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foresDiary︰鬱と燃え尽きと過度な心配

2022/10/27

 その日、私は突然の鬱症状で会社を休んでしまう。いつも通り朝8時に起き、着替えを済ませて朝食を摂る。ここまでは順調だった。

 歯を磨こうとして立ち上がろうとすると突然身体が動かなくなり、電池切れのように思考が鈍くなる。激しい動悸、意思に反して涙が流れ、吐き気もする。心の奥がモヤモヤして気持ち悪い。毒という毒が吐け、吐けと促すが堪える。
 この症状は覚えがある。鬱だ。鬱症状が全面に出るのはかなり久しぶりで、恐らく前職ぶりぐらいだと思うから4年ぶりだろう。

 治まったのが30分後────やっと思考が正常に戻りかけて、出勤不可能と判断できた。会社に連絡をし、身体を休めることに専念した。
 しかし今回はどうも違うようで、ゲームをする気もなければYouTubeも途中で見る気が失せ、寝てもだるさは変わらず────やる気がこれっぽっちも無くなっていた。

 「私もスプラトゥーン3買いましたよ〜、やりすぎて燃え尽き症候群になっちゃいました笑」

 いつかの先輩と話した時の言葉。この時は冗談で言っていたかもだけど、この症状は鬱でもあるが燃え尽き症候群の気もした。ここ最近仕事が忙しく、手が回らないことが多かった。それで急に来たのかもしれない。ちょっと待て、先輩も同じような症状があったような…




2021/03/05 〜 2021/03/15

 急に連絡もなしに先輩が来なくなった時期があった。私一人だけ悲しくなったのを覚えてる。理由は気に触っちゃいけないと思って聞かなかったけど、恐らく同じように仕事が立て込んで忙しかったところに急に来たのだろう。でもひどく悲しんでいたのは私しかいなかった。周りの人も心配はしているだろうが、私には心無い言葉にしか聞こえない。

「来週なったらケロッと治って来てるかもよ」
「〇〇(先輩)さん、フェードアウトしちゃうのかな」
「あの子いないせいでルーティン多すぎるわ!」
「もうしんどくなってしまったんちゃうか」
「ほんまあいつ…!!」

「何、何よ。味方のフリしてそんなこと言うんだ。アンタらのほうが何倍も酷いわ!」
 ────って言葉を飲み込んでただ私は涙を浮かべながら仕事をしていたのを覚えている。

「どうしているのかな」
「どうしたら支えになれるかな」
「あまり干渉しない方がいいのかな」

「もしかして事故にあったのでは────」

 知らないうちにボタボタと大粒の涙をこぼしている自分がいた。スーツのズボンはびっしょり濡れているのを見ていつもの泣き方じゃないと理解する。でも場所は職場ではなく、職場の最寄駅の隅っこにあるベンチ。公共の場だというのに大声で泣いていた。

 胸が締め付けられすぎて死ぬ。先輩はもしかしたらこの世にいないかもしれない。そんな世界は嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。先輩のためなら死んでもいいと本気で思った。その日は何時に家に帰ったのか分からない。恐らくご飯も食べずかなり遅い時間に帰ったのかもしれない。

 それから一週間後、先輩が仕事に復帰すると聞いて安堵する私だったが、その日の朝礼で私は暗闇に落ちる感覚がした。

「今日から〇〇くんが復帰するけど、声をかけないようにしてほしい。そっとしてやってくれ。」

 上司の一言は全員に向けて言っているが、顔と目はずっと私を見ていた。

「心配するのは分かるけど、そっとしておいたほうがあいつのためや。いつも通り接してやってほしい。」

 まるで"そのこと自体無かった"かのように接しろと?それを先輩自身が望んでいるのか?いつも通り────?私にとっていつも通りって何?先輩にとっていつも通りって何?仕事にとっていつも通りって何────?

 何も分からなかった私は何も出来ない。情けなくなり涙を浮かべながら仕事をする。こぼれそうになったらトイレに行き、涙を拭いて戻る。その繰り返し。そこを除けば世間一般でいういつも通りなのかもしれない。でも何も出来ない自分、そっとしてやってくれと訴えてくる上司。2つの感情が重くのし上がってきて苦しい、苦しい苦しい。

 それを続けていると先輩は笑顔に戻っており、てきぱきと仕事をしていた。ああ、先輩は"いつも通り"だ。少しして気持ちも落ち着いたのだろう。それは本当に良かった。良かったのだけれど────




〜 2022/10/31

 その出来事は私には大きな傷となって、一年ちょっと経った今も癒えずにいる。先輩が来ないと聞いただけで吐き気がするようになってしまった。連絡先交換したのに配送課上司の一言に縛られて言葉も紡げない。助けてあげたいのに。先輩がこれを見ているのなら、どうしてほしいか聞きたい。見てないと思うけど。

 いない時は不安に駆られ、仕事が手付かずになる。我慢できず社内スケジュールを覗いてしまう。これは完全にメンヘラムーブである。しかしそうしないと心の平穏が保たれず、仕事は手につかないどころか吐き気が酷くなる感覚に陥る。

 10月中旬から配送課は棚卸作業で忙しくなる時期だ。配送課時代、夜21時まで残って作業をしていたことを思い出した。あれは本当に忙しくて、しんどい。それは2年経っても変わらないようで、後ろ姿を見るだけで忙しいのが伝わってくる。

 今日だってそうだ。17時頃、自部署───法務課の女性社員さんがお茶を買おうと休憩室に向かうと先輩と会ったという。その女性社員さん曰く先輩は今から休憩だといい、上手く休憩を回せないほど忙しいという。

 何も出来ない自分が嫌になる。でも過度な心配はその人の"毒"になるのかもしれない。そうか、だから配送課の上司は私に釘を刺したんだ。────あはは、縛られてばっかりじゃん。そんなんじゃ話したくても話せないよ。なんだか先輩と話せた女性社員さんが羨ましく思えてしまうよ。

 薬の副作用なのか、先輩と話せないからなのか、吐き気は治らないまま。先輩のこと心配してるけど、何も出来ない。励ますメールでもしたいけど、先輩の重荷になってしまうからしない。苦しい苦しい苦しい。

 でもそれを隠して笑顔で仕事に取り組む。だってそうしないと狂ってしまうよ。

 どうしたら、先輩を救えるのかな────

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