見出し画像

自己肯定感の高い子ども、低い子どもの感情表現

あなたは今の感情を正確に言葉にできますか?
感情の種類を語る際によく引用されるのが以下のプルチックの感情の輪です。8つの基本感情とその組み合わせで生まれる二次感情などで構成されており、強弱などのグラデーションもあります。

"Plutchiks wheel of emotions translated to Japanese" by Doomdorm64 is licensed underCC BY-SA 4.0

自分の今の感情がプルチックの感情の輪のどこに位置づけられるかを考えてみてください。
たとえば、自分の中では「怒り」だと感じていた感情が、実は「憎悪」を含んでいたり、あるいは「嫉妬」に近いものかもしれません。
誰かに対する「信頼」感も、客観的に見れば「恐れ」を含んだ「服従」という状態かもしれません。
このように、より自分の感情を正確にとらえようとすると、何が本当の自分の気持ちなのかわからなくなってきませんか。
自分の感情を表すための語彙力が少ない子どもだったら、もっと難しいと感じるはずです。だから子どもは、自分の中にモヤモヤを溜め込んで時に爆発させてしまうのです。
しかし、自己肯定感の高い子どもは、自分の感情を適切に表現できるといいます。どういうことでしょうか?
ばなな先生『12歳までの自己肯定感の育て方で、その後の人生が決まる』から、関連する箇所を一部抜粋・改編してお届けします。


自己肯定感の高い子の感情表現

 クラスの子どもたちに「どんなタイプの子が苦手か?」と尋ねると、決まって「怒ってばかりの子」「気分屋さん」という答えが返ってきます。そうした子と比較して、自己肯定感の高い子どもは感情が安定しています。
 もちろん、感情が安定しているというのは、感情表現をしないわけではありません。むしろ、感情をとっても上手かつ効果的に表現します。
 D君は日頃から、自分のことを大切にしている子でした。みんなからも慕われ、リーダーもやっています。そんなD君たちが6年生になってバスケットボールの学校対抗の大会に出場することになりました。選抜ではなく、クラス全員が試合に参加します。
 クラスで話し合った結果、D君がキャプテンになりました。
 バスケットが上手なので、厳しいことをみんなに言うのかなと思ってると、チームがミスしても怒りませんでした。
 ところが、練習試合のことでした。ふとしたことでD君自身がミスして負けてしまいました。D君は涙を流して悔しがり、さらには一人ひとりに謝りはじめました。
 びっくりしたのは、まわりの子どもたちでした。
 みんながD君を囲み「もっとわたしたち、練習するね」と口々に言いました。それ以来、チームはそれまで以上に一丸となって練習に取り組み、本番では全勝で優勝しました。
 魅力的な子どもは、ここぞというときに感情を表現するんだ、と感心しました。
「感情的になる」という言葉がありますが、自己肯定感の高い子どもは感情的にはならず、適切な場面で誠実に感情を表現するようです。 
 では、感情の果たす役割とは、どのようなものなのでしょうか。
 神経心理学者のアントニオ・ダマシオは「感情は意思決定を導く」と述べ、アドラー心理学で有名なアルフレッド・アドラーは「感情は目的達成のためのツール」と定義づけています。
 算数の計算が苦手な子が、はじめこそ平然としていますが、あるときを境に不安に感じるようになります。やがて、できないことへの焦りとなり、自分や周囲への「怒り」となります。 そこでようやく「やる」という意思決定が生まれ、「教えてもらう」「自分でやりきる」といった行動を選択するようになります。
 また、小さい頃に受けた差別への「怒り」から、その差別解消への道を目指し、活動家になったなど、感情が人生の起点となった例もたくさんあります。
 そう考えると、「怒り」という感情は必ずしもいけないものではなさそうです。

子どもは「本当はね… 」と言いたがっている

 大事なのは、子どもが小学生のうちに、自分の気持ちや感情を正直に、感情的にならずに正しく伝えられるようになることだとぼくは思っています。
 子どもと接していて、感情的な「怒りや」「悲しみ」の表現には、その奥に「わかってくれない」「わかってほしい」という本当の感情が隠れていることに気づきました。
 特に、小さい頃に親に抱いた「自分のことをわかってほしい」という欲求が根本にあるようです。
 実際、クラスの子どもたちが仲良くなっていくと、子どもたちは怒っている子に対して「本当はどうしたいの?」と聞くようになります。本当の感情があることに気づくようです。すると、すねるだけの子どもも「本当はね……」と話しだします。
 そう、この「本当は」という言葉を大切にしてほしいのです。
「本当は」という言葉の後に続けて話すと、その子はすがすがしい顔になります。同時に、まわりの子が理解を示してくれます。感情的なときはまったく響かないのに、真剣な顔になって話を聞き始めます。
 コミュニケーションの語源は、ラテン語の「communis」と言われています。共有する、分かち合うという意味です。人は他者と分かち合えたときに自己肯定感が上がるのです。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 いし ぐろ)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?