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インディアンは「トーテムポール」を朽ちていくままにします。

トーテムポールとは、北米インディアン(彼らは自分たちのことを「First Nations People]と呼んでいます)が作る柱状の木造彫刻です。

トーテムポールは宗教的な意味合いはなく、もともとは家の柱として使われていたものが、その後、その家のシンボルの意味合いや家族代々のストーリーを物語るものとしての象徴になっていったようです。

材料は、北米の沿岸に分布しているベイスギです。比較的丈夫な木で、水にも強いようですが、さすがに雨の多い太平洋岸の屋外でメンテナンスをしなければ長持ちはしません。
でも、彼らは朽ちていっても、それを補修ようとしなかったそうです。
建てることに意味があるのであって、自然のままに朽ちていき、やがては土に返るものだからと考えたからです。

今あるトーテムポールは、すべて後からつくった観光用のものです。

世界には、いろんな文化があり、「樹木」に対する考え方も様々あるんでしょうね。面白い話だと思います。

トーテムポール

写真家の星野道夫さんは、トーテムポールについての紀行文を書いています。(以下原文より抜粋です)

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森の奥に隠れたあるトーテムポールの前に来て、ぼくは立ち尽くしてしまった。そのてっぺんからトウヒの大木が立ち、トーテムポールを伝って地面まで根が伸びている。 かつてハイダ族はトーテムポールの上をくり抜いて死んだ人間を葬っていた。遠い昔、その上に落ちた幸運なトウヒの種子が、人の身体の栄養を吸いながら根づき、長い歳月の中で成長していったのだろう。
 さらに驚いたのは、トーテムポールの近くの草の中に、生れてまもないオジロジカの子どもを見つけたときだ。しばらく離れて見ていると、森の中から母ジカが現れ、トーテムポールの間を動きながら、ゆっくりと草を食べている。
 それは人間がいなくなり、自然がすこしづつその場所を取り戻してゆく風景だった。悲しいというのではない、不思議な気持ちだった。”ああ、そうなのか”というひれ伏すような思いだった。いつの日かトーテムポールも森の中に消えてゆく。人間がもう一度、神話の力を取り返すことは不可能なのだろうか、ふとそんな気がしてならなかった。

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