『A子の日記』#16

誕生日に家を出た。単身で高飛びを決めた旅路の果て。貯めていたお金で部屋を借り、たったひとり新生活を始める。大事な人は置いてきた。たとえあの人が死んだとしても、戻らないと心に決めた。確かなものは何も無い。あるのはただ、彼がくれた宝物と、楽しかった記憶だけ。夜、平らな床に涙が零れた。