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地上気象観測の補正って?【第59回-専門-問1 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問1 気象庁が行っている地上気象観測の手法について述べた次の文 (a)〜(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。ただし、標高の高い地点についてはこの限りではない。

(a) 観測地点の海面気圧は、その地点の気圧と気温の値および気圧計の平均海面からの高さを静力学平衡の式と気体の状態方程式に基づいた換算式に代入して求め、観測値としている。

(b)観測地点の気温は、観測データの面的な均一性を保つ目的で、下層大気の標準的な気温減率を用いて平均海面の高さの気温に補正して、観測値としている。

(c) 地上10m より高い所で測定した観測地点の風速は、地表面の摩擦を考慮した換算式により地上10mの高さの風速に換算して、観測値としている。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

(a)気圧の補正 → 正

そもそも、気圧は、観測地点の標高などによって異なります。
具体的には、10m上昇すると、気圧が約1hPa下がると言われています。

したがって、気圧を周囲の観測地点と比較したり、地上天気図に等圧線を描いたりするには、
換算式を用いて、標高などで異なる現地気圧を、海面の高さの値である海面気圧に統一して換算しなければなりません。

気象庁は、計算で換算した「海面気圧」を発表している(出典1)

その換算式とは、静力学平衡の式と気体の状態方程式を連立したものです。
詳しくは、参考書で、層厚の式と探してみてください。

静力学平衡の式
ΔP = -ρgΔZ
気体の状態方程式
P = ρRT

(b)気温の補正 → 誤

気温は観測地点での値であり、標高に応じた補正はしません。

アメダス(地図表示)(2023/9/16:出典2)

したがって、気象庁のアメダスのページを見ても、
富士山(静岡県)だけ6.2℃と、気温が低くなっていることがわかります。
気温は補正しないのです。

(c)風速の補正 → 誤

「地表面の摩擦を考慮した換算式」って、皆さま思い浮かびますか?

私なら、試験勉強で聞いたことがないので、とりあえず誤とつけて進みます。


まとめ

(a)正、(b)誤、(c)誤となりますので、解答は③です。

いかがでしたか?
気温や風速の補正はしないだろうと見当がつきますが、
気圧の補正の判断が難しかったかもしれません。

怪しい方は、参考書を開き、
静力学平衡の式や気体の状態方程式と友達になっておきましょう!

出典など

出典1:気象庁「気象庁|アメダス」(https://www.jma.go.jp/bosai/amedas/)から抜粋して作成

出典2:気象庁「気象庁|アメダス(https://www.jma.go.jp/bosai/map.html)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。