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「離婚後の共同親権とは何か」読書会#1 レジュメ

離婚後共同親権とは

<民法818条1項>
成年に達しない子は、父母の親権に服する。

<民法819条1項>
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

現在、離婚後の子どもの養育をめぐって、婚姻中と同様、離婚後も親権を共同にするべきかどうか、法制審議会で議論が進められています。

<法務省―法制審議会家族法制部会>
https://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_003007

では、離婚後共同親権が導入されると、一体何が起きるのか?

<参照文献>
千田由紀武蔵大学教授「共同親権は何を引き起こすのか?ー映画「ジュリアン」を手掛かりにして」(「離婚後の共同親権とは何か」日本評論社、2019年 1-25頁)

<映画「ジュリアン」>

<あらすじ>
離婚したブレッソン夫妻は11歳になる息子のジュリアンの親権をめぐって争っていた。ミリアムは夫のアントワーヌに子どもを近づけたくはなかったが、裁判所はアントワーヌに隔週の週末ごとにジュリアンへの面会の権利を与える。アントワーヌはジュリアンに、共同親権を盾にミリアムの連絡先を聞き出そうとするが、ジュリアンは母を守るために必死で嘘をつき続けていた。アントワーヌの不満は徐々に蓄積されていき、やがてジュリアンの嘘を見破るが……。(映画.com)
<試写会の感想>
「身体的暴力への理解が羨ましい」
「精神的暴力で追い詰められても、これほどの理解を得られることはない。支配を続けるために夫が、あたかも『子ども思いの父親』かのように理解され、どれだけ親子が置かれている恐怖を訴えても、裁判所には聞き入れてもらえない。あの男の言動は、暴力的で分かりやすくて、終わりが見えた。本当に羨ましい。」(上記文献P.4)

なんでこんなことが起きるのか?

ジュリアン・・・主人公。11歳の少年
ミリアム・・・母親。無職。
アントワーヌ・・・父親。

①ジュリアンが「父親に会いたくない」と主張しても、裁判所が聞いてくれない。

②裁判所は、ミリアムが暴力を訴えたにも関わらず、共同親権を命じる。

(ジュリアンとミリアムはどんな主張をしていたか?)
・アントワーヌからのDV
・長女ジョゼフィーヌ(18歳)の負傷の事実

背景①:フレンドリー・ペアレント・ルール

お互いの面会交流などの共同養育に寛大な側に親権を渡すという考え。

<日本での裁判例>

<片親疎外症候群>
復讐心に燃える監護母が別居する父親を罰し子どもの監護権を確保する協力な武器として、子ども虐待があったと主張する症候群。(R.ガードナー)

※医学上は認められていない。

背景②:裁判所の実証主義

「本当に怖かったら、証拠を残す余裕はないはずだ」と「証拠がない限り信じられない」はトレードオフの関係にある。(上記文献P.12)

映画では、父親から長女への暴力の証拠として、裁判所に診断書が提出されたが。。。

・家庭内の父親による暴力を周囲に隠したい
・診断書は3年後に作成されたもの

裁判所の事実認定能力に限界があるのではないか?

(吉田容子弁護士)
子の安全と安心の確保は証明責任の分配では守れない。

背景③:"父親を奪う"ことは子どもの利益にならない

【映画に描かれていない事実】
ミリアムはなぜ無職なのか?

共同養育を法制化することの問題点

<推進論の背景>

背景①父権運動(ファレルの女性の権利への批判)
A・・・Abortion(中絶)
B・・・Birth(避妊)
C・・・Caring(育児)

背景②(ジェンダーの中性性のレトリック)
消される「女性」の存在

背景③(健全なアイデンティティ論)
両親がそろっていなければ健全なアイデンティティは育たない

<問題点>

・暴力の隠蔽
・裁判所の暴力への加担
・被害者の回復困難
・シングル家庭へのスティグマ
・リーガルハラスメント

以上






【分野】経済・金融、憲法、労働、家族、歴史認識、法哲学など。著名な判例、標準的な学説等に基づき、信頼性の高い記事を執筆します。