『A子の日記』#32

未来なのね、もう。くたびれた絵本の表紙を指でなぞると、たくさんの子どもたちにページを捲られてきたのがわかる。「ここにいたのか」扉が開いて夫が図書室に入ってきた。「覚えてる?」私が絵本を指し示すと夫は一瞬驚き、微笑む。あの頃と変わらない夕陽の輝きが、私たちを真っ赤に染め上げていた。