「軽い靴」は「いい靴」?
こんにちは。靴手鳥です。
先日ネットニュースを読んでいたら、あるスポーツシューズの広告が流れてきました。曰く、
「長時間履いても疲れない。ランナー、看護師などあらゆる人が絶賛」
「軽量でサポート力にも優れている」
「一日中立ち仕事をしても足に不快感がない」
らしい。なかでも「軽い」はとてもよく聞く靴の売り文句です。靴売り場でも「この靴すごく軽くていいですね」とか、「この靴は重いからちょっと…」みたいな言葉をよく聞きます。
重量はいい靴の判断基準の一つになっていると思って間違いなさそうです。
さて、ここからが本題なのですが、軽い靴=いい靴なんでしょうか。
「軽い靴って何がいいの?」「どうしたら軽い靴が作れるの?」
軽い靴のいいところは疲れにくそうなところでしょうか。一歩が軽くなりそうですよね。足を上げるたびに足の重さ+靴の重さを持ち上げるわけですから、靴は軽いほうが疲れにくそう気がします。
でも、実際はそうでもないかもしれません。理由を3つ挙げてみます。
①足を上げることに使う筋肉は体の中で一番大きい。
足を上げるとき一番大きな役割を担うのが大腿四頭筋です。いわゆる太ももの筋肉ですが、実は体の中で最も大きな筋肉です。皆さんは手でどれくらいの荷物を持ち上げられますか。
靴は男性用のスニーカーでだいたい400~500gだそうです。履物の種類やサイズによってもいくらか違うかと思いますが、少なくとも売り場で手に取って重いと感じても、歩くときにはそこまで大きな負担にはならないのではないでしょうか。
②歩行は足の振り子運動。
歩くとき、歩くことを意識している人はあまり多くありません。右足を出して左足を…なんて考えなくても歩くことが出来るからです。
だから歩行時どの筋肉がどんな風に使われているかなんて気にしたことがある人は少ないでしょう。実際勉強をするとあまりにも複雑な動きをしていてすごく面白いのですが、それは置いておきます。
皆さんご存じのように歩行は全身運動ですが、筋肉だけを使って歩いているわけではありません。それでは非効率的すぎてすぐに疲れてしまい、長い距離を歩くことができないからです。
歩くときには股関節から下と膝から下の二つの振り子が作用しています。足は振り子の先が振り子になっている二重振り子の構造をしているんです。
そこで重い靴を履くとどうなるかというと、振り子の重心が下がります。重心が振り子の支点(この場合は足の付け根と膝)から遠くなることで振り子の振れ幅が大きくなり、より遠くに足を着くことが出来ます。
つまり、一歩で長い距離が歩ける。5mを6歩で歩くのと5歩で歩くのでは一歩分、エネルギー効率がいいことになります。長い距離を歩けばなおのことです。
③靴には足を支える役割がある。
靴の重さはその靴の構造と材料で決まっているのですが、足を支えるための芯材や歩行の衝撃に耐えられる素材が重さの大半を占めています。
では軽い靴がどうして軽いのかといえば、目の粗い軽い素材が使われていたり、軽さを重視した強度が低い芯材を使っていたり、あるいは芯材が使われていなかったりするのです。
芯材の有無による靴のフィット感や疲れやすさの違いついては履き比べてみないと想像しにくいかもしれませんが、基本的には強度のある芯材が使われた靴ほど靴が足を支えてくれるので、自分の負担を減らすことが出来ます。
以上三点ほど軽い靴と重い靴の違いを上げてみましたが、だからどっちがいいと断言することはできません。
靴選びで重要なのは何をするときに履きたいかです。ランニングなら少しでも筋肉への負担を減らすために軽い靴がいいでしょうし、立っている時間が多いのなら多少重くとも芯材がしっかりした靴のほうが疲れにくいかもしれません。
全ての場面においていい靴は残念ながら存在しません。結局のところシチュエーションに合わせた靴選びをすることが大切ということです。
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