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「視線は人を殺すか 小説論11講」;出来るだけ他者に伝わるように書く感想文㉕

「視線は人を殺すか 小説論11講」(論説/2007)

 廣野由美子さんによる、小説を「視線」から考える論説。人間の視線がどのようなものであるのか、ということを名作と呼ばれる小説を各辺の題材に取り、小説内で視線がどのような役割を果たしているのかということを詳説していく。
 題材が諸外国の名作から日本の作品まで取り扱われており、私はすべての作品を読んだことは無かった。しかしすべての作品のあらすじや登場人物の関係性が概説た後に、視線についての説明が加えられていくため前提知識はこの本の深さには影響を与えるとは言えるものの、普段は小説を読まない人でも読むことが出来る本だと思う。

 面白かった。

 「目は口ほどに物を言う」という諺は知られている。日常生活においても、僕が思ったことを言い過ぎと反省するのは、相手の目を見ているからだ。電話での会話は対面時よりぎこちなくなる。
 それが小説の上でなされているとは考えたこともなかった。小説の文字を通じて、僕の目線も操作されていたと改めて気づかされた。

 解釈のひとつの方法として目線を用いることが重要だということも分かる。誰かと話すとき、その人に対しその人からの目線を意識しなければ脈絡のなさに繋がりかねない。その優しさを気づかされる本作だった。

#視線は人を殺すか

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