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2020年 J2 第10節を終えて~昇格争いと今季の特徴についてデータを交えて~


コロナで一時中断したJ2リーグも、早いものでシーズンの約1/4にあたる第10節が終了しました。

中断期間にはサッカーがあるという日常がどれだけ幸せだったことかと噛みしめた一方、再開後は勝敗に一喜一憂し、「あれ?サッカーがあることだけで幸せじゃなかったっけ?」と思っている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

そうです、シーズンの約1/4が終了したということは、残りは3/4しかないのです。ここからはますますサッカーを純粋に楽しむことはできなくなるでしょう。なぜなら、『昇格』という二文字がチラチラと脳裏によぎってくるからです。


そんな嫌でも意識してしまう『昇格』について、開幕前に以下の記事を投稿しました。内容を簡単にまとめると、「これまでの昇格クラブがどのような勝ち点の積み重ね方をしたのか」をいろんな角度から検証しています。



そこで今回はこの記事を踏まえ、10節を終えた段階で今季の昇格争いの現状をまとめてみます。また、コロナ禍による特殊な条件下で行われている今季のJ2が、例年と比べて異なった傾向を示しているのではないかということで、勝ち点以外についてもいろいろとデータを集めてみました。

①昇格争い(例年と比較して、何位くらいまでのクラブに昇格の可能性がありそうか?)

②今季の特徴(リーグ全体としての)

②-1 交代枠増加の影響は?
②-2 ホームチームの成績は本当に下がったのか?


ではさっそく!
各項目はそれぞれ独立しているので、お時間のある時にご覧いただければ。

※データについては、Football LabSoccer D.B.から基本的に目視確認で行っています。また、第9節 大宮 対 福岡の試合がコロナの影響で延期となったことから、両チームについては9試合の結果となっていることをご了承ください。


①昇格争い



まずは、第10節終了時点(8/11)での順位表がこちら。


順位表


長崎が危うく独走態勢に入りかけましたが、徳島が食い止めてくれたおかげでそこそこ詰まっており、「まだまだうちも自動昇格の可能性はある!」と思っているサポーターは多いことでしょう。
(※それでも長崎の勝ち点23は2017年以降では最多。2016年以前は未調査)



ではその、”そこそこ詰まっている”というあいまいな表現の妥当性を確かめるために、勝ち点の分布を2017年~2019年の3年間と比較してみました。

下の図は2017年~2020年の4年間について、10節終了時点の勝ち点を5ずつに区切った際のクラブ数を示しています。今季の分布は右下です。

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今季の分布と1番似ているのは2018年でしょうか。特定の勝ち点内にクラブがひしめき合っている2017年や2019年と比較すると、今年はほどよくバラけており、”そこそこ詰まっている”という表現が適切だったように思います。


※ここから先、”順位”という言葉が意味するのは勝ち点のみを考慮した順位になりますのでご注意ください。


今季が特別変わった傾向を示していないことがヒストグラムで分かりましたので、10節終了時点で何位までが自動昇格に入りそうかを、例年と比較して検証してみます。


皆さんが一番気になるのは、「やっぱり現時点で首位のクラブが昇格してしまうのか?」「少し出遅れたうちのクラブにも昇格の可能性はあるよね?」ということではないでしょうか。


そんな皆さんに朗報です。

10節終了時点でトップ5のクラブの内、最終的に自動昇格圏内に入ったクラブは毎年1クラブずつでした(2017年~2019年)!


当然のことながら、現時点で上位にいるクラブが昇格争いの本命になるわけですが、10節終了時に6位以下であっても自動昇格の可能性は十分にあるということです(当方、磐田サポのため安堵の表情)。


もう少し詳細にまとめると、
2017年の自動昇格クラブ湘南、長崎の10節終了時点での勝ち点(順位)はそれぞれ20(1位タイ)、16(8位タイ)。

2018年松本、大分はそれぞれ14(9位タイ)、21(1位タイ)。

2019年柏、横浜FCはそれぞれ18(4位タイ)、
13(11位)です。


ただし、1つだけ懸念点があります。それは中断による過密日程です。

以下は前記事で紹介した表・グラフですが、「過去5年間 (2015年~2019年)における最終順位が1~6位のクラブの平均勝ち点推移」となります。

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1位のクラブが20~30節で大きく勝ち点差を広げていることが分かります。この20~30節は例年であれば6月下旬~9月上旬に該当するため、夏場の総力戦が順位に大きく影響するのではないかということを前記事でまとめました。

