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前線や低気圧の一問一答!【第59回-専門-問8 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
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1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問8 日本付近に現れる前線や温帯低気圧について述べた次の文(a)~(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

(a) 寒冷前線がある地点を通過する場合、一般にその地点では、風向は時計回りに変化し、気温や露点温度は下降する。

(b) 温暖前線と寒冷前線の間の暖域に寒冷前線と平行に積乱雲の雲列が見られることがあり、これが通過すると寒冷前線が通過した時と似た風向変化をすることがある。

(c) 発達中の温帯任気圧の進行方向後面では、下層への強い寒気の流入に伴って層厚が減少し、500hPa面など中層における等圧面高度が下降する一方、地上の気圧は上昇する。

(d) 一般に、温帯低気圧に閉塞前線が形成され始めたときは、低気圧の一生の中で中心気圧が最も低く、最盛期の段階にあたる。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

(a)寒冷前線通過時の変化 → 正

(a) 寒冷前線がある地点を通過する場合、一般にその地点では、風向は時計回りに変化し、気温や露点温度は下降する。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおり、ある地点を寒冷前線が通過する場合、

  • 風向は、南よりから、西または北よりへと、時計回りに変わり、

  • 気温は、寒気に覆われるため低下し、

  • 露点温度は、湿潤な暖気から乾燥した寒気に変わるため低下します。

前線付近の風と空気の性質

(b)寒冷前線と平行な雲列 → 正

(b) 温暖前線と寒冷前線の間の暖域に寒冷前線と平行に積乱雲の雲列が見られることがあり、これが通過すると寒冷前線が通過した時と似た風向変化をすることがある。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

(c)低気圧の進行方向後面の性質 → 正

(c) 発達中の温帯任気圧の進行方向後面では、下層への強い寒気の流入に伴って層厚が減少し、500hPa面など中層における等圧面高度が下降する一方、地上の気圧は上昇する。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

低気圧の進行方向後面、寒冷前線の寒気側では、
冷たくて重い空気分子が下層に凝縮されています。

すなわち、下層の層厚が減少し、
500hPa面など中層の等圧面高度が下降しています。

その一方で、空気分子の密度が大きく、凝縮された地上では、気圧が上昇します。
今回の低気圧の進行方向後面と同様に、
冬のシベリア高気圧でも、下層が著しく冷やされ、地上の気圧が上昇します。

(d)閉塞前線とライフサイクルの関係 → 正でも誤でも

(d) 一般に、温帯低気圧に閉塞前線が形成され始めたときは、低気圧の一生の中で中心気圧が最も低く、最盛期の段階にあたる。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

正と判断できる根拠は…

数日間におよぶ低気圧の一生のうち、
中心気圧が最も低くまで発達するのは、
閉塞前線が形成され始めた時期とするのが教科書的です。

誤と判断できる根拠は…

閉塞前線が形成され始めたその時刻、その瞬間に中心気圧が最も低いとは限らず、
天気図に閉塞前線が描かれてからも、ある程度の時間、
中心気圧が低下することがあります。


まとめ

以上の検討を踏まえると、解答は④か⑤です。

いかがでしたか?

また、(b)は、少し発展的な内容だと思いますが、
文章に矛盾がないので、おそらく判断は難しくありません。

出典など

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。