セリエBの裏テーマは「破綻」、常にロマンとカオスあふれる場所
この記事はサッカーキングの伊東さん、細江さんの放送に触発されて作成したものです。これを見れば、セリエBという沼がいかに深く、はまればはまるほど味わい深いかお判りいただけるかと思います。
お二方には遠く及びませんが、Football経営分析マンなりに今期のセリエBの魅力をまとめてみました。ポイントは、①出た!棚ボタ残留、②破綻してこそ一人前、➂はまったら最後、沼は深い、④パレルモがBの未来図?です。
サブタイトルからして、既にろくでもない感が出ていますが、こうした人間の避けがたい性(さが)を味わうことに2部・3部リーグの魅力はあると思います。さぁ詳細を見ていきましょう。
出た!棚ボタ残留
セリエB 22-23シーズンは、激闘の末、フロジローネとジェノアが自動昇格。プレーオフでは老将ラニエリが率いるカリアリが勝ち抜いてA昇格を手に入れました。一方、下位ではベネベント、SPAL、ペルージャが降格。ブレシアとコゼンツァは降格の枠をかけてプレーオフに臨みます。
結果は、コゼンツァがトータル4-0で完勝。ブレシアの降格が決まります。
いえ、決まりません。
7位のレッジーナが税金未払い問題で、まさかのリーグ除外。繰り上がりでブレシアの残留が決まります。
この程度で驚いていては、セリエBを楽しめません。シーズンオフにチームが消滅して、最終判定が覆るのはセリエBあるあるです。個人的の最も混沌としたシーズンオフは2004-05でした。なにせ↓↓
優勝したジェノアが、最終節で試合操作の容疑により最下位へ
3位となりプレーオフを勝ち抜きA昇格を決めたトリノが、財政難でトップチーム登録に必要な財務条件を満たせず、まさかの昇格見送り
4位のペルージャが財政破綻によりチーム消滅
20位のヴェネツィアFCが破綻、13位のサレルニターナが破綻
という訳で、最下位カタンザーロ、19位ぺスカーラは降格から急転直下で残留が決定。一体、何のために長丁場のシーズンを戦ってきたのか誰も分からない結果となりました。。。。
破綻してこそ一人前
「破綻」と聞くと、Jリーグでは一大事です。伝統あるチームが解散した例としては横浜フリューゲルスしかないでしょう。
が、しかし。セリエBでは当たり前の日常です。筆者が日本語・英語ソースを当たっただけでも、今季所属している20チーム中13チームが、2000年以降に破綻を経験しています。何なら2回破綻しているチームも珍しくありません。
あっさりクラブが潰れ、しかし復活してくるのがカルチョ七不思議です。恐らく破綻後に新しいチームを立ち上げ、経営が軌道に乗ってくると、かつてのクラブ名を簡単に買い戻せるからでしょう。
なお、2000年以降破綻を経験していないのは、下図の7クラブとなります。この中で間一髪破綻を免れたのは、サンプドリアです。2021年末にマッシモ・フェレーロ会長(当時)が詐欺倒産疑惑で逮捕(おいおい)。クラブは一時給与未払いに陥るなど危機的な状況となりましたが、2023年にプレミアリーグにも所属していたリーズのオーナーでもあるアンドレア・ラドリッァーニが買収することにより事なきを得ました。
果たして今季は20チーム、最後まで破綻せずに終えることができるのでしょうか。そう、セリエBは最後までドタバタが楽しめるリーグなのです。ただ単に、危なっかしいだけという指摘は、、、、正論です。
はまったら最後、沼は深い
破綻したチームの復活の軌跡を見てみると、意外にあっさりBまで戻るチームと苦労するチームに分かれています。破綻する前にネームバリューがあったチーム(パルマ、パレルモなど)は、最初からブランド力が強いため売上が大きく、財務的に余裕がある状態からリスタートが切れるため、Bに戻るのは容易だったと想定されます。逆にそうしたブランドを持たない、かつ小都市を基盤とするチームは、B復帰が長い道のりになったと考えられます。
ただ、セリエBに復帰できたとしてもAまで戻れるチームはごくわずかです。破綻からの復活以降、A昇格を手にしたのはパルマ、スペツィア、ヴェネツィアの3チームだけです。
下図がBにたどり着くまでの各チームの詳細です。基本的にDから再出発し、一歩ずつ昇格してきたチームが大半です。その中にあって特異なのはコモです。DからBへ上がるも、またDへ逆戻りして、再びBというしぶとさを見せつけています。コモと言えば、スペイン元代表のセスクが指導者としてかかわっているクラブです。是非、彼の指導でセリエAにて戦う雄姿が見たいものです。
パレルモがBの未来図?
財政的に安定せず、破綻と再生を繰り返してばかりのセリエBが変わることはあるのでしょうか。その変化を見るうえで重要なのがパレルモです。パレルモは2022年に、マンチェスターシティを保有するシティ・フットボールクラブ(CFC)に買収されました。
ちなみに買収額は株式の80%で1,300万ユーロと言われています。何と!ハーランドの移籍金のたった1/4の金額で1クラブを買収できてしまったのです。お得と言えばいいのか、足元を見られていると言っていいのやら。
何はともあれシティグループの傘下に入り、財政的には安定し選手のスカウト網が増え、かつグループ内であれば選手間の移動がしやすくなったため、この買収はパレルモにとってポジティブ・オブ・ポジティブです。
ここから先は、パレルモにおいてシティグループの人材供給能力が発揮されるのかに大注目です。ちなみに試金石はクラウディオ・ゴメスというフランスU20代表のCBでしょう。22-23シーズンにシティのユースから加わり、23-24シーズンからは出番が増え始めています。このままスタメンに定着すれば、最初のグループ成功例として名を刻むでしょう。
何はともあれ、セリエBクラブの皆さん、破綻せずにリーグを終えましょう!そしてパレルモとクラウディオ・ゴメスに注目です!カルチョは常にカオスとロマンにあふれている!
(ちなみに内訳はカオス80%、ロマンが20%です。チョコレートに例えればカカオ80%のかなり渋みのある濃厚な味わいのリーグです。是非ご賞味あれ。)
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