持たないしあわせ
もっと素敵な服を持っていれば、
もっと高価なジュエリーを持っていれば、
もっと才能があれば、
もっとお金があれば、
もっともっと。
何かをたくさん持っているほうが、幸せだと思っていました。
SEKAI NO OWARIのメンバーである藤崎さんのエッセイ集です。
作家でもある彼女が紡ぐ言葉は、いちいち新鮮で、一気に読むのがもったいなく感じます。
この中のひとつ「義足のランナー」にこんな事が書かれていました。
義足のランナー前川楓選手と藤崎さんはお酒を一緒に飲む友人です。
前川さんが、セカオワのタオルを首にかけて24時間テレビに映ってたことを知り合いから聞いたのがきっかけで、その後、彼女が実際に走る姿を見るため、試合会場まで行ったところから親交が始まったそうです。
実際の彼女の走りは、テレビで見るよりも更に迫力があって、義足であることが彼女の魅力のひとつになっていた。
あるとき、前川さんが
「サオリさん、私ずっとやりたかったことができるようになったんです!
と、右足の義足をぽこっと外し新しい義足を見せてくれました。
「これは新しい義足?」
「そうです。膝が曲がる仕様になったんですが、なんとみんなと同じように階段を登れるようになったんです!」
前川さんは、一段一段、階段を登れることがどんなに素晴らしいことか、藤崎さんに語ります。
普段普通にやっていたことが、彼女のフィルターを通してみると、きらきらして見えて、藤崎さんまでが、階段を登ることが特別なことに思えます。
右足のない人生を送る彼女は、右足のある私が知らないことをたくさん知っているのだ。
ハッとしました。
持っていることが幸せと思っていたけれど、持たない幸せもたくさんあるんだな。
ふむ。
わたしが今、もっていないもの。
わたしくらいの年齢だとたいていの人が持っている、人生を共に歩むパートナー。
パートナーを持っていないわたしは、持っている人が知らない幸せを知っている、の、か???
その点について考えるのは、また今度。
とりあえずあと数時間で、誕生日を迎えます。
とりたてて予定はありません。
予定がないしあわせ。
いや、普通にさみしいわ。
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