見出し画像

【PickUpMatch】#008. 意思なき組織の間延びと停滞。僅かな光は新エース上田。

 J1第8節はミッドウィークのナイトマッチから。今節は開幕から共に1勝と低迷する鹿島アントラーズと柏レイソルの一戦をレビュー。
 互いに力のある選手を揃え、J1でも上位の力量を持ったチームだが、4チーム降格する今シーズンのレギュレーションを鑑みるにスタートの躓きが尾を引く可能性もなくはないのだ。

 さて今節はそんな一戦をホームチームアントラーズに焦点を当てて、深掘りしてみたい。

Topic①:土台の揺らぎは前への推進力を奪う

 単刀直入に言うと、この試合柏レイソルが勝ってもまったく不思議ではなく、鹿島アントラーズの出来はまったく良くなかった。
 "常勝"と言われたかつての称号を返上してしまったかのように、最終ラインでがたつき、ミドルゾーンでことごとく横パスを失った。
 特に前半は見るに耐えず、中盤のコンパクトさを失った4-4-2は柏レイソルの司令塔江坂に簡単に前を向かれ、防げるピンチを与え続けてしまったのだ。

 元々鹿島アントラーズは、伝統的に4-4-2をフォーメーションとして採用しており、両サイドバックがどれだけ高い位置で攻撃に関われるかが生命線である。
 上記を達成するために、ボックストゥボックスで90分ハードワークできるボランチがいて、サイドにはタメを作れる選手が配置されていた。これが鹿島らしさを作り出していたのだ。

 ところが、本ゲームに限って言えば、サイドバックが高い位置を取ろうとしても最終ラインからボールは出ず、ボランチは出しどころを見失って孤立し、サイドのエヴェラウドさえ後ろ向きでボールを受けるシーンが多くなってしまった。

課題を下記3点記載したい。
①CB犬飼のファーストコントロールの質
②GK沖のゲームを読んだプレー選択の決定
③レオシルバーのサポート役ボランチの不在

 順に見ていこう。
 ①、これはトレーニングから修正していく必要があるが、犬飼選手のファーストタッチが右足インサイドで中方向に止めるため、最初のタッチで右サイドバック小泉へのパスの選択肢が消える。
 これにより、犬飼にとって右側から敵プレッシャーを感じやすくなってしまう。(パスを出される心配がなければ強度の高いプレッシャーをかけられる)
 それが結果として犬飼のパスコースを横の町田へと限定し、町田に出る頃には左足でキーパー沖へのバックパスしか選択肢にない状態になるのだ。僕が鹿島と対戦するなら、明らかにこのセンターバックの止める方向を狙いプレスをかけるだろう。

 ②U24代表にも選ばれた鹿島の新守護神沖。セーブにも安定感があり、パワフルだ。ただ、どしっと構える存在感が薄い気がする。
 たぶん一つの要因が、ゲームの流れを読まず自分のリズムでパスを出し、ボールを蹴っていることにあると思う。
 味方の準備ができていない状態でリスタートをはじめたり、最終ラインでばたつくシーンがすこし目についてしまった。
 この辺りはサガン鳥栖のパクだったり、浦和レッズの西川が抜群なので参考にするといいかもしれない。

 ③レオシルバの相手役をどうするか。鹿島の課題だ。おそらく抜けているのは三竿だと思うが今節スタメンは船橋だった。
 中盤でレオシルバとワンタッチでのパス交換や、レオシルバがドリブル開始した瞬間近くでサポートできるボランチが欲しい。
 そうしないと中盤でリズムができず、ファンアラーノとエヴェラウドが個人で前進するしかチームとしての手法がなくなってしまう。常に前向きのプレー選択をするためにも、チームとしてボランチをどうすべきか考えるタイミングにあるような気がする。

Topic②:ザーゴ監督の要求の問題か

 この試合、最も目についたシーンがあり、どうしても取り上げたい。それが前半43分-44分の犬飼選手が横パスを相手に奪われたシーン。

 この選手がセンターバックなら、このプレーはとんでもなく危険だし、失点につながるプレー選択だと思う。
 もしザーゴ監督がこのプレーを許しているなら、鹿島アントラーズの伝統的な厳しさは薄れていると考えて間違いない気がする。
 前半終了間際、0-0の状況で中盤自陣に近い位置での安直なプレーは鹿島の勝てない要因を象徴しているように思えた。この柏レイソルとのゲーム勝てたからこそしっかり見直して、常勝鹿島を取り戻して欲しい。日本サッカー界、Jリーグを鹿島アントラーズは引っ張っていく存在なので、ぜひ頑張ってほしい。

Topic③:FW上田のポテンシャル

 目の色が違うというのはこういうことを言うのだろうという選手。まだまだ突き抜けきれてはないけど、その片鱗は随所に見られた。
 特にこの選手の動き出し、背後への飛び出すスキルは一級品。得点を奪ったシーンなんか、ファンアラーノが出してしまうような最高の動き出しで、味方のパスコースもコンロールできてしまうのは素晴らしいと感じた。

 本来シーズン15点くらいサクッと取ってくれなきゃ困るレベルの選手で、日本を代表するストライカーになれるはずなので、とても期待してる。
 チームとしてもっと上田がゴール前でパワーを発揮できるよう前進すべきだし、上田を活かすためにどうするかを前線の選手が考えた方がいいだろう。そのために上田選手も圧倒的な存在感を出さなきゃいけないわけだが。

 そうは言ってもサッカーが簡単じゃないことはとてもわかっているつもり。
 逆に言うと鹿島アントラーズにとって苦しむシーズンの方が少ない訳だから、サポーターと一体になってこの難局を乗り越えたら、また常勝鹿島が戻ってくるのでしょう。

それでは。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?