地方自治体の脱炭素へ向けた取り組み
こんにちは。
一般社団法人フォレストック協会事務局の川西です。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国は様々な取組を行っていますが、この大きな目標を達成するには、地方自治体での取り組みも欠かせません。
今日は、地方自治体の脱炭素へ向けた取り組みについて見てみようと思います。
地域版J-クレジット
国が運営するJ―クレジット制度の地方公共団体版として、
「地域版J-クレジット制度」というものがあります。
地域版J-クレジット制度において認証された地域版J-クレジットは、国が認証したJ-クレジットと同様にJ-クレジット登録簿で管理されます。
現在運営中の地域版J-クレジット制度は、2つあります。
・新潟県版J-クレジット制度
・高知県版J-クレジット制度
新潟県版で6つ、高知県版で2つのプロジェクト登録があり、
すべて森林経営活動のプロジェクトです。
最後に登録されているのが2019年のプロジェクトで、その後は新潟県版も高知県版も新規登録がないようなので、活発に運用されているという状況ではないようです。
排出量取引制度(東京都)
国の排出量取引制度は、GX-ETSが2023年から試行期間として始まっており、2026年度から本格始動する予定です。
地方自治体では、国に先駆けて東京都と埼玉県で排出量取引制度が実施されています。
ここでは東京都の排出量取引制度について詳しく見ていこうと思います。
東京都 キャップ&トレード制度
東京都は、
2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減する
「2030年カーボンハーフ」
2050年までに都内の排出量を実質ゼロとする
「2050年ゼロエミッション東京」 を宣言しています。
排出量削減対策のひとつとして、大規模事業所向けの「総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)」を導入しています。
対象事業所に排出上限量(キャップ)を設定し、上限量以上に削減した事業所は、超過削減量を削減不足の事業所へ販売(トレード)することができます。
削減不足の事業所は排出量取引による削減量の調達により、削減義務を達成することができる仕組みです。
排出量取引制度の対象は、東京都内の事業所・施設で、エネルギー使用量が原油換算で年間1,500klの事業者で、対象事業所数は約1,200あります。
削減義務は、基準排出量(※)から25~27%の削減です。
(※)基準排出量は、事業者が選択した2002~2007年度までの連続する3年間排出量の平均値
5年間で1つの計画期間となっており、5年間の合計排出量を排出上限量以下にする必要があります。
削減義務履行期限は、計画期間終了後1年6か月後になります。
義務不履行の場合、義務不足量×1.3倍の削減命令が出されます。
また、命令違反の場合には、罰金(上限50万円)が科されます。
削減実績(排出量の大幅削減が継続)
第三計画期間(2020年~2024年)の3年度目である2022年度の対象事業所の排出量合計は1,118万トンで、基準排出量から32%の削減となりました。
削減義務率は25~27%なので、義務率以上の削減が実現しています。
削減の主な要因としては、高効率機器・LED照明等への更新、再生可能エネルギーの利用などがあげられます。
第三計画期間の義務履行の見通しとしては、約8割の事業所は「自らの削減対策等により義務達成の見込み」で、約2割が「自らの削減対策等では義務達成が困難である見込み」になっています。後者2割の事業者は、義務達成のためにクレジットを使用する必要が出てきます。
超過削減量クレジットの価格
今年、第三計画期間の5年目を迎え、自らの削減対策では義務達成できなさそうな事業者は、クレジット購入に向けた準備を検討・開始しています。
超過削減量クレジットの査定価格帯は、200円~1,100円/トン、
標準的な取引のロットは500~5,000トンです。
(出所:東京都環境局HP )
ただ、現時点で既に取引している事業者は、不足量が多い(千~万トンオーダー)が中心で、全体としての取引は活発化しておらず、多くの事業者は取引動向を静観している状況のようです。
今後、整理期間(2026年9月末)が近づいて、排出量の見通しが立ってくると、中小規模ロットの需要も出てくると思われます。
現時点では大規模ロットの取引中心であるために、価格が抑えられる一因になっていますが、今後中小ロットの需要が増えた場合には、価格に影響を及ぼす可能性があります。
今後の取引量や価格動向に注目していきたいと思います。
-------------------
最後までお読みいただきありがとうございました!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?