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なぜ好き好んで見てしまうのか?最近見た胸糞悪い映画ベスト3

人はなぜ胸糞悪い映画やドラマ、マンガを見てしまうのでしょうか。
中には絶賛され、評価されているものもあります。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」「ミリオンダラー・ベイビー」「セブン」……。
「胸糞悪いのに絶賛される」って、よく考えたら意味がわかりませんよね。
でも、私はなぜか胸糞悪い物語が嫌いじゃないんです。
善が負けて、悪が勝つような。
良心が徹底的に挫かるような。
その理由がなかなか言語化できません。
そういう不条理を見て、「何が夢、希望だよ。何が努力は報われるだよ。人生なんてそんな甘いもんじゃねえよ」という中二病的な達観に至っているのかもしれません。
あるいは、あまりにも不遇な、絶望的な人を見て哀れむことで、自分の中の善なる心を認識し、快感を覚えるのかもしれません。
まあ、いずれにしてもろくでもない、恥ずべき感情ですね。ある種の性癖みたいなものでしょうか。

でも、好きなものは好きなので、胸糞悪いものが好きな方に向けて、最近見た胸糞悪い映画ベスト3を勝手にまとめてみました。

第3位 アクト・オブ・キリング

60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者は軍ではなく、"プレマン"と呼ばれる民間のやくざ・民兵たちであり、驚くべきことに、いまも"国民的英雄"として楽しげに暮らしている。

胸糞度★★★☆☆ ラストの衝撃度★★★★☆

アマゾンプライムで見られるドキュメンタリー映画です。
カンボジアにおけるポル・ポトによる大虐殺は知っていましたが、そもそも、インドネシアで100万人規模の虐殺があったという史実自体、本作を見るまで知りませんでした。
カンボジアでは共産主義者が虐殺を主導しましたが、インドネシアでは逆に共産主義者や華僑が虐殺されていたのです。
この虐殺に関わったチンピラ(今では老人)が本作の主人公。今ではかわいい孫もいます。そして、当時の殺人の方法を嬉々として説明します。まったく罪悪感がなく、むしろ自分は正しいことをしたと本心から主張する唾棄すべき男。
本作では、こうしたチンピラどもに、当時の殺害時の行動を再現させます。殺しの演技(アクト・オブ・キリング)です。殺す役、殺される役などをさせます。そして主人公は、かつて自分がしたことを、被害者役として自分が受けるのですが……ある身体的異変に直面します。
感情が理性を超えて身体にまで影響を及ぼすラストは圧巻。こんなの、初めて見ました。
チンピラは自分のした非道の罪の重さに気づくのか、あるいは……。必見です。

第2位 母なる証明

静かな田舎町。トジュンは子どものような純粋無垢な心を持った青年。漢方薬店で働く母にとって、トジュンの存在は人生の全てであり、いつも悪友のジンテと遊んでいることで心配の絶えない毎日だった。そんなある日、女子高生が無惨に殺される事件が起き、容疑者としてトジュンが逮捕されてしまう。唯一の証拠はトジュンが持っていたゴルフボールが現場で発見されたこと。しかし事件解決を急ぐ警察は、強引な取り調べでトジュンの自白を引き出すことに成功する。息子の無実を確信する母だったが、刑事ばかりか弁護士までもが彼女の訴えに耳を貸そうとしない。そこでついに、自ら真犯人を探すことを決意し行動を開始する母だったが…。(C)2009 CJ ENTERTAINMENT INC. & BARUNSON CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED

胸糞度★★★★☆ 救いのなさ度★★★★★

こちらも、アマゾンプライムで見られる映画。以前はNetflixでも見れたはずです。監督は「パラサイト半地下の家族」のポン・ジュノ。私としてはこの作品こそがポン・ジュノの一番の傑作だと思っています。
主人公はあのウォンビン。頭の弱い青年の役をします。
殺人事件の容疑者となるのですが、息子を信じる母は無実を証明しようと奔走、奮闘します。
しかしこの母子愛は、意外な形で結末を迎えます。
本当に救いがなさすぎです。母の立場からしたら、事態を真正面から直視したら精神崩壊間違いなし。結局、そうした事態を「忘れること」「見なかったこと」「知らなかったこと」にすることが、母子が今後も生き続けるためには、唯一の方法なのかもしれません。

第1位 空白

ある日突然、まだ中学生の少女が死んでしまった。スーパーで万引きしようとしたところを店長に見つかり、追いかけられた末に車に轢かれたというのだ。娘のことなど無関心だった少女の父親は、せめて彼女の無実を証明しようと、店長を激しく追及するうちに、その姿も言動も恐るべきモンスターと化し、関係する人々全員を追い詰めていく。 『新聞記者』『MOTHER マザー』のスターサンズが、『ヒメアノ~ル』『愛しのアイリーン』などで、衝撃と才能を見せつけた監督・𠮷田恵輔とタッグを組み、現代の「罪」と「偽り」そして「赦し」を映し出す、この現代に生きるすべての人々の、誰の身にも起こりえる出来事に鋭く視線を向けた監督・𠮷田恵輔の「脚本」に俳優陣がケレン味なく体当たりした。©2021『空白』製作委員会

胸糞度★★★★☆ 寺島しのぶがキツイ度★

Netflixで見ることができます。
スーパーの店長の松坂桃李が万引少女を見つけて、追いかけます。しかし、その少女は逃走中に車に轢かれてしまいます。
そこから、少女の父親役である古田新太の暴走が始まるのですが、主要登場人物全員が不幸のどん底へ突っ走っていきます。
中でも強烈なのが、スーパーの店員役の寺島しのぶ。非常に明るく、前向きなキャラクター。一生懸命仕事をします。古田新太やマスコミに追い込まれる松坂桃李を積極的にサポートします。休日も海岸のゴミ掃除や生活困窮者のための炊き出しをしたりと、正義感と慈愛に満ちた、行動だけを見れば観音様のような人なのですが……。
この寺島しのぶが、一番胸糞悪いのです。
ともあれ、本当に自分を救ってくれるものは、まったく意識していなかった他者の何気ない一言であることが、ラストシーンで身にしみました。ということで胸糞度はMAXではなく、★4としています。

私は、救いもなければ胸糞も悪い代表格なマンガ「闇金ウシジマくん」も好きなんですよね。
たまに見せるウシジマくんの優しさにほっこりしたり、稀にある前向きなエンドに救われたり……。
私の場合、胸糞作品を見る動機づけになっているのは、その中にわずかにある人間の優しさだったり、希望だったりを見つけたいという思いなのかもしれません。

(編集部 いしぐろ)


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