内村航平引退イベント——「キング」が日本体操界に残した贈り物

参加選手らと記念撮影する内村航平

体操界のキング・内村航平の引退試合イベント「KOHEI UCHIMURA THE FINAL」を3月12日に観戦した。

怪我だらけの体に鞭を打って個人総合の6種目すべてをこなし、最後の鉄棒ではH難度のブレトシュナイダーなどの技を次々と決めた内村の演技に目を奪われた。それ以上に、会場を埋め尽くした観客の熱気と、映像や照明を駆使した体操競技では異例の演出にも驚いた。

内村自らがこれから演技する種目の見どころを紹介し、演技後のポイントを大型ビジョンの写真付きで振り返るなど、随所に体操初心者への配慮がうかがえた。跳馬では助走路と跳馬だけをライトアップするなど、普段の体操競技では見られない演出も施された。

休憩中の会場をパノラマ撮影している途中で、プログラム再開の時間となり会場が暗転。ゆかなどがライトアップされる

内村に加え、橋本大輝ら東京五輪メンバーや、昨年6月に現役引退していた白井健三らを含む9選手も演技を披露。白井は高難度の「シライ」連発で内村の晴れ舞台に花を添えた。

フィギュアスケートでは引退後の選手も「アイスショー」の出演によりスケートで収入を得る道が開かれているが、体操にはそのような舞台がない。内村は個人スポンサーはついていたものの、多くの選手や、日本体操協会の財政基盤は脆弱だ。

自身の引退試合という実験台で「ショーとしての体操」の新しい可能性を示した今回のイベントは、内村が日本体操界に残した大きな贈り物のように感じた。

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