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痺れるパンチライン3選

フォレスト出版編集部の寺崎です。

今日は、いまいちネタがないので、これまで自分が担当した書籍のなかから「痺れるパンチライン」を拾ってご紹介したいと思います。

人生にはときに「方便」「嘘」も必要

以前にもnoteで紹介したことがある気がしますが・・・これかな。

ときには「方便(ほうべん)」を用いる」
=真理が人を傷つけることがあるならば
 ときには「たくみな方便」も人生には必要。

いきなりなんだ!?と思われるでしょうから、この言葉にまつわるエピソードをご紹介します。

 私は、かなりおくれて大学院に通っていましたが、そのころ家族ぐるみでつき合っていた、大手化学会社の開発課の課長をしていた友人がいました。
 優秀な科学者でもあり、家族は奥さんと娘さんがひとり。あるとき、彼から娘さんの高校進学について相談を受けました。聞けば、娘さんの志望校は入学がむずかしいことで知られていましたが、私の知人が役員をしていた関係で、その私立高校を紹介することができました。とはいえ、もともと成績のよい娘さんでしたから、入学するのに何も問題はありませんでした。
 その後、入学して最初の学期を終え、明日から夏休みという日、娘さんは成績表を持って帰ってきました。そして、さっそく彼にみせたところ、彼はひと目みて、「こんなことじゃいかんね。もっと勉強しなさい」といってしまったそうです。
 娘さんはしょんぼりして部屋にもどりました。両親はそれを気にもとめず、夫婦で近所に買い物に出かけました。ところが帰宅してみると、娘さんはドアも窓も固く閉め、ガス栓を全開にしてベッドの上で亡くなっていたのです。
 たったひとりの娘に死なれて、まず母親は気が狂わんばかりの毎日で、続いて妻も自殺するのではないかと心配しながら、彼は二重も三重もの苦しみを背負って、ともかく会社の勤務を続けていました。
 会社の帰り、ときおり私を電話で誘い、駅前の飲み屋で語り合いました。そうしたある日、彼から「人は死んだら、どうなるのかな」と聞かれたことがありました。
 私はそのころ、卒業論文のため難解な仏典などに取り組んでいたときでもあり、相手は優秀な科学者でもあるということで、多少構えたところもあったのでしょう、不用意に「色即是空(しきそくぜくう)だよ」といってしまいました。
 すると、彼は「何だ、それは」と急に目をけわしくして私を見据えました。私はあわてて、「色とは……、空とは……、無常とは……」などと、もっともらしいことを並べましたが、彼はそれを聞こうともせず、
「駄目じゃないか、そんな話じゃ。われわれ夫婦はいま、死んだ娘が、いまごろは三途(さんず)の川を渡って、川の向こうの広い原っぱあたりで花でも摘みながら、ときにはこっちを向いて、手を振ってくれたりして、極楽に向かって、とぼとぼと歩いているのだろうと、そう思わなければ一日だって生きていられないのだ」といって、絶句してしまいました。
 やがて、また夏がきて、夫婦にとってあらためて悲しみが増す一周忌。ともかく、夫婦は、ほとんど二人きりで法事をすませ、親しい人たちに礼状を書きました。
「永い間、ほんとうにお世話になりました」と。それが何を意味したのか、受けとった人たちが気づいたときには、もう遅かった。この夫婦は、娘の部屋で娘と同じようにガス栓を一杯に開けて、娘を追っていたのです。
 私のあのことばがすべてではないでしょうが、少なくとも、この夫婦に生きる力を与え、あるいはもうすこし「たくみな方便」で、死後の世界などを話すことができていたなら、この二人は、もっと違った道を選んだのではないかと、私の胸はいまでも悔恨にうずくのです。

荒了寛『死ぬまで穏やかに過ごす こころの習慣』より

この話は天台宗大僧正の故・荒了寛さんが書かれた『死ぬまで穏やかに過ごす こころの習慣』からのものです。

「色即是空」とは、般若心経に出てくる言葉で、「この世にある一切の物質的なものは、すべて空(くう)である」という意味です。

「何事にも執着するなかれ」という仏教の教えなわけですが、上記エピソードに出てくる娘に先立たれた夫婦にとっては残酷な教えです。

そして、娘を追って自ら死を選んでしまいます。

色即是空はたしかに真理なのかもしれない。けれども、真理が人を傷つけることがあるならば、ときには「たくみな方便」も人生には必要だ・・・と説かれています。

みなさん、多かれ少なかれ、心当たりがあるのではないでしょうか。

これまた、浪曲師・広沢寅造(二代目)の十八番として有名な「清水次郎長伝」で清水次郎長が森の石松に説く「嘘も方便、ところによると宝となる」というパンチラインを思い起こします(誰も知らないか……)。

結局「誰とやるか」がすべて

もうひとつ、痺れるパンチラインをご紹介します。

成功を目論むならば、アイデアよりも、ファイナンスよりも、「誰とやるか」がはるかに重要であることは、人生経験を積めば積むほど痛感するものだ。

これは小野壮彦さんが書かれた『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術』のまえがきに含まれる一文です。

これ、おそらく40代以降のビジネスパーソンなら、だれもが「たしかに!」と思うのではないでしょうか。

 本書は、「人を選ぶ技術」というコンセプトのもと、執筆された。
 成功を目論むならば、アイデアよりも、ファイナンスよりも、「誰とやるか」がはるかに重要であることは、人生経験を積めば積むほど痛感するものだ。
 しかし、その実行はとても難しく、ノウハウは共有されていない。
 本書はその問題意識を出発点とする。
 本書で提示するフレームワークを理解し、技術を身につけることで、誰もが構造で人物を「見抜き」、創造性をもって起用を「見立てる」ことができるようになると、確信している。
 本書が、ビジネスの現場はもちろん、プライベートにおいても、さまざまなシーンでの人選び・仲間集めの現場で活用されることを願っている。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を選ぶ技術』

これが本書のまえがき全文です。

おかげさまで発売たちまち6刷、現在2万5000部で売れ行き好調です。今週、東京駅の丸善丸の内本店に行ったら「ビジネス書週間ベストセラー8位」になってました(うれP!)。お買い上げいただいた読者のみなさま、ありがとうございます<(_ _)>

台湾有事に備える1冊

では、最後のパンチライン。

日本に必要なのは、憲法解釈の変更でも、集団的自衛権の行使容認でもありません。敗戦によって失った主権を完全に回復することなのです。

これは苫米地英人博士が書かれた『日本人だけが知らない戦争論』からのパンチライン。

台湾有事が現実的レベルになってきた今、読み返すべき1冊としてぜひともおすすめします。

一説によると、中国が台湾を侵攻した際には日本の自衛隊が参戦せざるをえない状況が刻々と進行しているそうです。

若干時代の古さを感じさせる箇所もあるかと思いますが、「戦争とは何か?」「誰が何の目的で戦争を起こすのか?」の疑問に答えてくれます。


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