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「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜無名の人々による挑戦の物語」;出来るだけあなたに伝わるように書く感想文㉟

「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜無名の人々による挑戦の物語
『東京スカイツリー 天空の大工事 〜世界一の電波塔建設に挑む〜』」(NHK/2024)

 中島みゆきさんの「地上の星」をオープニングソングとして採用し、NHKの制作で2000年3月28日から2005年12月28日まで放映されたドキュメンタリー番組が「プロジェクトX~挑戦者たち~」。本番組はその18年ぶりの復活番組として放送されていく。
 番組テーマは旧プロジェクトXが日本の産業史・現代史に残るプロジェクトに関わった人々のドラマであったのに対し、本番組はバブル崩壊後の失われた30年の間に奮闘した挑戦者をテーマとする。人に讃えられなくても、光が当たらなくても、ひたむきな仕事があり、彼らの情熱と勇気をまっすぐに届ける群像ドキュメンタリーであると紹介される。
 今回はその第1弾として、2012年に完成した世界一の高さを誇る自立式電波塔「東京スカイツリー」建設の紆余曲折をテーマに放送された。




 面白いと思う。
 今や世界に日本が誇る風景のひとつである東京スカイツリーが今年完成12年目と言うのには時の流れの速さを感じざるを得ないが、当時建設作業に携わった人々のインタビュー等を交えながら番組は進んでいるので、臨場感を感じることが出来、興味深かった。





 僕はプロジェクトXが嫌い。理由は自身と日本に諦めた世代に向けて作られた番組だからだ。正直、やらせや賄賂の横行、過度な演出などがこの番組を終わらせたと聞いたことがあるがそんなことはどうでもいい。この気持ちは傍からすると、青いと言われるかもしれないが、譲れないし、これを譲ることは自分自身の過去に負けることになると思っている。
 プロジェクトXは2000年に放送開始され、中高年の男性から非常に高い評価を得た。そしてその放送内容は学校教育の場でも用いられた。当時小学生だった私が思い出すのだからこれは間違いない。つまり日本が世界でいちばん豊かだった時代から転落し、給料が上がらずデフレの渦に飲まれ続け10年が経過したころに放送が開始されたと言える。
 鬱々としながら漠然と仕事を続ける中で、テレビで放送された栄華を極めた時代のニッポンの姿はさぞかし受けたのだろう。ある種の諦念感が社会を覆う中で、凄かった過去の栄光に浸ることは仕方のないことかもしれない。
 ただ、自己の成長と社会の成長とは別の話であると考えてしまう。僕にとって日本は世界でいちばん大事な国だが、世界でいちばん大事な存在は僕である。だからこそ、直視できない痛々しさを視聴者とこの番組に向けているのかもしれない。

 一方で、この新シリーズは少し無になってみてみようと思う。
 失われた30年の間にも生きた人は居るし、奮闘した人は居る。そんな奮闘している人から、あなたの何かに取り組んでほしいと勇気を与えてくれる番組なのかもしれない。
 一応書き記しておくと初回は良くなかった。結局はドメスティックな物語だし、震災を演出の一部として扱うようにも見受けてしまった。気難しい親父と、完成を見ることなく亡くなった親類など、チープな演出が続いたように感じてしまった。しかし、初回だけでこの番組を判断することは、さすがにいかがなものかとも思うため、次回以降も「我慢」して見てみることにしよう。NHKは日本最強のマスコミだと思ってる。裏金の横行なども取り沙汰されるが、約100年間に貯めた資料は使い方次第ではどんな映画よりも人々の心を揺り動かすと信じている。だから、この番組にも少し期待してみようかなと思う。

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