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改善が失敗する理由 その肆

 『改善が失敗する理由』の連続投稿も本日で4日目。

 大体今日で、世の中にある改善が失敗する理由の大半は網羅できるかなと思っています。

 何処の会社でも社内の改善発表会があると思います。

 そもそもこれがない時点で、改善をやっていないことになります。

 その社内の改善発表会で「年間で○○万円の成果が出ました」という発表があり、全てを合計すると数千万、時には億単位のコストダウンが見込めることは珍しくありません。

 ですが実際に決算時期になった時、その改善成果が結果に結びついていない(利益が出ていない)ことがほとんどです。

 これは一体なぜなのでしょうか?


その改善は本当に必要ですか?

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 改善発表会は、企業や会社の全部署が参加します。

 そこで発表される内容のほとんどが、改善効果はいくらコストダウンしたか、どれだけの成果を出したかでしょう。

 繰り返しになりますが、それが利益として帰ってきたことがあるでしょうか?

 コストダウンした改善効果は何処に消えたのでしょうか?

 まずそこに着目しなければならないのではないでしょうか?


 世界で1000万人以上に読まれ、優れた経営者を数多く輩出し、彼らに最高の教科書とまで言われた『ザ・ゴール』は、ボトルネック(制約条件)を探さねばならないと言われています。

 ボトルネックとは企業や組織の中で、一番リソースが不足している部署だと言い換えることができます。

 企業や組織内で、一番重い荷物を背負わされている部署がボトルネックになるのです。

 ボトルネックの部署は、ただ単にリソースが足りないだけでなく、他の部署ではできない仕事をしている場合がほとんどです。

 ボトルネックの部署のリソースは簡単に増やすことができない希少リソースです。

 企業でも組織でも、設計や開発といった分野がそれに当たるでしょう。

 そうした部署の実力あるメンバーは、簡単に増やすことはできません。

 そんな重い荷物を背負っている部署を、ボトルネックでない部署(非ボトルネック)が助けなければ、企業や組織の業績というのは改善しないというのが『ザ・ゴール』の教えです。


『ザ・ゴール』が伝える改善の順序

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 ではここで、ボトルネックの前提をもう一度確認しておきましょう。

 ボトルネックとは、与えられた仕事量に対して、その処理能力が同じか、あるいはそれ以下のリソースしか有していないことを指します。

 対して、非ボトルネックとは、与えられた仕事量に対して、その処理能力が上回っているリソースを持っていることを指します。

 つまりボトルネックとは、事実であり、結果でしかないのです。

 一部では、ボトルネックが『悪』のように言う人もいますが、それは間違いです。

 もう一度言いますが、ボトルネックとは、事実であり、結果でしかありません。

 そして『ザ・ゴール』では、ボトルネックを【制約条件】と言い換えていますし、現在ではボトルネックとは言わず、【希少リソース】という呼び方に変わっています。

 この前提条件を踏まえた上で、名著『ザ・ゴール』が示す、改善の取り組み方をご紹介しましょう。

ステップ1.
制約条件を「見つける」。

ステップ2.
制約条件を「どう活用する」かを決める。

ステップ3.
他のすべてを[ステップ2]の決定に「従わせる」。

ステップ4.
制約条件の能力を高める。

ステップ5.
「警告!!」ここまでのステップでボトルネックが解消したら、[ステップ1]に戻る。ただし、「惰性」を原因とする制約条件を発生させてはならない。

 『ザ・ゴール』にはこのように書かれています。

 これが全体最適のマネジメント理論の一つ、ファイブ・フォーカシング・ステップです。


会社にダメージを与える改善もある

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 改善は制約条件に集中して行う。

 このやり方で取り組めば、企業や組織の業績は大きく改善されます。

 ただ、このやり方では、改善しているところと、改善していないところが生まれてしまいます。

 ですが、それでいいのです。

 非制約条件の部署は、改善する必要がないだけでなく、下手な改善をすれば企業や組織に悪影響を及ぼすことさえあるのです。

 例えば、制約条件よりも遙かに大きなリソースを持つ非制約条件が、改善活動を行って生産性をアップしたとしましょう。

 そしてそのアップした生産能力を使い、フルに生産したとしたらどうなるでしょうか?

 もしそんなことをしたら、会社の中は間違いなく在庫や仕掛品で溢れてしまいます。

 在庫や仕掛品は、投資です。

 顧客に製品を購入してもらう際、在庫切れを起こさないように在庫や仕掛品は一定数は持っておく必要があるものです。

 しかし、売れない在庫や仕掛品は、意味がないどころか企業や組織の経営を圧迫することになります。

 顧客の要求に応えるべく、一定の在庫数を持つことを『安全在庫』と言ったりしますが、この『安全在庫』を多く持ちすぎてしまうと借金が膨らんで、企業や組織を経営危機に陥らせることすらあるのです。

 ですので、非制約条件の改善は【今はやらなくて良い】のです。

 非制約条件が制約条件となった時に、改善に取り組めば良いのです。

 逆にそうしなければ、制約条件の改善に集中することができず、結局は企業や組織の業績を悪化させるだけなのです。


 このように改善活動は、ターゲット(制約条件)を絞って行うことが、基礎の基礎なのです。

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