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【PickUpMatch】#017.遠くを見ることで、先手先手を取り続ける。

 J1第17節からは川崎フロンターレvs.鹿島アントラーズの一戦をピックアップ。
 この試合を終えるとJ1リーグは代表ウィークに入り、一時中断期間となる。僕も現地参戦した等々力陸上競技場での一戦をレビューしていこう。

Topic①:目指すスタイルの違いはウォーミングアップに現れる

 現地観戦の醍醐味の一つは両クラブのウォーミングアップを見ることができる点だ。
 お気に入りの選手を探すのも良し、試合に向けて選手たちがどのような準備をして向かっていくのか、僕も心の中で試合展開をイメージしながらピッチ上を見つめる。
 選手だけでなく、チームも同じことが言え、スタイルが如実に現れる。

 こちらの写真を見てほしい。(少し見づらいかもだが、、)向かって左側が川崎フロンターレ、右側が鹿島アントラーズである。

 まず川崎フロンターレから。
 鹿島アントラーズよりも狭いグリッド(エリア)の中で、4vs.4+2フリーマンを行なっている。
 端的に言うと、ボールを保持している側が相手よりも常に2枚多く、6vs.4の状況が作り続けられるわけだ。
 普段からトレーニングに組み込まれているのだろうが、ボールを保持しながらゲームを支配していこうと考えているクラブに多く見られるウォーミングアップであり、攻撃側がいかに相手を外すかやボールがつながる感覚をチームとして最終調整する意図がある。

 一方、鹿島アントラーズは川崎フロンターレよりも広いエリアで、5vs.5のボールポゼッションメニューだ。
 同数であるため、エリア内はマンツーマンのような状態になり、各所で対面する選手とのマッチアップが起こりやすいトレーニングと言える。
 これにより、攻守の切り替えやプレスの強度などチームとしての目的を意識付けしながら心拍数を高められるのだ。

 ちなみに補足までだが、決してどちらのトレーニングが優れていると言った話ではなく、チームとしての狙い、スタイルの違いによるものだ。
 この視点を持って現地に行ったときはクラブのウォーミングアップを注視してみるのはどうだろうか。

Topic②:遠くを見ることで選択肢を広げる

 このゲーム、特に前半は川崎フロンターレが鹿島アントラーズを文字通り圧倒した。

 いくつかプレーをピックアップしてみたい。
 前半15分の家長のサイドチェンジ。右サイド自陣の深い位置で山根と数回パス交換して相手を剥がすと、正確なキックで逆サイドの登里へ。一気に局面を変えてしまった。
 また、スペースが広大にでき、前進した登里もプレー選択は逆サイドの山根へ。最後はレアンドロダミアンのシュートにまで繋がった。相手との位置関係、スペースの把握ができているからこそ生まれたプレーだった。

 先制点も「遠くを見て、選択する」ことで得点が生まれる。前半19分、右サイドワイドに開いた山根がボールを受けると背後のスペースに家長が走り出す。
 ただ、選択はここではなく、その一つ奥のレアンドロダミアンだった。実況を担当した西岡さんも「見事な一つ飛ばしパス」とこのプレーを絶賛し、常にゴールが近いところを選択する重要性とボールがくると信じて待っていられるチーム力を感じさせた。

 育成年代から言えることだが、基本的にボールを持っている選手へのサポートは「寄る」ことを指すことが多い。
 ボールを持っている選手に対して、パスコースを作ってあげること、ボールを受けることを目標としているからだ。
 ただ、寄ることが必ずしも是ではないのがサッカーの難しいところなのである。単に一例を挙げると、ボールに寄ることは、ボールに自分をマークしている相手を近づける行為でもあるし、ボールを持つ選手のスペースを減らす行為でもある。もしその選手が5メートルしかパスを正確に通せないならばボールに寄らなければチームとして回らないが、その距離が7メートル10メートルと伸ばせるのであれば格段にプレーエリアは広がっていくのである。
 ここに実はフロンターレがパスとコントロールに貪欲なこだわりをみせる由縁があるだろう。

 試合も劇的な幕切れ。さすが小林悠といったゴールだった。やはり、川崎フロンターレ、鹿島アントラーズというJリーグを代表する両雄の戦いはとんでもなく面白い。

Topic③:良いプレーには拍手を。サポーターが創るスタジアム。

 たまに書いているのだが、コロナ禍で変えたのはスタジアムの様相に留まらない。サポーターの行動も大きく変えた。
 まず、アウェーチームのサポーターがスタジアムに足を運べなくなった。そこで生まれたのが、選手紹介の際に、相手チームの選手たちにも拍手をするのだ。今日はよろしくなとか、よく来てくれた!なのか意味合いは人によってまちまちだと思うが、相手選手、サポーターを想像しながら手を叩く光景はJリーグが目指す姿に近いのではないかと個人的に思う。

 選手紹介時だけではない。相手チームの選手であっても、良いプレーがピッチ上で見受けられれば惜しみない拍手がスタンドから巻き起こる。
 気付かされたことがある。もちろん自分の推しているチームの得点が見たい、勝利が見たいと思うのは当然だけど、それ以上に選手たちがピッチの中で見せるいいプレーや気持ちのこもったプレーが観たいのだ、と。
 このリーグがサポーターと共に発展し、安全で安心な誰もが通いたくなるスタジアムができつつあると思う。
 僕の夢も繋がっていくといいな、、。

 それでは。

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