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【離婚後共同親権】世論はどのように操作されるのか(13)Web論座の無責任なハンガーストライキ擁護報道

〔写真〕AFP通信に掲載された、ハンガーストライキの実施場所で立てられている幟。本人によれば、仕事もお金も失ったとのことだが、幟は金をかけてしっかり作られている形跡がみられる。

また始まったパフォーマンス

【AFP=時事】わが子を日本人妻に「誘拐された」と訴える在日フランス人男性が10日、東京都内でハンガーストライキを開始した。男性は、子供たちと再会するための自身の闘いに国際的な関心が集まってほしいと願っている。(上記記事より)

朝日新聞系のWeb論座にも詳報が掲載されていました。
筆者は、栗田路子氏、ふだんはブリュッセルを中心に活動されている方で、今までは、生活情報などを発信されていたのに、急に離婚後共同親権問題に「参戦」されてきた方です。

※現在、公開は終了し、論座編集部のお詫びコメントが掲載されています。

そこで、googleのキャッシュ機能を駆使して再度チェックしたのですが、読んで驚きました。

上記AFP通信に登場したフランス人男性(以下、プライバシーに配慮するため、VF氏と表記します。)は、昨年の欧州議会決議の請願者のお一人だった、というのです。
この記事ですね。

上記記事の請願データでは、「VF」としか表示されていなかったため、本名は分かりませんでした。また、請願内容もサマリーだったため、事実関係はほとんど分かっていませんでした。

今回、ハンガーストライキをされたことで、本人が主張する事実関係が報道ベースではありますが、徐々に分かってきました。

VF氏が求めているのは内政干渉だった

報道されている事実を総合すると、VF氏は在日歴15年のフランス国籍の男性。日本人女性と知り合い、結婚後、2015年に長男、2017年に長女が誕生しています。
しかし、子育てや家事を巡って言い争いが絶えず、家庭内別居状態に。
2018年に離婚に向けて話し合いをはじめて数週間後、妻が子ども2人を連れて別居。以降、子どもたちに会えていない、ということのようです。

上記Web論座記事を書いた栗田路子氏は、調べ始めた当時「てっきり欧州にいるのだろうと思った。」と思っていたそうですが、私もそう思っていました。
なんと、日本国内で結婚し、離婚手続も日本国内で進めているのです。

昨年の欧州議会決議が採択された当時、日本国内の報道はハーグ条約と関連付けられているものがほとんどでした。
しかし、法的には実は、同条約と何ら関係がなかった。

そして、こうした国際結婚のケースでは、「法の適用に関する通則法(以下、単に通則法という)」という法律が適用されます。
VF氏のケースでは、常居留地は日本であるため、婚姻・離婚双方とも日本法がそのまま適用されます。
国際条約の適用の余地がそもそもありません。

もし、VF氏が求めるように、日本政府に子どもの引渡しを要求したり、フランス本国政府から日本政府に圧力・制裁を加えるということになるならば、立派な内政干渉であり、それこそ国際法違反です。

一応、VF氏に関していえば、外交保護権(※)を行使し、フランス政府から日本政府に要求してもらう、という方法はあります。

※自国の国民が外国においてその身体や財産を侵害された場合に、国家がその外国に対して当該自国民に適切な救済を与えるよう要求する権利のこと。

ところが、これをフランス政府が行使することは今回はできません。
外交保護権を行使するには、①被害者が自国国籍を継続的に保有していること。②被害者が在留国の救済手続を全て利用し尽くしていること。の2つの要件を満たす必要があります。
ところが、VF氏の離婚裁判はいまだ日本国内で係争中のため、フランス政府は外交保護権を行使する資格はありません。

問題はまだあります。
VF氏が要求している相手方は、日仏両政府ですが、VF氏とその妻・子を引き離しているのは、日本の司法裁判所です。両政府が超法規的な措置でこれを覆したら、司法権の独立に対する重大な侵犯行為です。
つまり、お門違いである。

こんなことは、両国のエリート外交官は百も承知でしょう。
従って、残酷な言い方ですが、VF氏の健康状態がいかに悪化しようと、手の打ちようがない。
ご本人に諦めて止めていただくほかありません。

そもそも事実関係の調査は尽くされたのか?