しかし今季は今がまさにその夏場。もしかしたら、勝ち点差が例年と比較して早く開いてしまうかもしれません。特に10節からは東西のクラブが入り乱れて試合を行うようになったため、移動距離も長くなっています。10~14節の5連戦が明暗を分けるかも…


1章の最後として各クラブの対戦相手の平均順位をまとめてみました。※10節終了時点 (8/11)での順位を用いて計算しています。


対戦相手順位


福岡や山口は①(1~10節の対戦相手の平均順位)が一桁となっており、これまで厳しい相手と戦ってきたことが分かります。逆に今後の5試合(11~15節, 表では②)で対戦相手が最も厳しいのは千葉 (6.2位)と言えるでしょう。皆さんの応援するクラブはいかがでしょうか。



②今季の特徴(リーグ全体としての)


あらかじめ断っておきますと、ここから述べるのは「特徴があった項目」ではなく、「特徴があるかと思って調べてみた項目」です。特徴がないのも特徴だと大目に見てください。

今回調べてみたのは大きく分けて2項目です。

①得点
②ホーム/アウェイ成績


②-1 得点
〜交代枠増加の影響は?〜


得点について。これはサッカーが「より多くの得点を上げたチームの勝利」というルールに基づいている競技であり、最も基本的な数字だと思ったので調べてみました。


まずは「今季の得点が多いのか少ないのか」についてです。

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毎年大きな変動があるわけではないですが、2020シーズンはここ6年間で最も多くの得点が生まれています。昨年と比べると30点近く多いようです。

2018年が次に得点の多い年となるわけですが、最初のヒストグラムでも2018年と2020年が似通っていました。これには何か意味があるのかな?
…意味なんて絶対ないのでしょうけど、言ってみた者勝ちみたいなところがあるのでとりあえず記録に残しておきましょう。



得点に関して興味深かったのは、時間帯別の得点割合です。2015~2019年のデータはシーズンを通してのデータなので比較対象として厳密には正しくありません。それでも、2020年の結果が明らかに例年と異なっているように見えます。

それは、「前半ラスト1/3の得点割合が例年と比較して5%ほど高くなっている」ことです(図 緑色)。

時間帯別得点数


前半ラスト1/3で得点割合が増加している絶対的な理由はないと思いますが、それでも考えられる要因はいくつかあります。例えば飲水タイム。前後半の半ばごろに行われる休憩時間ですが、この間に戦術的指示が送られていることは誰しもが知るところですね。

この修正によって攻撃が改善した結果、30-45minでの得点が増えているのかもしれません(逆に守備が改善することもありますが)。また、飲水タイムによるアディッショナルタイムの増加も関係しているかもしれません。


別の見方をすると、後半に入ってからの得点数が減少し、結果として30-45minの得点割合が相対的に高まっていると考えることもできます。そう考えた場合に最も影響していそうなのが、選手交代です。

ご存じのように、今季は特別ルールとして「ハーフタイムを除く3回で5人の選手交代」が認められています。ということで、時間帯別の交代選手人数割合を調べてみました。

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第1節は例年通り選手交代は3人までのルール。2節以降が上述したような特別ルールで行われています。

その第1節と第2節以降で一番顕著に差が表れているのはHalf Timeでの選手交代でした(上図 赤色)。選手交代人数が増えたことで早い時間帯で思い切って交代枠を使うことができている結果だと思います。

また、面白かったのが81分以降の選手交代です(緑色)。第2節では39%(赤字)を占めていたものの、3節以降は多くても30%と10%以上減少しています。交代枠が増えたとはいえ最初(2節)は運用面で様子を見てみて、それ以降はベンチがやり繰りに慣れたのかなと推測するとなんだか「ふふふっ」となってしまいました。

真相はクラブ関係者に聞いてみたいところです(アテはありません。)


話を戻すと、30-45minの得点が増加した2つ目の理由として、「交代枠増加により早い時間帯での選手交代が可能となった結果、後半立ち上がりの失点が減少したため、相対的に30-45minの得点が増加した」のではないかと考察してみました。その他にもこんな理由があるのでは?という方はぜひ教えてください!


