も掛かるため、抗がん剤治療に消極的。

しかし、それは情報不足による「思い込み」のためかもしれません。

樹里「すごく怖い。わからないことが沢山あって、家族がどんどんバラバラになっちゃう気がして。助けて、葵さん」

こんな訴えは樹里がまだ子どもだから言えたこと、そしてみどりのように心に寄り添ってくれる相手がいたからかもしれません。

もしそうでなければ、ひたすら感情を押し殺し、家族にとって不幸な道を突っ走ってしまうこともあるでしょう。

それでは本人も家族も浮かばれませんよね?

みどりは家族での対話を勧め、皆が納得する方向へと導きました。

そして、太一の「やりたいことリスト」の実現に精一杯協力しました。

太一も家族も幸せなひと時を送れたことと思います。

薬剤師にもできる、「答えのない問題」への一つの解答だったのではないでしょうか?


❷くるみへの「荒療治」

初学者のくるみが「やらかす」描写も印象的でした。

「もしかしたら治るかもしれないですね」(おいおい)
「助けるために全力を尽くしたいなって」(ハハハ・・・)
「オプジーボで5年生存した患者もいるんです」(胃がんは対象外やろ)
「私は諦めたくありません」(完治だけが薬剤師の役割ではない)

刈谷が行っているがん薬物療法認定薬剤師の仕事に興味を示すくるみ。

※でも・・・勉強はしたくないんだ(笑)。

「太一を担当したい」というくるみにみどりは同意しますが、これは明らかに失敗することを見越して学ばせようという魂胆。

最終的にくるみはショックのあまり号泣するハメになる訳ですが、みどりは昔の自分と重ね「荒療治」に踏み切った辺りは「らしい」ですね。

太一「正直言うとね・・・もうしんどい。もういいよね?」

家族にすら言わない弱音を、みどりには吐く太一。

※形見の野球のボールのプレゼント、そりゃ泣けますよね?妹を亡くしたみどりの過去と薬剤師を目指すきっかけも今回明らかとなりました。

くるみならば、どう答えたでしょうか?(愚問?)


❸副部長の「対立」

ともに副部長である瀬野と七尾は何か因縁があるようですね。

太一の主治医に胃がんの治験薬(M325)を提案した七尾。

しかし、みどりの発言がもとで治験参加が見送られたことを七尾は根に持つようになり、みどりとその師匠である瀬野にも嫌味を言います。

「後悔しなければいいけどね」(大人が言うことじゃない)
「治験薬を使っていれば状況は変わっていた」(とは限らんやろ)

二人の会話を聞く限り、瀬野の母親は治験薬を試みたものの救命できなかった、そしてそれに関して瀬野は七尾を殴った過去があるようですね。

とことん「対物派」(薬こそ全て)の七尾に、「対人派」(患者に寄り添うことも大事)の瀬野。

この「火種」は今後どのような決着を見るのでしょうか?


第3巻はここまで。

これ以降は、このブログ共々「第4巻」へと移ります。

病院薬剤師って素晴らしい!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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