そして、今回もまた、この問題が持ち上がる。

本件でも、VF氏の話によれば、①妻側からDVの主張はあった。②裁判所で否定され、妻側から主張が取り下げられた。③自分はやっていない。の3点セット。

奇しくも話題になったフランス映画「ジュリアン」でも描かれていますが、どこの国の司法制度であれ、DVの立証は非常に難しいです。
そもそも主張の対立が激しい。

疑うような言い方ですが、VF氏だけの話を聞いて無罪だと認定するのはあまりに迂闊でしょう。

私のnote読者の皆さんは、過去にこの記事をご覧になっているでしょうが、再掲しておきます。

栗田路子氏の7つの間違い

このうっかりにかろうじて気づいたのが論座編集部の皆さんで、栗田氏の問題の多い記事は、現在削除されています。

どんな点が問題だったのかということ。。。

①取材は、VF氏本人のみの取材だけであり、事実関係についての反対取材がない。

②VF氏に関する訴訟資料を確認した形跡がない。

③児童の権利条約に対する基本的な誤解がある。そもそも、日本の法制度は同条約違反ではなく、国連勧告もそのような指摘は一切していない。子どもが親に会う権利は、面会交流の問題であって親権の帰属の問題とは異なる。また、この権利を主張する法的適格性は別居親にはない。

④③同様、連れ去りだのでっち上げDVだのを書き連ねているが、そもそも法制度一般に関する基本的知識が決定的に不足している。まさか裁判で立証されなかった事実は全部事実無根。。。と考えているようなウブな世間知らずだとは思いたくないが、ずいぶんと良い人生を歩まれたようですね。

⑤実は、未解決な重要な事実があった。
記事中、VF氏は「自分と妻がどんなに折り合わなかったとしても、子ども達には母親が近くにいることが大切。慣れ親しんだ日本の環境から無理やり引き離すのは子どものためによくない。」と語っている。
つまり、VF氏はいわゆる「実子誘拐」だの「フレンドリーペアレントルール」だの「面会交流阻止」だのという、日本国内の共同親権推進派とは一線を画した、全く異質な法的主張を考えている可能性が高い。
むろん、ハーグ条約のような解決策もVF氏自身は批判的であろうと考えられる。

⑥⑤であるにもかかわらず、栗田氏は、自己への主張へ、論理的に無関係と考えられるVF氏の事件を我田引水しているに過ぎない。

⑦取材姿勢にも根本的問題がある。
「さっさと奥さんと別れて、本国に戻り、第二の人生を歩み始めれば?」
「日本はヴァンサン一人の命なんか、気にもかけないし、何も変えられないよ。犬死する価値もない。子ども達をお父さんのいない遺児にしてしまう気なの? 10年後、彼らが成人した時、『パパはここだよ』と、抱きしめてあげてよ。それまで欧州に戻ってはどう?」
などという質問は、いったいどこからモノを言っているのだろうか?
また、名前は伏せますが、記事中にはVF氏の子どもの名前が(おそらく)実名で登場しています。
ジャーナリストとしての基本的な姿勢が完全に欠けているといわざるを得ない。

※今回は、プライバシー配慮のためキャッシュ情報は非公開とします。(できる方には簡単でしょうが。)

佐々木田鶴さんって誰ですか?

もう1つ指摘したいことが。

実は、論座に寄稿した栗田氏と極めてよく類似した経歴を持つ方が、栗田氏と同じくブリュッセルを拠点として活動されていました。

佐々木田鶴と名乗られていたライターですが、出身大学、執筆実績、活動分野等が唖然とするほどよく似ています。

※佐々木氏は47NEWS、栗田氏はAllAboutなどに詳しいプロフィールが掲載されています。

誤解がないように申し上げておきましょう。
私は別に、同一人物であろうと別人物であろうと本当はどうでもいいと思っています。芥川龍之介みたいに本名を通せとも言いませんし、太宰治みたいにいっぱいあってもいいし。w
実際に同一人物なら批判する人が1人で済むだけで、2人ならば2人とも批判するだけなんで。

「海外在住の日本人ジャーナリストからもたくさん声が挙がっている」みたいな工作でしたら、止めてもらいたいだけです。邪推ですけど。

VF氏に必要なのは政府の行動ではなく、弁護士の交代

今回の記事を読み漁ってみて痛感したのは、「弁護士も"ガチャ"があるんだな。。。」ということでした。

栗田氏の記事で唯一の評価ポイントである、VF氏の重要発言。
建設的に対応可能な弁護士はいるはずです。

この発言を知りながらハンガーストライキを黙認しているならば、VFの代理人弁護士の誠実さに重大な疑念を抱かざるを得ません。

これは単なる推理ですが、おそらくVF氏は、フランス法の訪問権が日本でも可能ではないか、と思っているのではないでしょうか?

手遅れになる前に、関係者が何とかしてあげるべき事案だと思います。

(了)

【お断り】
一連の報道では、VF氏は実名で掲載されていますが、本記事では、プライバシーへの配慮からイニシャルで表記しています。

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