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【レビュー】EURO2024イングランド対オランダ 嵌まった攻撃と嵌まらない守備

EUROもそろそろ終盤。これまでに引き続き、イングランドの準決勝の試合を振り返ります

まずはいつも通り基本フォーメーションから。イングランドは前の試合に引き続き3-4-2-1、オランは4-2-3-1でした

青がイングランド、赤がオランダ

イングランド優勢の前半

擬似カウンターでチャンスを作るイングランド

まずはイングランドの攻撃の局面から。オランダの守備は4-3-3的で、イングランドの3バックの各選手に前からプレッシャーをかけてきます。3バックを助けようとライス選手やメイヌー選手がDFラインに降りてきますが、それも追いかけてフリーにさせません

青のイングランドの3バック+降りる選手にプレスする赤のオランダ

しかし相手選手を追いかけ過ぎたせいか、オランダのDFラインの前に大きなスペースができがちでした。DFラインの押し上げが不足した部分もあるでしょう

イングランドはそのスペースをフォーデン選手やベリンガム選手が上手く使いました。空いたスペースでパスを受けてプレスを回避し、擬似カウンター的に前へ運んで得点チャンスを作ります

空いたスペースを使うRSHのフォーデン選手

ライン間のスペースを活用し続ける

劣勢だったオランダは前半途中からプレスを少し抑え気味に。しかしそれでもポジションチェンジを行うメイヌー選手、ベリンガム選手、フォーデン選手などを捕まえきれず、ライン間でパスを受けられチャンスを作られます

RDMのメイヌー選手がライン間でフリーに

オランダの4バックに対してイングランドは5トップのような形になることも多く、その分、DF ラインが前に出てライン間の選手を捕まえづらい状況にあったのだと思います

相変わらずプレスが嵌まらない

攻撃が嵌まったイングランドですが守備は相変わらず嵌りません。イングランドはボールを失ったらいつも通り前からプレスをかけますが、オランダが以下のいずれかの方法でプレスを回避

  1. ロングボールを前線に蹴り込む

  2. 前線から降りてくるオランダのボランチやシャビシモンズ選手にパスを出す

1のロングボールはイングランドに競り負けて攻めには繋がりません。上手く行ったのは2の方でした。イングランドは前線から降りる選手をフリーにしてしまい、プレス回避されてさまいます。これはEURO2024通じてのイングランドの悪いところ

プレスが嵌まらないイングランドは徐々に押し込まれ5バック気味になります。この傾向は劣勢になった後半に顕著でした

オランダが巻き返した後半

中央へのパスコースを消されて攻撃が停滞

後半はオランダが守り方を変えて巻き返します。真ん中をとにかく締めてイングランドにサイドにパスを出させるようにしてきました

中盤のパスコースを消す赤のオランダ

中央へパスを通せなくなったイングランドは一気に攻撃が停滞します。ボールを失い、その後のプレスも嵌まらないのでオランダにかなりボールを持たれました

中盤に戻りがちな選手を下げて逆転

たまらずイングランドは選手交代。ケイン選手に加えて好調だったフォーデン選手も下げて、ワトキンス選手とパーマー選手を入れます

交代となったケイン選手もフォーデン選手も中盤まで戻りがちという共通点があります。攻撃が停滞する中、中盤に戻る選手の代わりに裏抜けなどで相手のDFラインをかき乱してくれそうな選手を入れたのではないかと思います

結果的に交代したパーマー選手とワトキンス選手の2人のおかげで逆転に成功。イングランドは何とか決勝に進むことができました

決勝展望

4バックに対しての攻撃の噛み合わせは良さそう

スイス戦と異なり攻撃は大分上手く行きました。要因に以下があったと思います

  1. 相手が4バックだったこと

  2. スイスのDFラインの押し上げが足りなかったこと

スイスと異なりオランダは4バックだったので、イングランドが5トップ気味に構えた時に数的優位となり、ライン間でフリーになる選手が生まれがちでした。特にメイヌー選手、フォーデン選手、そしてベリンガム選手がポジションチェンジしつつライン間を取るので、かなり捕まえにくそうになっていました

スペインもオランダと同様4バックを敷いてくるはずなので、攻撃の噛み合わせは良さそうに感じます

スペインのハイプレスを掻い潜れるか

ただ、オランダのハイプレスは迫力不足だった気がします。具体的にはDFラインが押し上げ不足だったと感じました。結果、ハイプレスする前線との間に大きなスペースができ、そこを使われてプレスが回避されてしまっていました

スペインのハイプレスではそこまでのスペースは生まれていなかった気がしますし、よりレベルの高いハイプレスに対してイングランドがどこまでやれるかは重要だと思います

イングランドの選手はプレス回避能力に長けた選手も多く、ハイプレスをかけてくれるなら戦いやすそうです。むしろ構えてサイドに誘導されると今回みたいに攻撃が停滞しそう

ボールを回され守勢に回りそう

この大会通じてイングランドの前からのプレスは嵌っていません。ボール回しが上手く、WGの突破力があるスペイン相手には致命的な課題と感じます

ブロックを作って守るのも一つなのかもしれませんが、そうなると攻撃に特色のあるサカ選手が強力な相手左WGのニコ選手とマッチアップするリスクが高まります。前からのプレスも難しく、ブロックの守備にもリスクがあるため、点を取られるのは仕方ない状態のように感じます

ハイプレスを上手く回避できるなら勝機があるのでは

結局は攻撃がどの程度上手く行くか次第かな、と。ハイプレスを上手く回避し、得点を重ねられるようなら勝機がありそうです。ドイツ対スペインのような素晴らしい試合になることを期待


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