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「喫煙が感染予防になる」の報道に狂喜したスモーカーたちの認知バイアス

新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるいだした当時、ヤフーニュースに「喫煙が感性予防になる!?」的なニュースが出ました。
朝起きて一服、飯食って一服、クソして一服、なんもなくても一服する「スモーキン’ブギ」のような喫煙習慣を嗜む私ような世のスモーカーたちは狂喜したものです(このニュース記事を探したのですが見つかりませんでした)。

昨今の禁煙ファシズムのせいで肩身の狭い思いをさせられた者としては、一時の精神的勝利に酔いしれました。
正直、「本当か?」と眉唾でしたが、人は信じたいものを信じるもの。「感染予防になるのだから、喫煙はいいことだ」となれば、わずかにあった喫煙への罪悪感も消えていきます。

ところが、意外なところでこの「幻想」が打ち砕かれるものです。
それは、私が情報文化研究所『情報を正しく選択するための認知バイアス事典 行動経済学・統計学・情報学』を編集していたときのことでした。

次のような原稿を読んで、自分が認知バイアスの罠に陥っていることをまざまざと実感させられたわけです。
該当箇所を一部抜粋、本記事用に改編して掲載します。


喫煙は新型コロナウイルス感染症を予防するのか

統計学の分析におけるバイアスは、疾病の要因に関する疫学調査で発生しやすい。その一例として、新型コロナウイルス感染症の感染が拡大を始めた当初に起きた現象について紹介しよう。
2020年、新型コロナウイルスに感染した入院患者について調査が行われていた。フランスの調査では、新型コロナウイルス感染症の入院患者の中に喫煙者の割合が少なかったことから、喫煙が感染予防に有効ではないかという仮説が立てられた。こうした調査結果は欧米のメディア等でも取り上げられた。
一般的に喫煙は健康に悪影響があるといわれている。そのため、感染予防に喫煙が有効かもしれないという仮説には違和感を覚える。このような調査結果が出た原因の1つとして、バークソン・バイアスと呼ばれる直感に反する現象が挙げられる。

なぜバークソン・バイアスが起こるのか?

バークソン・バイアスとは、「喫煙」と「感染症の感染」という2つの事象の関係を調べるとき、事象間の傾向を誤って判断してしまう状態を指す。
新型コロナウイルス感染症と喫煙者に関する現象について注意しなければならないのは、調査が行われた時期が感染拡大の初期であったという点にある。
当時、検査は医療従事者に対して重点的に行われた。当然、医療従事者ではない人の中で感染の疑いのある人も検査を受けている。つまり、検査対象は「医療従事者である」、もしくは「医療従事者でなく感染の疑いがある」のどちらかに該当する。このとき、医療従事者の多くは非喫煙者である。そのため、医療従事者の入院患者は非喫煙者の割合が高くなる。

したがって、入院患者を対象に喫煙と感染の関係を調査すれば非喫煙者の感染者が多くなることは明らかで、結果として非喫煙者が感染をしやすいという傾向があると誤って判断したのだ。
この調査の問題は入院患者だけが調査の対象になっているため、それ以外の人たちに対する喫煙と感染のしやすさについては何もわからないことだ。バークソン・バイアスはこうした観測できていないデータが存在するとき起こりうる。


というわけで、喫煙の効能が否定されたと思うでしょ?
一方で、いろいろ探したらこんなニュースも出ていました。

今後は、この記事の幻想にすがって、タバコを吸うことになりそうです。

(いしぐろ)

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