『A子の日記』#19

鉄の味がする。紙で切った指をペロッと舐めながらそんなことを思う。母から届いた一通の封筒。十数年一緒に暮らした母の顔は、モヤがかかったように思い出せない。「成人式か…」中身は成人式の案内だった。次々に友達の顔が思い浮かぶ。その中でも特に鮮明だったのは、夕焼けに染まる彼の横顔だった。