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マルセイユの財政を調べたら、ビラス・ボアス監督に同情した

ビラス・ボアス監督が公の場で突然の辞意表明

欧州でプレーする日本人選手を応援する身として、2月の衝撃ニュースといえば、一つは南野選手のサウスサンプトン(セインツ)へのレンタル移籍決定だと思います。が、不安が掻き立てられるという点では、酒井・長友選手が所属するマルセイユのビラス・ボアス監督が公でフロントを批判し、辞職を宣言したことがかなりの負の衝撃ニュースだったと考えています。

ビラス・ボアス監督と言えば、一時はモータースポーツ界に転身し、また上海上港を率いるなど、監督としての損得より自分のやりたいことを優先する人柄のように見受けられます。それだけみれば、「勝手に補強を決めたフロントvs自分で決めたい監督」という、我が強い監督を抱えると欧州ではごく当たり前におこる現象かな、と思っていました。が、財政事情を調べると、今回はビラス・ボアス監督に激しい同情を感じずにはいられませんでした。

名ばかりのチャンピオン計画

ビラス・ボアス監督が来る前、2016年10月にマルセイユは米国人のフランク・マッコート(Frank McCourt)氏に4,500万ユーロ(約52億円)で買収されました。買収後、マッコート氏は「チャンピオン計画」なるものをぶちあげ、4年間で2億ユーロ(約230億円)を投資すると宣言しました。(※円換算用の為替レートは2016年10月末時点)

2億ユーロと言えば、大きい金額のように思えますが、一年間当たりの金額は5,000万ユーロです。コロナ禍前の移籍市場ではビッグネームを引っ張ることは到底できず、中堅クラスを1~2名位しか補強できない金額です。ちなみに英Financial Times紙に、「パリサンジェルマンはネイマール1人に2.2億ユーロ費やしたけど、どう対抗するんだ?」と冷静に突っ込まれていました(2018年2月9日報道)。

そして2016年から4年でマルセイユはチャンピオンに戻ることはありませんでした。迎えた2020-2021シーズン、クラブが2下した決断は、予算の大幅カット。なんと、予算を30%近くカットしたんです。金額は5,000万ユーロ。きっちり増やした分を元に戻しています(出典:L’Equipe)。

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こんなん監督だったらやる気出ます?他の上位勢は軒並み予算を増額している中、自分のチームだけが大幅カット。ちなみにリーグ・アンを見渡しても、30%というカット幅は最大です。

その結果、予算規模はPSGの20%以下、モナコの半分となりました。。。シーズン前に「予算30%カットだけど、優勝争いに絡んでね」と言われ、シーズン途中で自分がリクエストもしてない選手が来たら、それはそれは普通の人ならキレても全く違和感はないですよ。。。

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売却を考え始めたオーナー

予算額を買収前に戻したということは、オーナーであるマッコート氏に追加投資をする気はないということを示しています。そして今では売却交渉のニュースが飛び交い始めています

報道によれば、4.8億ユーロで買いたいという投資家が表れ、マッコート氏が6億ユーロをふっかけて交渉中というのです。同氏は否定してますが、金額まで出ている辺り、具体的な話が出ている可能性があります。買収額0.45億ユーロ+追加予算2億ユーロ=合計2.45億ユーロの投資額に対して、倍近い値段が本当につくなら、ビジネスライクなマッコート氏としては万々歳で手放すでしょう。

なぜなら、同氏はロサンゼルス・ドジャーズの買収と売却で財を成した人物です。一説には、4.3億ドルで買収し、20億ドルで売り抜けたと言われています。

こんなオーナーの下で、突然辞めたくなるのも分かる、という話でした。

いやぁ、フランスのリーグ・アンは色んなドラマの宝庫ですね。リヨンのジャン・ミシェル・オラス会長も中々のエピソードの持ち主なので、いつか特集してみたいです。

ではでは。

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