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その子のために、今日からできることがある。

FOR CHILDREN PROJECTです。

この度、オレンジリボン運動などを展開されている、<児童虐待防止全国ネットワーク>の理事長・吉田恒雄さんにインタビューをさせていただきました。

児童虐待防止全国ネットワーク 吉田理事長

今回、私たちが吉田理事長にインタビューをさせていただいた理由は、児童虐待防止という領域の大先輩に、FOR CHILDREN PROJECTの今後の活動のヒントをいただきたいと思ったからです。児童虐待に関する知識も経験もないFOR CHILDREN PROJECTが、まず、何から始めるべきか。「わからない」の地点から、教えを乞いたい一心でお声がけをさせていただきました。


虐待は、昔からあった。

吉田氏が活動を始められた1990年代後半。
虐待という言葉が広く認知されていなかった時代でも、親から子への暴力はあったそうです。しかしそれは、各家庭内における「しつけ」とされ、周囲が口を出すことではなかった。虐待は、ひっそりと存在していたといいます。

「さらにさかのぼれば、もっと昔には、貧困が原因で『間引き』される時代もあったんです。子殺しは時代の裏側に刻まれているのですね」と吉田氏。

90年代に入り、虐待が社会問題化し注目されるようになりはじめ、いざ相談窓口を設置すると、その実態が浮き彫りになり、様々な団体が続々と立ち上がることに。

その一連の流れが児童虐待防止全国ネットワークの発足や、さらには2000年に制定された「児童虐待防止法」にまでつながっていると、吉田氏は解説くださいました。


法改正で、支援の幅も増えたが…。

2000年の法制定以後、現在に至るまで、法改正が何度も重ねられ、虐待発見後の対などは徐々に充実してきています。しかし、「いくら法が整備され、どれだけ子どものケアが進んでも、虐待対応件数が減らないという事実も見逃せない」と、吉田氏は語ります。


発見後のケアとともに、虐待を予防する社会を。

戦前戦後では「貧困」、少し前までは「そもそもの虐待への理解不足」、そして昨今では「核家族化の加速による孤立した育児」。

いつの時代にも虐待は存在するものの、その原因は、時代によって変わってきました。しかしつねに変わらないのは、虐待を起こすのは大人であり、虐待を受けるのは子どもであるということ。

最も重要なこととして、吉田氏が終始おっしゃられていたのは、虐待が起きにくい社会をつくることが大切ということ。「発見後のケアにとどまらず、虐待そのものが生まれない環境をつくる。いわば予防の観点が大事」なのだと吉田氏は強調されます。


まず「親」からサポートしてあげたい。

虐待をしてしまう親は、決して特別なわけではないそうです。子育てはとても楽しく、幸せなものでもある一方、当然ストレスも大きくかかってしまうもの。そんな状況の中、ちょっとした愚痴をいう相手がいない。たとえば夫の帰りが遅く、育児は母親任せになれば、やり場のないお母さんのストレスが子どもに向いてしまうこともあり得るわけです。

「たまには、子どもを預けて夫婦でデートに行ってみてほしい」と吉田氏は提案されます。「お年寄りがデイケアサービスを利用することが当たり前になったように、すべてを家庭内で背負わず、ストレスを抱え込まずに育児を楽しんでほしい」と吉田氏はアドバイスくださいました。


虐待のない社会。それは、お父さん、お母さんに優しい社会。

「たとえば駅の階段でベビーカーを持ったママが困っていたら、『お手伝いしましょうか』の一言でお母さんは気が楽になるかもしれません。子ども連れで散歩をしているママがいたら、『かわいいですね〜』と一声かけるだけで、お母さんは喜んでくれかもしれません」。
日常生活の中でできることは、いくらでもあるはずだと吉田氏はおっしゃいます。「専門的な知識や、社会活動のような大掛かりなことでなくとも、虐待防止につながることはたくさんあるはずです」。

電車の中で子どもが泣いている。疲れた親子がベンチに座っている。夜なのに小さな子どもが一人で歩いている。そんなシーンを時折目にします。そうしたシーンに出会った時に、嫌な顔をしない。知らんぷりをしない。ウェルカムなのだと伝えたり、笑顔で見守ったりするだけで、張り詰めた思いをほぐすことができる。それが吉田氏のお考えでした。


<まとめ>

今回、私たちは「わからない。から、はじめよう。」の第一歩として、吉田理事長へのインタビューを行いました。

FOR CHILDREN PROJECTに対する吉田理事長のメッセージは、「はじめから大きなミッションを背負うのではなく、できることからやってみたらいい」だったように思います。団体活動としても、そして各メンバーの私生活の中でも。もしかしたら、いま見かけたママは思い詰めていたのかもしれない。悩んでいたのかもしれない。相談相手がいないのかもしれない。その「かもしれない」という視点は、本当に参考になりましたし、その視点に立ってできることは無限にある。まずは身近な家族や、友人、職場の同僚へと少しずつ視野を広げていければと感じました。

1時間という限られた時間の中ではありましたが、吉田理事長からは専門領域の話だけでなく、親としての心構えや、一市民、一生活者としての眼差しのあり方も教えていただいたように思います。インタビューを快くお受けくださった吉田理事長、そして<児童虐待防止全国ネットワーク>さんに、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。


子どもたちの周囲に、
優しさの輪をひとつずつ。
FOR CHILDREN PROJECT


児童虐待防止全国ネットワークさんについて

「子ども虐待のない社会」の実現をめざして、子ども虐待の実情や原因、対応策、子どもに与える影響、社会的コストなどを社会全体に周知・啓発し、ソーシャル・アクションを通じて、子ども虐待をめぐる状況の改善をめざす活動を行う団体。
これらの活動により、社会全体が子ども虐待の重大さを理解し、子ども虐待の予防や対応、虐待された子どもへの支援などに関する施策がさらに充実し、子どもが健全に成長し、子どもの権利が守られる社会、親が安心して楽しく子育てできる社会が実現することを目指している。

主な活動としては、オレンジリボンマスクの配布や、親子で楽しめるイベントの開催、市民ミーティングなどを行なっている。

公式ホームページはこちら

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