時間帯別の得点割合についてもう1つ。

全体として前半より後半での得点が多いことは肌感覚で理解していましたが、実際に数字にしてみるとこれだけ違うというのは驚きました。今季も多分に漏れず、前半に生まれた得点が116であるのに対し後半には146点が生まれています。

これらを1クラブあたりで換算すると前半5.3点、後半6.8点となります。この数字を平均として「前後半の得点数/失点数を各クラブ単位で表した図」のが以下の2つのグラフです。

前半得点

後半得点

筆者贔屓クラブのジュビロ磐田は、前半は得点数・失点数ともにほぼリーグ平均。一方後半は、平均と比べて得点数が多く失点数が少ないという傾向になっておりました。

前半、後半ともに平均点より右下(得点が多く、失点が少ない)の領域にいるクラブは1つもありません。全てのクラブが何かしらの特徴を備えていると言えそうですね。


②-2 ホーム/アウェイ成績
ホームチームの成績は本当に下がったのか?


続いてホーム/アウェイの成績についてです。これは前記事からの続きとなります。

コロナウイルス感染拡大防止のため、中断明け以降はリモートマッチ形式が採用されることとなりました。先んじて行われていた欧州では、ホームチームの勝率が激減したということを前記事で紹介しています。


結論から言うと、「ホームチームの成績は例年とほとんど変わらない」でした。

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欧州とは違い、少ないながらも観客が入っていることが影響しているのかもしれません。



「リモート応援もあるからでは?」と思った方がいらっしゃるのではないでしょうか。僕も思いました。リモート応援を採用しているクラブと採用していないクラブのホームゲームの成績はいかほどか、調べてみましたよ!

リモート応援を採用しているクラブは以下記事を参考にしました。


【結果】
リモート応援採用クラブのホームゲーム勝率   40%
リモート応援被採用クラブのホームゲーム勝率  39%



びっくりするくらい差がありませんでした。本当は「リモート応援を採用しているクラブの方がホームゲームの勝率が高くて、応援の力ってすげー!!!」って言いたかったんですけど。

ただ採用・非採用で差がないというのは公平面では良かったのかもしれません。個人的にはリモート応援ありが好きですけど。



気を取り直して、ホームゲームの成績についてもう1つ。前記事では、ホームゲームの順位(H順位)が最終順位(2015年~2019年)に大きく関与していることもまとめています(詳細は前記事をご覧ください)。

H成績と順位


ということで、10節までの成績から「ホームに強いクラブ、アウェイに強いクラブ」が分かるようにグラフにしてみました。

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上の図は横軸にホームの勝率を、縦軸にアウェイの勝率を示しています。ホームとアウェイの勝率が同じだった場合、直線上に位置することになります。

つまり、直線より右側はホームの方が勝率が高いクラブ、直線より左側はアウェイの方が勝率が高いクラブを示しています。

黄色で塗りつぶしているのは、先ほどの引用記事でリモート応援を採用しているとされていたクラブです。

10節を終えたといってもクラブによってはホームゲーム数とアウェイゲーム数が異なります。直線に近いクラブは一概にどちらの方が勝率が高いかは言えないですが、クラブによっては明らかにホームとアウェイで勝率が異なるので面白いですね。


最後に、このグラフで上位クラブがどこに位置しているかを示します。

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勝率が高ければそれだけ勝ち点も多いので何も不思議なことではありませんが、きれいに図として示すことができました。アウェイでの勝率は高いものの、ホームでの勝率は低いクラブがいくつか見受けられますので、ホームでいかに勝ち切れるかも大事な要因になりそうです。


以上、第2章をまとめると

・前半ラスト1/3で得点割合が増加している。その要因は交代枠の増加!?
・観客数の制限下においてもホームチームの成績は例年とほとんど変わらない。




終わりに



たくさんデータを載せてみたものの、なんだか趣旨がよく分からない記事になってしまいました。「何が言いたかったんだろう?」と思った方は何も間違っておりません、ご安心ください。僕も分かりません!

最近、いろんな方がいろんな視点でデータをまとめているのを目にしますが、この記事もたくさんの方の目に触れてお盆の話のネタにしていただければ幸いです。

20節(もしくは21節終了時)にも何かしらのデータをまとめてみたいと思っておりますが、若干のネタ切れになりつつありますので何かいいアイデアがあればコソっと教えてください!

では磐田の優勝を夢見て!



PS
『10節を終えて~ジュビロ磐田ver~』もいずれ投稿予定なのですが、Football Labさんの第10節のスタッツが記載され次第となりますので、大宮戦後になるかもしれません。