国産木材を使うということ
柳宗悦さんの「工藝の道」という本が好きで、たまに開いて斜め読みしています。著者は有名な工芸家で、もともとは宗教学者なので文章は説教っぽいところがありますが、とても興味深いことを言っていますので、何回かに分けてご紹介させていただきます。🌲🇯🇵
工藝とは多人数が協力してでつくられるものだそうです。以下、本文そのままを抜粋。
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よき作を、ゆめ一人の作と思ってはならぬ。そこには真に協力の世界が見える。ある者は形を、ある者は絵附を、あるものは色を、ある者は仕上げをと幾つかに分かれて仕事を負うた。優れたほとんどすべての作は一人の作ではなく合作である。あの力もなき民衆がすべてを一人で担わねばならないなら、何の実をか結び得ようや。よき作の背後にはよき結合が結合が見える。まして貧しき工人である。相寄り相助けずば、彼らの生活に安定はない。安定を保障するものは相愛である、一致である。彼らは自ら協団の生活を結ぶ。それは共通の目的を支持する相互補助の生活である。正しき工藝はかかる社会の産物であった。
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この本は、日本の工芸について、それも昭和2年に書かれたものですが、現代の国産木材を取り巻く環境についても言えるのではないでしょうか?
短期的なコストだけ考えると、輸入材のほうがよいのかもしれませんが、その地域での雇用や、その材の安全性や品質、緊急時の供給、さらには最終的な消費者のメリット(それは精神的な満足感を含めて)を考えると、国産材を使うことは長期的に考えて理にかなっているのではないでしょうか。
私は家具の販売を営んでいますが、林業や製材に直接従事するものではありません。現場ではもっと深刻な問題もあるのでしょうが、90年前のこの記述に何かヒントがあるような気がしました。
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