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ちっちゃいから狭いって、誰が決めたの?

よく聞かれること。
「これで本当に7坪なんですか?」
いつも答えること。
「そうなんです。デザインした僕も不思議なんですけど」

僕も含め多くの人は、思い込みという〝ボックス〟に取り込まれていて、
本当の事実が見えていないことがよくある。
厄介なことにそのボックスはガラスの壁で出来ているから、自分が〝箱入り人間〟だということに、ほとんどは気づかずじまいなだけなのに。

ちっちゃいから狭いとは誰も決めていない。
ちっちゃいから安っぽいとは誰も決めていない。
そうしなければならない法律なんて、存在しない!

これもよくある感想で、コヤキチの室内を体験した人の多くが、
「外観と違って中は洗練されたデザインなんですね!」とおっしゃる。
安っぽいとは真逆の上質な空間がそこにあるからだ。


写真は、脱衣室とトイレスペースを兼ねた空間からリビング側を見たもの。玄関からつながった土間は、土遊びをして帰宅した人がそのまま浴室へ直行できるようにデザインした。
お隣のカフェの加藤さんは、薪ストーブの周辺は汚れやすいから玄関が土間になってるのってすごくいいんですよね~、とおっしゃっていた。
はい、確かにそこも狙いました~!

この写真は広角がかかっているので人間の目で見た場合よりも横長く〝表現〟されている感じに見えるけれど、実際にこの空間に入ったら、その気積的なボリュームはもっと広く感じる。
まあ本当に広々としているのだ。
人間の目は〝表現〟に誤魔化されるけれど、その表現以上に豊かな感性を持っている。
今この文章を読んでいる人は一旦モニターから目を離して自分の正面をボオッと見据えてほしい。すると視覚の左右まで何となく見えていることに気づくはず。この豊かさはカメラでは真似できない。
せいぜい〝広角という表現〟で再現するしかない。

この脱衣室&トイレスペース(右隅の白い楕円がトイレのサティス。その前の折戸の中に1216サイズの浴室が当たり前の顔をして収まっている)を体験した人は、必ず驚かれる。
「へぇ~広いですね!」
「お風呂まであるんですか!」

見学される方は、動線上、先にリビングを体験することになる。
そこは、幅2400ミリのキッチンがある上に広々としている。
ミニキッチンではなく、ショールームにあるような一般サイズのキッチンがこのちっちゃな空間に無理なく入っている!
と感心されるのだが、そこに油断が生じる。
「確かに広々としているけど、まあここまでだろう」
人はガラスの壁を押し開くことはなかなかできないものなのだ!
ところが、リビングの左奥に寝室としても使える個室空間があることに二度目のびっくりが生じ、さらに止めを刺すタイミングでこの脱衣室&トイレスペースに案内されるものだから、ほとんどの人は心の中で「ビズリーチ!」と叫んでしまうのである。

その光景に立ち会うことが、デザイナーとしては楽しいのです。

『ちっちゃいのに広い魔法のスモールキャビン』とキャッチフレーズで表現したのは、自分でもこの空間の広々感が不思議でならないからです、きっと。

その不思議さに飽きが来ないか、その不思議さは本物か、その不思議さの正体は何か? それを知りたくて、福岡のマンションとこの由布の森のコヤキチで2拠点生活を送っている自分が居ます。

この文章を福岡で書いていたら、本棚の一角にレジ袋が置いてあり、中を見たら森からのギフトでした(飾るの忘れてた!)。
その野草たちをさっそく飾ってみる。
吊り下げるのではなく、本の上にザッと。
ガラスの壁をちっちゃく開けて、こんな風なのもアリじゃない、などと思いながら。

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