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旧ジャニーズ事務所が保有するSMAPの商標権を抹消することは可能か

事務所が保有するSMAP商標は以下の6件。その内の一つ、商標 第3047285号は2025年5月31日に存続期間満了を迎える。更新申請されなければ商標は抹消となるが、同事務所が保有する商標が更新申請されず抹消されたケースは、特許情報プラットフォームで確認した限り見当たらない。

芸能活動に関わる商標は 第3047285号のみ。 残りの5件は、元メンバーのタレント活動を制約する可能性は極めて低いと考えられる。

更新申請時に審査は行われない

更新申請された場合、特許庁に更新を拒絶するように要望することも考えたが、そもそも更新については審査が行われていないことが判明した。そのため、事務所側が申請すれば、そのまま商標権が更新されることになる。

更新阻止が無理なら、「不使用取消審判請求」しかない

日本国内において継続して3年以上、商標権者が、指定商品・指定役務について登録商標の使用をしていない場合に、誰でも、その指定商品・指定役務に関する商標登録を取り消すことについて、審判を請求することができる(商標法第50条第1項)。

[参考資料]
不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のための参考資料
(特許庁審判部審判企画室)

対象となる指定商品・指定役務

商標 第3047285号の指定商品・指定役務は「演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏」。SMAPは2016年12月31日に解散しているので、7年半以上、SMAPとしての芸能活動は行われていない。2024年6月末時点で、商標の使用に該当する可能性があるのは、テレビまたは配信サービスでのSMAP出演番組の再放送となる。過去3年以内に再放送が行われたか否かで、商標の不使用が判断されると考える。

[商標の使用についての補足説明]
・SMAPのCD及びDVDの販売は現在も続けられているが、これらは指定商品・指定役務に含まれていない。特許庁は、そもそもCD及びDVDを指定商品とした商標登録を認めていない。
STARTO ENTERTAINMENTによるSMAP再結成を画策する動きが、過去に報道されたことがあった。これが実現すれば商標がライセンス供与され、商標の使用となりえたが、実現していない。

SMAP出演番組は、過去3年以内に再放送されたか?

この確認については、X上で調査協力を依頼して768名の皆様から回答が得られた。「再放送を見ていない」と回答した方は649名(84.5%)、「再放送を見た」は119名(15.5%)という結果となった。SMAPに興味を持っている方の約85%が再放送を確認できないとなると、これだけでSMAPの商標が使われずに死蔵されていると思わざるを得ない。商標を使うために保有するのではなく、退所したタレントに使わせないために保有し続ける。これが事務所側の意図であるのは間違いないだろう。

再放送を見た方からの貴重な情報

「見た(時期や番組名を覚えている)」と回答された方からの、具体的な情報を以下に紹介する。ドラマやバラエティーなどの出演番組が再放送されるケースは皆無で、歌番組の中で数秒の歌唱映像が流れる程度に限定される。

情報1
2021年~2022年にテレビで歌唱映像が使用された番組名と曲名

2021/09/24 「ミュージックステーション」曲名 らいおんハート
2021/10/06 「2021 FNS歌謡祭 秋〜もう一度観たい名曲・名演〜」曲名 SHAKE
2021/10/15 「ミュージックステーション」曲名 夜空ノムコウ
2021/11/17 「ベストアーティスト2021」曲名 Triangle
2022/03/23 「2022 FNS歌謡祭 春 名曲ライブラリー」曲名 世界に一つだけの花

情報2
2021年~2022年にテレビで映像は使用されなかったが、楽曲のみ使用された番組

情報3
2023年4月3日にTBS系で放送された「CDTV30周年歌うぞ!1位の曲だけフェス

SMAP出演番組は、直近で2023年4月に再放送されていた

過去3年間、数秒から数分という短時間とはいえ、SMAPの映像が地上波で複数回放送されたということは、映像使用を許諾した事務所側に二次使用料が支払われた可能性が高い。また、SMAPの商標について、直近で2023年4月3日に使用された実績があるということになる。そのため、現時点では「不使用取消審判請求」を行っても、商標を取り消す判断は得られないことになる。今回の調査で、2023年5月以降に再放送があったかどうかの情報は得られていないが、再放送が行われない期間が3年続いた場合は、その時点で「不使用取消審判請求」を行えば、商標が抹消される可能性はある。

2023年4月に再放送の実績があった。SMAP元メンバーへ出演料は支払われたのか?

公正取引委員会は、芸能分野において独占禁止法上問題となり得る行為の想定例として、以下を挙げている。
「芸能人に属する各種権利(氏名肖像権,芸能活動に伴う知的財産権等)を芸能事務所に譲渡・帰属させているにもかかわらず,当該権利に対する対価を支払わないこと」 (優越的地位の濫用)
令和元年度公正取引委員会年次報告 (134ページより)

SMAP出演番組の再放送によって、旧ジャニーズ事務所(現 SMILE-UP.)が二次使用料を受け取っていながら、SMAP元メンバーへ出演料が支払われていない場合、優越的地位の濫用に当たる。2024年4月時点で、元メンバーは全員退所しているので、それ以降は報酬が支払われていない可能性が高い。SMAPの商標権を持っていながら、再放送時の出演料がタレント側に支払われていないとなると、独占禁止法に抵触するのは間違いない。

最後に(まとめ)

・「SMAP出演番組の再放送に関する調査」により、過去3年間で歌唱映像は複数回テレビで放送されていたことが分かった。
・再放送が行われない期間が3年続いた場合は、「不使用取消審判請求」することで、SMAPの商標が抹消される可能性がある。現時点ではこの請求が通る可能性は低い。
・再放送によって放送局から二次使用料が支払われた場合、SMAP元メンバーに報酬が支払われる必要がある。出演料が支払われていない場合、優越的地位の濫用に当たる。
・ここで紹介した情報は、自由にご活用いただいて構いません。特に、特許庁や公正取引委員会へ情報提供していただき、タレントの権利保護のために活用していただければ、幸いです。
「SMAP出演番組の再放送に関する調査」にご協力いただいた皆様に、感謝申し上げます。

作成日:2024年6月30日

情報提供にご協力いただける方はこちらからお願いします

特許庁

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公正取引委員会

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情報提供先のリンクを追記:2024年7月4日

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