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クリスマスイブデートをドタキャンされたアラサーはどう生きるか。

メンタルが落ちている。

午前11時。若干攣り気味の足で、寒色の冷えた部屋を見渡す。

ああ汚ねぇ部屋だ。
繁忙期で机の上にはめんつゆやお菓子。ソファーには読みかけの本や服。とにかく物が散乱している。こんまりが見たら、お前の部屋はときめかねぇ!とボディブローされるレベルだ。


メンタルが落ちている。

ソファーにどかっと座る。惰性でYouTubeやTwitterを見る。

気づけば、今日は朝からうまくいかなかった。


大会だというのに若干寝坊。仕事と忘年会の影響がもろに出てる。昨日の夜スマホいじらなきゃよかった。

もういいや適当に朝飯作ろう。

盛り付けが汚ねぇ。
こんなんでテニスのモチベーションはあがらねぇ。
ゆで卵の殻が混在している。
トマトジュースでカボチャを煮込んだやつが酸っぱくてめちゃくちゃまずい。なんとか食い切る。最悪の気分だ。

大会前、いつものように少しアップをしようと、いつもの壁打ちに向かうと、
壁に向かって野球ボールで遠投してるおっさん。うーん。当たったらたまったもんじゃねえな。一応存在を認識させておくか。

「すいません。この辺だけ借りてもいいですか?」
壁の右端をジェスチャーで指差す。

「いや、こっち使えよ!」
怒って壁の左側を指差す。

「え?こっち?あー、おっけ!」
怒ると思わなかったので咄嗟にタメ口が出る。
俺の悪い所だ。
まあ、確かにぐるりと大回りしおっさんの後ろを回れば左側には到達できたか。すまんな。

15分左側アップを済ませ帰ろうとすると、
おっさんが遠投をやめて近づいてくる。
あー、これなんか言ってくるなぁと察してたら、

おっさん「なあ。人をどかすのって失礼だと思わないか?」

そんなつもりはなかったのに。

「あー、はい。すいませんでした。」とそそくさと立ち去ろうとするが、

おっさん「だからさー、その態度もありえないだろ?」

謝ったやん。

源「もうしつこい!終わったんだからよくないですか?」と面と向かって伝え、チャリに飛び乗り後ろからの声を無視して出る。

いつもなら「気をつけまーす!」と笑顔で頭を下げてるところだが、今日は朝から気分が最悪だったので、つい言い返してしまった。
何やってるんだ。朝からプレーに影響を与えたくない。なんでこんなしょうもないことで喧嘩しなきゃいけないんだ。

出た後も、おっさんがフェンス越しに「お前は人としてなんちゃら」とか叫んでいる。
気分云々でなく、ADHD特性でプッチーンして、つい大人気なくちょうどおっさんに聞こえるくらいの小声で「ばーか」と呟いて逃げた。
そんな自分もすごく嫌だった。

多分普段の俺なら、普通に受け流すとこだが、仕事疲れもひどいし、プライベートでもクリスマスドタキャンされるし、色々荒れていた。

最悪の気分で大会会場につく。
見知った顔が多かったので、今回どうすか?と気さくに声をかける。
ただ、おっさんと大人気なく喧嘩したことがずっと尾を引いている。何やってんだ。切り替えろアラサー。

前回運良く試合に勝てたので、一応第8シードだ。
巡り合わせなのか、初戦は前回二回戦で倒した大学生君だった。

試合のプレーを毎回スマホで撮る熱心な大学生で、負けた後もずっと応援してくれて、その後飯に行くほど仲良くなり、テニス談義で1時間半くらい話した。

そして、試合。

前回と同様、沼プレーで3-0までおいつめる。
しかし沼を攻略され3-4まで巻かれ、焦って攻めに転じる。

大学生君には、めちゃくちゃ研究されてて、俺の苦手なところをついてきて、めちゃくちゃ苦戦した。

試合は一時間半を超え、隣のコートは3試合目が始まっていた。


結局途中で、足を攣りそうになり、3-6で負けた。

大学生「俺は攻められても耐えることだけを考えていました。前回負けたので、今回は絶対勝ってやろうと思って。」

ん、、俺は何を考えていた?

「ああ、忘年会で若干寝不足だ。早くミスしてくんないかな。」

「家帰ってネトフリみたいな。」

「くそ、さっきのくそじじいに文句言ったせいかな?メンタルとプレーがうまくいかない。素直に頭下げとけばよかった。」

「うわー、初戦負けは恥ずかしいな。昨日の忘年会で、県大会予選でますとか言わなきゃよかった。」

「なんで葵ちゃんとクリスマスデート行けなかったんだろう。」

雑念ばっか頭の中に浮かび、体はぎこちなく固まり、気づけば足も攣り、ほんとテニスってメンタルスポーツだなぁと思った。

...こんなんじゃダメだ。
動け。動け。俺の体だろ?
今動け。

「”負け”は弱さの証明ですか?君達がそこに這いつくばったままなら、それこそが弱さの証明です。」

ハイキュー「武田先生」

寝そべってたソファーから一歩足を踏み出す。
同じ態勢でいたので、足が若干攣っていたのを思い出す。

でも動け。

あっついシャワーを浴びよう。

暖房をつけよう。

ご褒美に勝ってた甘酒をあっためて飲もう。

そんで、この汚ねぇ部屋を掃除しよう。

おっさんにあったら、「あの時はすいませんでした。」と謝ろう。

「試合頑張ってください!」と応援してくれた職場の後輩たちには、
「例の大学生君めちゃくちゃ強くなってたわ。次は負けないように練習するわ!」と明るく話そう。
葵ちゃんは、どっかで勝手に幸せになってくれ。

なんだこの文章は。徒然草よりひどい徒然具合だ。まあこれも俺だ。

とりあえず、一通りやりたいことを終えて、部屋を掃除したら、

外に出よう。

昨日の職場の忘年会で当たったお菓子セットのうまい棒を、ちょうどいい塩味でうまかった。

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