『A子の日記』#21

「なぁ、あんたって…」私が会場を背に歩き出すと、青年が声をかけてきた。成人式の参加者だろう。彼は1月のこんな時期にもかかわらず、額にかいた大粒の汗を拭いながら言った。「人違いです」私は軽く頭を下げると歩き出した。「A子」歩き出した足が止まる。その言葉足らずの喋り方。私は知っていた。