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アーサー王文献(3)ローズマリ・サトクリフ「アーサー王と円卓の騎士」

そしてついに、ローズマリ・サトクリフに辿り着く。今までのマロリー版、ノウルズ版とはまったく別物の、ロマンチックで華やかな世界に感銘を受けて、この作品がさらにアーサー沼に引き込むきっかけになったのは間違いない。

このシリーズは3冊組で、もちろんすべて読んだのだが、本当に物語として流れるように読み進められるし、キャラクターの個性が際立っていて魅力的だ。

ただし、初心者の方にこの作品を最もお勧めするかと言われれば、個人的にはそうでもない。私が偶然にも、マロリー→ノウルズ→サトクリフという順で読むことができたからかもしれないが…。
彼女の作品は完成度が高すぎて、これを読むと「アーサー王ってこんなに面白い本だったんだ~ 読んで良かった~」と満足してしまうのではないかと思うためだ。

また、かなりいろんな文献を読んだ今では分かるのだが、サトクリフ版では脇キャラたちの役割が少し違ったり、キャラクターそのものも統合されたり省略されたり、また、新しい彼女なりの解釈が追加で描写されているなど、少し他の文献とは違ったオリジナリティがあるのが特徴だ。そのことによって、物語はよりダイナミックでロマンチックにもなっているのだが、厳密に読んでいくと「あれ?」となることが時々ある。

なので、もし可能であるならば、アーサー王物語を未読の方にはマロリー版だけでも先に読んでからこちらを読まれることをお勧めしたい。

なお、サトクリフ版にしか見られない(と、ひとまず私が思っている)描写でお気に入りなのは、アーサー王伝説の華形でもあるランスロットのキャラクターだ。マロリー版やノウルズ版では、とにかく高貴で立派で完璧な騎士として描かれて(時々イラっとくるほど)無双しまくるのだが、サトクリフ版では影の部分も丁寧に表現されており、味わい深い人物となっている。

さて、サトクリフ版を読み終えた私と友人は、ここで一区切りをつけた・・・なんてことにはならず、さらに好奇心を満たすため、アーサー王伝説の世界に本格的に漕ぎ出したのでした・・・。

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