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色のない世界

朝、目が覚めたら、すべてが灰色だった。
ぼくの目がおかしくなったのかと思って、ゴシゴシっとこすってみたけど、灰色のまま何も変わらないので、ぼくはおかしくないのだと思う。たぶん。
ランドセルの中身も確認してみる。
教科書をパラパラめくってみても、今まであったたくさんの色が消えていた。
ぼくの部屋だけ?
部屋をでて階段を降りる。テレビの部屋も台所も、やっぱりすべてが灰色で、なんだかお腹がギュッとして、すこしだけ息が苦しくなった。

みんながいない。
いつもは一番最初にまもるくんが「おはよう」って言ってくれるのに、
どこにもいない。
いつもはみんながたくさん話してるのに、誰の声もしない。なんの音も聞こえない。
どこ行っちゃったんだろう。ひとりぼっちはこわい。
不安で心がザワザワする。みんなを探しに行きたくなって、玄関へ走った。
鍵を開けようとした時に、ぼくの左の太ももにふわっとしたものが触った。「外へ出ちゃダメだよ」という声も聞こえた。

ふわふわするものは、ミケの前足だった。
ミケは人間の言葉を話せる猫で、いつ、どこでだったのか覚えてないけど、ぼくが拾ってきた。
連れてきた時、まもるくんが「きれいなミケ猫」と言っていたので名前が「ミケ」になった。
ミケは後ろ足で立ちながら、前足でぼくの太ももを押さえていた。ふわふわしているのはミケの肉球だとわかった。
ミケの大きな緑色の瞳がキラキラしている。ミケには色があった。
茶色と白とオレンジの長くてふわふわした毛並みがとてもきれいで、心のザワザワが少しだけ小さくなった。
「みんながいなくて、探しに行きたい」
ぼくはしゃがんでミケを抱きしめた。

See you tomorrow

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